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嘘つきロートレック 前編

ある吟遊詩人の物語 


嘘つきロートレック 前編


「すいません・・・。」

 私は目の前の少し・・・大きめの家の戸を叩く。しばらくすると、白髭を蓄えた老人がじっとこちらを見る。珍しい何かを見るようだ。

「・・・あんたは?」

「旅の者です。」

 老人がいぶかしそうにこちらの体をなめ回すように見つめる。

「村の人にまずは村長さんに挨拶をと言われまして・・・。」

「確かに。私が村長だ・・・。お前・・・吟遊詩人か?」

「あ・・・はい。」

 背中には大きめのギターを担いでいた。音はかなり良く響く・・・生活の糧だ。老人は更に奥を見るが・・・一応・・・私は一人旅だ。周りでは村人達が・・・農作業を終え・・・各自帰宅を始めていた。

「そうか・・・で・・・何のようだ?」

 昔の頃の吟遊詩人には様々な役目がある。今で言うマスコミ、芸人、郵便配達、冒険者まがい、調査などだ。一応それらを一手に引き受けるのが、各地を巡る“吟遊詩人”である。

「出来ればもう遅いので・・・泊めていただきたいのですが・・・。」

 周囲を見渡すと、夕暮れの火の明かりになって、すぐに夜のとばりが降り始める。山が周囲にひしめき、村の周りの木々も深い。

「ここには娯楽が少ないのでな・・・出来れば・・・。」

「分かっています。」

「そうか。」

 老人はこちらの空く等に嬉しそうにすると体をずらし、手招きをする。中には若い夫婦と、子供達がいた。もう・・・夕食の準備をしていた。

「こんにちは。」

「早速で悪いが・・・ピーター。」

「はい。」

「村の者を呼んできてくれ。せっかく吟遊詩人殿が来てくれたのだ。何か皆で囲んで色々やって貰おう。」

 自分の肩に掛けた荷物を暖炉の近くに降ろすと、その場に腰を下ろす。少し傷んだ木の板がクッション代わりになってくれる。その間に青年は走って外に出て行った。

「おじちゃん。」

 少女がおそるおそる近づいてくる。

「食事までは少しある。一つ頼めないか?」

「あ・・・はい。」

 老人の少し優しい声を聞くと軽く頷き、背中に担いでいたギターをあぐらをかいた足の間に固定して、少し爪弾く。音の響きはいい感じだ。少女は慣れたように少し間隔を開けて座る。

「では・・・子供の為に一曲行きましょうか。」

 軽く・・・まるで絹でも触るような優しいタッチで舷を弾き、音を鳴らす。優しげな音が、台所から聞こえる窯の音とマッチして、幻想的にさえさせる。少女は目をつぶり、聞く体制を整えていた。どれを歌うか頭の中にあれこれある・・・思考を巡らせるうちに・・・あの物語を思い出す。子供向けではあるが・・・。悲しい・・・。曲調を変え、少しおとなしめの音を奏でる。


“昔ある所にロートレックと呼ばれた少年がいました。彼は羊飼いで、勤勉でした。彼は村に来る狼がいないか見張る当番を請け負っていました。衆に一度彼は好きな羊飼いの仕事を辞めて、村の高台に上っていました。彼はしばらくするとこう叫ぶのでした。

「おーい。狼が来るぞー!」

 その叫び声に村人は慌てて逃げ出しました。この村は幾度となく狼に村を襲われ、全滅しかかっていた村でした。慌てて逃げ出すものの、中々狼はやってきません。しばらくするとロートレックは何事もないようにやってきました。

「狼は・・・。」

「ああ・・・。嘘だ。あれは。」

「嘘・・・騙すんじゃないよ。」

 そう言うと村人はあきれ顔で各自戻っていきました。それ以来・・・ロートレックの見張り番の時だけこういう騒動は起きていきました。最初は真剣に避難していた村人も、何回も繰り返すうちにロートレックは信用されなくなっていきました。そしてついに呆れ履いてた村人はロートレックの言葉を信用しなくなりました。

「ロートレック・・・お前又嘘言うのか?」

「あいつの言葉は信じるな。」

 そうささやかれる中、見張り台にたった彼はもう一度言うのでした。

「狼が来るぞ!」

 もう散々騙された村人は移動しようとしません。必死に説得するのですが誰もロートレックの言葉を信用しませんでした。そして村人が逃げ出さない中、彼はただ一人、狼に食い殺されてしまいましたとさ。“


 その唄が終わる事には周囲には子供達と・・・大人が数名立って聞き惚れていました。

「どうでしたか?」

 私は、微笑んで周りを見渡す。料理を作っていた奥さんでさえ、手を止め、聞き惚れていたようだ。かなり感触はよい。

「もう一曲・・・いや皆の者・・・食事が終わったら集会場にあつまって、聞こうではないか。いいですな。吟遊詩人殿。」

 その声に私は軽く頷いた。気に入られれば大抵こういう事になるのは嬉しい事だが・・・今日は寝かせてもらえないらしい。私は疲れた微笑みで皆を見渡す。皆の輝く顔は以下に物語に飢えていたか分かる。だが実際この詩に秘められた真実はもっと・・・・・・・・・。その現場を見た私にとっては・・・。



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