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俺と彼女達の下半身事情-魔物娘と過ごす日々-  作者: 黒箱ハイフン
第二話 『まるでアニメのような日常……ただし、下を見なければ』
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014 『御機嫌蜘蛛と不機嫌蛇』

「ふぅ、それにしても結構買ったな」


「すいません。ですが、色々と足りないものがありましたので。あの、重いのでしたら、やっぱり私が持ちましょうか?」


「いや、別にいいって。そもそも依織だってもう手は塞がってるだろ」


 買い物を終えた帰り道。レジ袋を片手に持ち、もう片方の手で手を繋ぐといった格好で俺と依織は歩いていた。なんとも恥ずかしい状態だが、身体の都合上なのだから仕方ない。


「それに、買うものが多いのも仕方ないことだしな」


 冷蔵庫が空になっているのだから、買う量が多くて当たり前だ。そんなわけで、俺と依織の手の袋はなかなかに重量がある。


依織のほうは、その細腕のどこに力があるのかと思うほど軽々と持っているが、流石に男の意地として俺の分まで頼むわけには行かない。


「まぁそろそろ家に着くしな。ここまでくれば、もうあと少しだ」


「そうですね。ふふっ私たち、どんな風に見られてたんでしょうかね?」


 不意に、嬉しそうに依織が言った。


買い物に行って、帰ってくるまでずっと手を繋ぎっぱなしなのだ。何の関係も無い相手、なんて誰も思ってないだろう。


「不釣合いだ、と思ったんじゃないか? 流石に依織みたいな美少女と俺じゃあな」


そもそも、依織は超が付くほどの美少女なのだ。実際のところ出かけてからずっと老若男女問わず視線を集め続けていたわけだが、俺を見て『釣り合いが取れて無くない?』という表情をする相手が大勢いた。


「そっ、そんなことないです! 彰さんはとっても素敵です! ですから、その、私的には、恋人とか、新婚夫婦的に見られてたら嬉しいなんて、思ってたりするのですが……」


「……は?」


 人通りは多くないとはいえ、無人ではない一般道。そんななかで、人目を惹く依織が唐突にこんなことを叫べば、いやおうも無く人の視線はこちらに集まるわけで。


「いやいやいや……!? こんな往来で何言ってるんだよ、お前は……!?」


 なにより、あんなことを言われたら俺も恥ずかしい!

どうしてそうも、俺に対しての評価が高いのだろうか、彼女は……?


「あーもうっ、ほら、早く行くぞ、依織……!」


「あっ、すっ、すみません、つい興奮してしまって……」


 依織の手を引き足早にその場を去る。痛い視線がこちらに突き刺さるが、無視して足を動かす。ずっと手を繋ぎっぱなしだったこともそうだが、なんとも照れる買い物だった……。




「ちょっと、二人でどこ行ってたのよ!」


 買い物から帰ってくると、不機嫌そうなレイアが玄関にとぐろを巻いていた。


「どこって、このとおり買出しだが、ほら」


 手に持った袋を掲げる。食材が無いのだから、買ってこなければならないのは当然だろう。


「じゃあなんでそいつも一緒に行ってるのよ! 買出しなら、あんただけで十分でしょ!」


「私からお願いしたんですよ、ご同行させてください、と」


「俺一人じゃ何を買うべきか分からないからな。調理するやつに来てもらったほうが都合いいんだよ。実際、依織はさっきも売り場の食材で、献立決めたりもしてくれてたしな」


 自分ひとりで買いにいったら、絶対に使わないようなものを買って、必要なものを買い逃がす自信がある。依織ならその材料でも料理してくれるのかもしれないが、やはり着いてきてもらったほうが色々安心なのだ。少し恥ずかしいが、手を繋げば人間と変わらないのだし。


「それに行ってきたのは近くのスーパーで、買ったのは食材や日用品だけですよ? そもそもあなたは食事の後、すぐに部屋に戻って寝てたじゃないですか」


「それでも、あたしは納得いかないわ!」


「しかし、そんなこと言われてもな……」


「だって、昨日からずっと家の中じゃない。せっかくの日本なんだから、あたしだってもっと色々と見て回りたいわ! この国は文化が色々面白いって、みんな言ってたんだもの!」


 そんなふうに駄々をこねるレイア。……両手やツインテールを振り回すだけなら可愛げがあるが、尾をびたん! びたん! と床に打ちつけるのはやめてもらいたい。


「けど、そうだよな」


確かにその気持ちも分かる。せっかく外国に来たのなら、やはり色んなところを見て回りたくなるものだろう。もし俺が彼女の立場でもやはり観光はしたいと思う。


「気持ちは分かりますけど、無理を言わないでください。彰さんだって、忙しいんですから。また機会があったら、あなたもちゃんと誘ってあげますから……覚えてたらですけど」


 依織のほうも同じように感じたのか、強く言いはせず、宥めるような感じだ。最後に小声で黒いことを付け足している気もするが、もはやいつものことなのでそれは流しておこう。


「なら、三人でどこか遊びにでも行くか?」


 時間もまだ昼前だから昼を食べたり、適当に遊びに行くのも悪くない。レイアはストレスが溜まってる様子だし、依織は買い物に付き合ってもらったのだから、そのぐらいなら構わない。


「やった! 彰、話が分かるじゃない!」


 そう言って、今度は喜びからか尾で床を乱打するレイア。……なんという分かりやすさ。


「あの、いいんですか……?」


 おずおずと聞いてくる依織の声も、どこか期待感が漂っている。先程は荷物があったので無理だったが、やはり彼女も色々見て回りたかったのだろう。


「今日は特に予定も無いし、明日も日曜で休みだからな。とりあえず、俺は買ってきたものを仕舞っておくから、その間にレイアは出かける準備を、依織はその手伝いをしてやってくれ」


「分かったわ。ほら、行くわよ」


「不本意ですが、了解です。では、彰さん、すみませんが荷物のほうお願いしますね」


 レイアの部屋に行く二人を見送り、依織から彼女の持っていた袋を持って冷蔵庫へ向かう。


「あー、そういや、生ものとか大丈夫だよな……?」


 立ち話してたことに少し後悔しつつ、食材を冷蔵庫に入れていく。仕方ないとはいえ、話す前に入れておくべきだったな。まぁ日本の食材は安全だと信じることにしよう。


「それよりどこ行くか考えるべきか」


 ため息をつきつつ、更に手を動かす。


二人が満足できてかつ、それなりにお金がかからない場所、ね。


そもそも異性とまともに出かけたことが無い俺に、いきなりのダブルデートプラン(?)はいくらなんでも荷が重すぎる気もするが、言った手前はなんとかしないと。


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