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操る炎は拒絶の業火  作者: Ban
第1章
6/7

第四話╋再び

【??side】



「なぁ」


「ん?なんだよ」


俺は同じ所属である同僚に話し掛けた。


俺達は職業という職業に就いているわけではない。今やっているのは、見張りみたいなものだ。


確か、約9年前ほどだろうか。

今の雇い主が俺達に依頼を頼み込んだのだ。


『人手が必要だ。ただ、この扉の前で見張りをしておけばいい』


そいつは髭を蓄えた爺さんで、ヒョロヒョロとした体型だった。


爺さんの依頼はとても不思議だった。

ただ、扉の前で見張っておくだけで月額金貨一枚も報酬としてくれるのだ。


金貨一枚あれば、半年は遊んで暮らせる。そんな大金をほとんど何もせずに、くれると言うのだ。




だから、少し怖い。



そんな大金を報酬に回すほど、この扉の向こうにある“何か”はとても高価で、俺達が思う以上の、価値のある何かだ。


例えば、俺達が仕事をサボって、敵にその価値のあるものが奪われたとする。


すると、どうなるか。


俺達は迷いなく、ミンチにされる。


あの爺さんは少し──いや、すごく狂ったような瞳をしていた。

多分、人を殺すことを躊躇いもせずに行える奴だ。



「おい、さっきから黙ってどうした?

お前が呼んだのだろう」


「……あぁ、すまん。考え事をしていた。えっと…………なんだったかな?」


「いや、俺に聞かれてもな」


「……まー、いっか」



何か、とても大切なことを言おうとしていたような気がしたが、忘れるくらいだ。


そこまで大事ではないのだろう。


俺達は仕事に集中することにした。




少しだけ匂う、煙臭い香りに気付かずに。





──1時間前──



【バジルside】



「うおっ!薄気味わりぃーとこだ─」

「黙れバジル!敵に気付かれるだろうが」


「……すいません」



ライヴァさんに怒られたところで、再び視線を戻す。


俺達、国家親衛隊第三番隊+αは、孤児院虐殺事件の犯人───ナーバス・バルザがいるという“黒濫の森”の中心部近くにいる。


そう、中心部には、ナーバス・バルザが作っていたというアジトがある。


“黒濫の森”に入った時には、本当にアジトなんかあるのだろうか?と疑っていた。


だって、めっちゃ魔物が出てくるんだもの!

いや、知ってたよ?

たくさん魔物が出てくるって知ってたよ?


黒濫の森と言えば、魔物の巣窟だもん!


魔物は全部、親衛隊の皆さんが倒してくれたから、怖くはなかったけど。



でも、本当にあったんだよね。

ナーバス・バルザのアジト。


それが目の間にある。


薄気味悪い雰囲気を出している、

黒い建物が。



俺はジークに目をやる。


ジークは穴が開くくらい、ジッとその建物を睨むように見つめていた。


拳がギュッと握られている。



──あぁ、なんで気付かなかったんだろう。


こんなにも、ジークは我慢してきたのだ。

こんなにも、辛い想いをしてきたのだ。


だって、十年もだ。


精霊を救いたくて救いたくて。

でも、場所すら分からなくて。

その頃はとても無力で。


そんな想いをずっと抱えてきたんだ。


………でもな、ジーク。

もう大丈夫だ。


ジークの精霊はきっと救い出せる。


親衛隊の皆さんがいる。

ライヴァさんもいる。

ソニアもメルメも。

俺だって、いるんだ。


こんなにも、仲間がいるんだ。


ジークにはいろいろと助けられたし、

今度は俺が助ける番だよ。


「……皆で行けば、怖くないってね」


「だからバジル!煩いって言ってんだろうが!」


「いや、ライヴァさん。

あなたのほうが煩いような気がするんですけど」


「あ?そんなわけ──」



「「誰だ!そこに隠れているのは分かっている!何もしないから、出てこい!」」



ほーら、見つかった。



「確かにライヴァのほうがデカかったな」


「うんうん、だよねー。

俺よりかデカかっ…………は?」



え、なんでここに担任がいるの?


オレンジ色の髪に、青空色の瞳。

縁なしメガネに、右目下に泣き黒子。


あれ?

