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俺と彼女達の下半身事情-魔物娘と過ごす日々-  作者: 黒箱ハイフン
第二部 三話 『魔族令嬢の舞闘会……つまり、あたしが主役よ』
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110 『笑い話にならない』

「ぎりぎり、だったわね……」


「はい、本当に、紙一重、というのがここまで相応しい戦いもありませんね……」


 試合後、体調は万全に戻っているはずなのに、疲れた様子であたし達は言葉を紡ぐ。


 それは、先ほどの試合で全てを使い果たしたから。自力は勿論、戦術も、強力も、全てつぎ込んで、それでもぎりぎり互角かもしくは不利な状況。勝負を決したのは、結局のところ運と言っても過言じゃない。もし、もう一度戦ったとしても勝てるとは思えない。


「まさか、合体、なんてことをしてくるなんて」


「はい、竜鎧騎士化なんて、想像もしていませんでした。事前に集めた情報にもありませんでしたし、あの方たちも、奥の手として温存していたんでしょうね」


「そりゃそうでしょ。あんなのもし手の内が分かってたら、速攻で対策するわよ。それが成功するかどうかは別だけど、分かってたら絶対に近寄らせないわ」


 竜鎧騎士――読んで字のごとく、竜の鎧を纏った騎士である。


 あの二人は奥の手として、竜人がデュラハンの鎧の上から更に覆うような鎧となったのだ。それによって、本来弱点であるはずのデュラハンの頭はしっかりと保護され、もともと硬い鎧はより一層、もはやどうやって傷つければいいか分からないほどの硬さになっていた。


「けど、流石よね。あの状況で、あんな手を思いついて、しかも実行するだなんて」


「いえ、正直ダメ元でしたよ。あそこであの方が一端警戒して躊躇してくれなければ、時間も足りませんでしたし、そもそもひっかかたのもうまく通り道に配置できたから、ですから」


「それでも、咄嗟に考えられるのは凄いと思うわよ。今回に関しては、あんたを信じたあたしの目に狂いはなかったってことね!」


「私としては、あそこでああも割り切って任せきりになれるレイアさんが信じられませんよ。少しは疑ったり、躊躇ったりしないですか? そもそも、あんなの分の悪すぎるばくちなんですから。その詳細も知らないままで」


「まぁあの状況じゃ、あたしには何にも浮かばなかったんだもの。だったら、どんだけ分が悪くても、勝ちの目があるあんたの策に乗るのは当たり前だし、そうと決めたらうだうだ考えるよりやることやるほうが性にあってるのよ」


「はぁ、ホント、そういうとこは流石としか言いようがありませんね……」


「まっ、世の中なるようになるのよ! 運に助けられたってのはあるわね。けど、勝ちは勝ちよ。そもそも、あたしのことなんだからたとえ運に見えても、むしろそれは必然ってことなのよ!」


 そう、決まっているのだ。あの、ミーティアとメイディとの一戦があったのだから。あそこであんな風に再戦を誓っておきながら、結局負けてそれが叶わなかった、なんて笑い話にもならない。


「それより、分かってるわね? 明日は、メイディ達との戦いよ、ちゃんと準備や作戦は用意してあるんでしょうね?」


「ふふっ、今回みたいなことならいざ知らず、あのときから今日までしっかりシミュレーション済みです。あの二人の性格や能力、その対策もしっかり用意できてます。まぁ策はあっても、それを上手くできるかどうかは、あなたの実力次第ですが」


「ふっ、いい度胸ね! その挑戦、乗ってあげるわ! あんたの描いた策、しっかりかっちり完璧に、あたしがやり遂げてあげるわ!」


「期待してますよ、私としても、やっぱりあの引き分けは悔しいですから。それに、ここまできたら、しっかり優勝してしまわないと、という気になってしまいますしね」


 話しているうちに、気力は充分に回復できた。


 そうなれば、後は次の対戦相手――きっと勝ってくるであろうあの二人に声をかけて、明日に備えて作戦会議だ。


「あのー……」


 そんなことを考えていると、後ろからかけられる声。振り返ると、気まずそうな顔をしたジェーンの姿が。


「えっと、その言いづらいんだけど……」


「ん、なんですか? 今回は、そこまで場所も壊してませんよね?」


「そうよね。まぁ、あそこが硬かったお陰、ってのもあるけど」


 多少削れたり抉れはしたが、粉々に放ってないので大丈夫だろう。というか、あんな傷でとやかく言うなら、闘技場なんてやるなという話だ。


「あー、いや、そういういうんじゃないんだ。二人とも、次の試合に向けてやる気も充分みたいなんだけど、その、それが、さ……」


「ん、次がどうしたの?」



「えっと、ミーティアちゃんとメイディちゃんのチームなんだけど、負けちゃってるのよね、もうとっくの昔に。君らが入ってすぐ、負けて医務室送りになってるのよ……」



「「えっ?」」


 そんなわけで、あれほど切望し、準備を整えたはずの再戦の約束は、あっさりと消え去ってしまったのだった。



……はい、火曜どころか水曜ですね、すみません。

ちょっと、色々と立て込んだりして更新できず申し訳ありませんでした。


そんなわけで、遅くなりましたが、更新です。

まぁ再戦の約束をしたらそれが果たされる……とは限らないのが世知辛い世の中です。


それでは、今回も読んでいただきありがとうございました。

次回こそは、月曜夜に更新したいと思いますので、同かよろしくお願いいたします。

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