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私が少々規模の大きい、良家の子女が多く通う瑞澤学園に入学するに至ったまでをはなそうか。
簡単に言うと、私が中学を卒業するのを機会に父は以前から打診のあった海外への転勤をうけたのだが、私はついていくのをいやがったのだ。
というのも、はじめは海外生活に憧れ半分不安半分で一応は承諾していたのだが、家族ぐるみで仲良くしている友人が私の不安をあおるようなことを何かにつけていってきたために、チキンな私はぶるってしまい日本から出て行きたくないとごねた。母はなら私もマナと一緒に残ろうかとにっこり笑っていってくれた。
けれども父は涙目でそんなこと言わないでと訴えてきて、それでこちらも涙目でどうしてもいやだ、単身赴任してくださいと訴えると
「マナちゃんも、湊(母である。父は母にべたぼれである。)もいない家に帰るなんて耐えられないっ。さみしい、俺死んじゃうっ、さみしさでしんじゃうっ」
などとしくしくと泣くのだ。しまいには妙にきりっとした顔で
「会社をやめよう。貯金はあるし、しばらく働かなくても大丈夫だ。そしたらずっと湊といられる。マナちゃんにおかえりをいえる。毎日一緒にご飯を食べれる!」
と言いだした。
私はそんな訳には行かないと、寮のある学校を探し、瑞澤学園は学費が少しばかり高かったので、学業の成績がなかなかによかった私は特待生として入学したのだ。
私に恐怖をあおった友人は「勝手に学校決めてしまって!うちの高校通うつもりだったくせに、うちから通えばよかったのに」と怒られたのでそのときは謝ったが、今思えば私が怖がるような情報を怖がるようなタイミングを計って言っていた気がするので、この野郎っという気持ちである。
そんなこんなで瑞澤学園に入学したのだけれど、あまりなじめなかった。
というのも、良家の子女が多いクラスになったため、あちらも距離をはかりかねているし、こちらは親元を離れての生活がいっぱいいっぱいで積極的に友達をつくれず、話もあわず、陰からは何かを言われ・・・ぼっちになってしまったのだ。
なぜ私だけがクラスでたった一人の外部生なのか聞きたい。
ああ、外部生で構成されているクラスもあるというのになんて不運だろう。
ぼっちになってしまった私にはクラスに居場所などなく、広い学園を自分の居場所をもとめて歩く生活をしていると図書館にたどり着いた。図書室という規模ではなく、渡り廊下で校舎とつながってはいるものの、学校が休みの日でも開館していて図書館として独立している。蔵書の数は多く雑誌だって少しマニアックなものまでそろっている。これはすごく楽しみだ。そしてこの雑誌を購入すると決めた方とお話がしたい。すごくしたい。良い友人になれそうな気がする。
それに図書館にはご飯を食べることのできるスペースまであった。本当によかった。トイレでご飯は断固拒否したい。
寮は校舎から近いので朝も放課後も休みの日も、もちろん昼休みも図書館にかよいつめるようになった私は司書の方と親しくなることができた。
そして、その1年後に私の高校生活を脅かす原因をつくった、赤いめがねの似合う西城琴音先輩と出会った。