マジで担任じゃん。



「エルモア、遅えぞ」


「ちゃんと来たんだから、文句言うなよライヴァ。しかも俺の生徒を勝手に使いやがって」


「まぁまぁ、いいじゃんか。

そいつら、結構強いんだしさ」


「だが、まだ子供だぞ」


「ま、危ない時は俺が守るし。

ジークは伊達に俺が育ててきたんでね。

お守りは必要ねえよ」



いや、あの。

お話しをするのは別にいいんですが───いや、今してはいけないけども、とりあえず、



あの人達をどうにかしよう?

援護を呼ばれちゃうよ?



「「侵入者だぁーーー!」」



あ、遅かった。



突然叫んだ、見回りであろうゴツい二人を、親衛隊の人が蹴って気絶させた。


なんか、親衛隊が最強なんだけど。


尊敬の眼差しで親衛隊を見ていると、ライヴァが今の状況に気付き、声を上げる。


「とりあえず、もう見つかってしまった!計画では“こそこそと侵入しよう”だったが、建物の中に入る前に見つかって叫ばれたから計画を変更する!」


いや、見つかったのはお前のせいだからね?

ライヴァさん。


「三番隊!お前達はとにかく中にいる奴を片っ端から片付けろ!

俺とジーク、その他三名は、ナーバス・バルザ及び精霊の確保!

エルモア、お前はアジトの周りを燃やせ!魔物を呼びつけないようにしろ!煙の匂いで敵が来るだろうから、ソイツらを任せる!」


「「「了解しました、隊長!」」」


「その他三名……スルーしとこ」


「おいおいライヴァ。呼んでおいてそれだけかよ。まぁいい、生徒に怪我とかさせんなよ?」



エルモア先生が手をかざす。

その瞬間、アジトの周辺のいたるところで爆発が起きた。



「ほぉら、宴の始まりだ!

行ってこいや野郎どもーー!!」



エルモア先生のその叫びに突き動かされた親衛隊は、一斉にアジトへと乗り込んでいった。


エルモア先生は満足そうに微笑むと、また爆発を起こしに、軽い足取りで歩いていった。


ヤバい、エルモア先生の印象が変わってしまった。

戦闘狂なんだね。いや、爆発狂かな?



「さて、俺らも行くか」


ライヴァさんがジーク、俺、ソニア、メルメの順で見ていく。


……俺を見たときだけ鼻で笑った気がしたのは、俺の気のせいか?


「俺達の仕事は一番重要だ。

危険人物であるナーバス・バルザ、ジークの精霊の確保。

ナーバス・バルザの特徴は、

髭が多い。白髪。モヤシ。

この三拍子が揃ってれば、ナーバス・バルザに間違いないぞ」


いやいや、そんな奴はこの世の中にはたくさんいるぞ!そいつらに謝れ!

全力で謝れ!


「んで、精霊の特徴は……………ジーク、特徴を挙げろ!俺は精霊の姿をチロっとしか見てないから、もう記憶の中にねぇ」


「んー、赤い」








え、それだけ?






「もっと他にねえのか」


「ない」


「…………じゃあ、それで。行くぞ」




早速と歩いていくライヴァさんとジーク。


残された俺達は唖然としていた。


……あんなにぐだぐだでいいのか?


「はぁ………なんなのよアイツ等。

テキトーすぎない?」


ソニアが溜め息をつきながら、遠くなっていく二人の背中を見た。


「う~、おいていかれちゃいますよ?

私達も早く行きましょう?」


メ、メルメ!

俺が絶対に守るからね!

土属性なめんじゃねえよ?


俺はメルメの手を掴む。


「ほら、行こうか」


「あ、え、はい」


「バジル、そのにやけ顔をやめな」



俺達は急ぎ足で二人を追った。



ジーク。

お前はまだ、俺達に何か隠しているだろう?

いや、ライヴァさんにも隠しているのかな?


精霊の特徴を言うとき。

“赤い”の一言だった。


普通なら、まだ他にもあるだろう?

鳥だったとか、猫だったとか。


でも、“赤い”だけ。

それは、言えない理由があるはずだ。



まだ信用が足らないのか?

