望郷
願った物は遠く。
望んでも届かない所にあった。
苦難の道を進み。
共に歩んだ者は道半ばにして倒れ。
頂きに辿りついた時に居たのは己だけだった。
赤く染まる夕日に照らされて。
眼下に望む世界を見る。
来た道を折り返し。
険しい道に再び身を躍らせる。
行きの道程も厳しいものだったが帰りも違わぬ険しさだった。
幾多の障害を乗り越え。
故郷の姿を脳裏に浮かべた。
願った物は遠く。
だが、それでも届かぬものではない。
この一歩が、近づいているのを確信させてくれる。
夕日に照らされた赤い大地。
黄昏の光を浴びて紅に染まる身体。
温かなものを浴びながら、ようやくたどり着く。
だが、歓迎の言葉は無く。
荒れ果てた大地に一人佇む。
夕焼けの光を反射する水たまりに我が身が映る。
夕焼けで赤く染まった自分の姿を。
誰も居ない燃える故郷で。
魔物は空を見上げた。
迎えてくれたのは。
憎悪と憤怒の叫び。
そして矢の雨。
偉業を果たした異形。
その末路は…。