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俺と彼女達の下半身事情-魔物娘と過ごす日々-  作者: 黒箱ハイフン
第二話 『まるでアニメのような日常……ただし、下を見なければ』
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011 『依織のお願い』

「あ、彰さんいいタイミングです。料理のほう、調度今完成したところですよ」


 居間に戻ると、食卓には美味しそうな料理が並び、湯気を立てていた。依織の言葉通り、出来立てといった様子だ。


「おっ、昨日にも増して豪華だな! それに美味そうだ!」


 しかも煮込み料理など、手間のかかったものが多めだ。それらが食欲を誘う香りとともに、湯気を立てているのだからもう堪らない。ついついテンションもあがってしまう。


「ふふっ、今日は時間のほうもありましたので、色々作ってみたんです。ところで、あの蛇の姿が見えませんけれど、どうしたんですか?」


「あぁ、レイアならテレビに夢中でな。仕方ないから置いてきた。あいつの分はラップを被せて残しておいてやればいいだろう」


「まだ見てたのですか……。仕事の邪魔をされるぐらいなら、と思いテレビの使い方を教えたのですが、まさかここまでは気に入るなんて。まったく、何を考えているのでしょうか……?」


 怒りというよりは呆れの強い口調で言いながら、依織が一人分の料理にラップをかけていく。今回は嫌がらせなどせず、ちゃんとレイアの分も作ってくれたようだ。


「まぁ今まで知らなかったなら仕方ないのかもしれないがな、あそこまでハマるのも」


それにしても、レイアのやつテレビの使い方も知らなかったというのは驚きだ。いくら貴族といってもそこまで文明から隔絶されているものなのか? もしかして、人外の世の中ではそういうのが普通だったりするのだろうか。


「確かに、そうかもしれません。それに、そのおかげで彰さんと二人で食事が出来るんですから、なら寧ろよかったと思うべきですね」


 そんな嬉しそうな依織の言葉に、少しドキリとする。つまりは、俺と二人で食事が出来るだけで、こんなに喜んでくれている、ということなのだから。


レイアに対して毒を吐きすぎる気はあるけれど、それ以外は非の打ち所の無い性格の美少女なのだ、依織は。そのうえ、彼女は俺にとても好意的ときている。


「もし、これで腰から下が蜘蛛じゃなかったらなぁ……」


 つい、呟いてしまう。


 どれほど家庭的で美少女でも、テーブルの下にある下半身は人間のものではないのだ。別にだからといって怖がるつもりは無いが、それでも色々惜しく思ってしまうのは仕方ないだろう。


「ん、何か言いましたか?」


「いや、なんでもないさ。それより、よく分からないけど、この煮込んだやつ美味いな」


 慌てて誤魔化す。面と向かって下半身が蜘蛛なのが残念だったなんて言えるはずが無い。


それに、依織もレイアも下半身がごく普通の人間だったなら、多分こんな風に一緒に過ごすような縁は出来なかったようにも思える。


そう考えれば、今の彼女達との生活は、全てなるべくしてなったのかもしれない。


「ふふっ、ありがとうございます。実は自信作なんです、その料理は」


 嬉しそうに料理の説明をする依織。そんな彼女達と出会えた奇妙な巡り会わせに感謝しつつ、俺は料理を口に運んでいくのだった。



「ところで彰さん、一つ、お願いがあるのですが……」


食後の片づけも終わり、一息ついたところでおずおずといった感じで聞いてきた。


「ん、どうした?」


「あの、明日もしお時間が空いていましたら、食材の買出しのほうを頼みたいのですが、よろしいでしょうか?」


「なんだ、そんなことか。勿論いいさ。明日は休みだし、昼にでも買出しにいってくるか」


 何を頼まれるかと思ったら、買いだしか。昨日の風呂のようなことだったらどうしようかと内心少し焦っていたのだが、こんな頼みごとならお安い御用だ。


「ありがとうございます。私が色々作りすぎてしまって、冷蔵庫の中が切れそうでしたので」


「いや、依織はよくやってくれてるさ。多分、入ってるものが少なかっただけだろ」


 もともとは俺一人で生活する予定だったのだ。それで依織とレイアの二人分の料理も作るとなれば、すぐに食材が尽きるのは当然だろう。


「だけど俺は料理なんてできないから、何を買えばいいのかメモかなんかで指示を頼むぜ」


まったくもって自慢にならない宣言である。考えてみれば、両親が料理の出来ない俺を一人暮らしさせようとしたこと自体、無茶振りといえよう。


「はい、そこは大丈夫です。それでは明日のお買い物、よろしくお願いしますね」


「おう、任せとけ。その代わり、またうまい料理のほうを頼むぜ」


「勿論です。彰さんに喜んでいただけるよう、精一杯心を込めておつくりさせていただきます」


 なんてことのない約束。けれどそのおかげであんなことになるなんで、このときの俺は思いもよらなかった。


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