100 『正々堂々はどこにある?』
「あんた、大概ね……」
「あら、レイアさんが考えなしなだけではないのですか?」
「もういいわ……。あたしの負けよ、とりあえず、助かったわよ」
依織の話を聞いて、あたしはもはや言い返す気力すらもなくなっていた。
流石に、あの予選の内容から、そんなことをやりだすなんて、想像できるはずもない。お陰で予選を通過できたのはいいけれど、流石にちょっと引くというか何というか。
「……あぁ、こういうのを腹黒っていうのね」
「変な言いがかりはやめてください。私はあくまでルールに乗っ取って、点数を稼いだだけなんですから。誰がどう見ても、私は清廉潔白な大和撫子ですよ?」
……もはや何も言うまい。
不毛な話は切り上げておこう。予選通過、その事実だけあればいいのだ。
「それより、作戦とかはあるの? 一応、今回はあんたの言うこと聞いてあげるわよ」
現在のあたし達がいるのは創られたばかりの闘技場。
そして、相対するのは、予選八位のチーム――、
「ふふんっ、あたしの歌声で骨抜きにしてやるのだ~!」
なんて、ことをのたまう水槽に入った少女と。
「はい、お嬢様。お嬢様の美声にかかれば誰もが一瞬で虜にございます」
と、言いながら、ひたすら水槽の少女を鼻血を流しながら撮影している、慇懃無礼な執事服の少女。
ただそれだけなら、ごく普通の――、なんて言えるわけがわね、流石に……。
「はい、あれを普通と言い切るのは、流石に普通という概念への冒涜と思います」
「ちょっと、勝手に人の思考読まないでよ」
ただまぁ、その意見には全面賛成だけれども。
なお、色々頭が痛くなるような二人であるが、その半身はそれぞれ、魚のものと、イカのものである。人魚の令嬢と、彼女に仕える従者のクラーケン、といったところかしら?
「ラ、ララララ~♪」
「お嬢様ぁ――――――!!!!!」
遂に歌いだす人魚と、ストロボを輝かせながら感極まったかのように叫ぶクラーケン。
「……いくらなんでも自由すぎない?」
「……ツッコンだら負けです。あと、とりあえず作戦ですが、レイアさんはいつも通り突っ込んでください。それですぐに終わりますから」
「適当な作戦ね。けどまぁ、そのほうが分かりやすいし、楽っちゃ楽ね」
一応、信頼してくれてるみたいだし、名誉挽回といきましょうか!
「今回に関しては、もう準備は済んでますしね」
「はぁ準備って何を――」
「それじゃあ、試合開始で~すっ!」
と、宣言がなされると同時、
「きゃぁあああああああああ!?」
「お嬢さまぁぁぁぁああああ!?」
なんて叫び声を上げて、対戦相手の二人が、糸に吊り上げられたのだった。
「勿論、待機状態の糸の仕込みですよ? さぁ、レイアさん後はあなたが戦果を出してきてくださいな」
「鬼ね、あんた……」
こうして、どっとした疲れと共に、あたし達は一回戦を突破したのだった。
正々堂々となんて言葉は、どこにあるのだろうか……?
そんなわけで更新です。
モン娘タッグトーナメント開幕です。w
そして、ようやくレイアさんのDEBANです……となるはずなのに、どこかの外道が大体持ってきました。w
というか、何気に今回で100回らしいです。
なんだかんだで長く続いております。
それもいつも読んでくださる皆様のお陰です、これからもどうかよろしくお願いいたします。
それでは、今回も読んでいただきありがとうございました。
次回も月曜更新予定です。