孤児院虐殺事件で何があった?


十年間一緒だったライヴァさんにも話していない事とは、一体なんなんだ?



なぁ、教えてくれよ──ジーク。






【ジークside】



俺はまだ、誰にも言ってないことがある。


ライヴァにも言ってない。



精霊が、人型の属性神で“黒神化”していたということ。



黒神化していた、なんて言ったら絶対にこの救出は反対される。


それだけは、間のがれたい。


“黒神化”されてたって、俺にとっては大事な大事な精霊だ。

一生もののパートナーなんだ。


バレるのは時間の問題。

反対されるのは分かっている。


それでも俺は、救い出す。


この手で、必ず。





【見張りside】



おいおい、侵入者かよ。

この九年間で初めての出来事だな。


「どうするよ?俺達も行ったほうがいいのか?」


「いやいや、ここで見張りしとかないとヤベえぞ?

ここに侵入者が来て、中のものを取っていってみろ?

俺達は即ミンチだぞ」


「それもそうだな」



侵入者は何故かこの建物の周りを、ガンガン燃やしているみたいだ。


時々、ボカンと爆発音が鳴る。



「それにしても、なんか怖えなぁ。

爆発のせいか、暑いしな……」


「それ思ってた。でも、爆発音は、結構遠いぞ?熱ってここまで届くっけ?」


「さあ?でもなんか暑いしな。

………………ん?あれ、何?」



同僚が通路の右側を指差す。

俺はその方向をつられるように見た。


いち、にい、さん、しい、ご………

5人の人間が、こちらの方に走ってくる。


連絡係だろうか?

いや、連絡するだけだから、いつものように一人で十分だよな?


では、誰だ?


茶色の長髪男。銀髪の少年。

緑髪のイケメン。黒髪ポニテの少女。

ピンク髪の……子供?


そんな奴ら、聞いたことも見たこともねぇ。



「侵入者、だな」


「ふーん。やっとこさの仕事到来って感じ?

これまで、ここで突っ立ってるだけだったしなぁ」



俺達は向かってくる5人を見つめる。

そいつらはだんだんと近づいてくる。


笑いが込み上げそうだ。


あいつらは、今からの未来を知らない。

俺達、『ゴールデンパートナー』とも呼ばれた、最高の傭兵に、無惨にもボロボロになるという未来をnボカっ!


「ぐはっ!」


「う″っ!」



視界がぐらりと傾いた。

ガン!と頭が打ち付けられる。


何が起こった?

たったこの一瞬で、何が………





【ジークside】



「こいつら、弱ぇ」


「弱すぎたな」


確かに。

だって、バジルとソフィアが跳び蹴りしただけだったのに、一発で気絶したんだ。


でも、なんでこんなところにいたんだろう?

この騒ぎには気付いていたんだろうから、こんな何もないような所にいるのはおかしい。


「なんか、暑くね?」


バジルがふと呟いた。

そう言われると、確かに暑いかも。


俺はこの暑さに違和感を覚えた。


エルモア先生の爆発で暑くなる、というのは有り得ない。

だって、その爆発はここの近くではしていない。

なら、何故暑い?


「ここか………」


俺は、この見張り達がその対象としていたであろう黒い扉の前に立つ。


それは、重々しく、俺達にのし掛かるように存在していた。


「よく気付いたな、ジーク。ここから、凄い熱気が来ているぞ?大きな魔力と一緒にな………」


「魔力……?」


「あぁ………スッゴいたくさんの魔力。

例えて言うならば、強い精霊達を一気に集めました!みたいな?」


へぇ………そういうことか。


俺もライヴァみたいに魔力を感じられるくらい、強くなりたいな。



「ふーん、じゃあ皆下がってくれる?

そこの扉、頑丈そうだからさ……あたしの魔法でぶった切ってやるよ」


ソニアがニヤリと口角を上げた。


怖すぎて鳥肌が立ってしまった。

不覚すぎる。


俺達がソニアより後ろへと下がる。

ソニアはそれを確認すると、おもむろに右手を上げ、風の刃を作り始めた。


それは肉眼で見える程の鎌鼬。


「ぶった斬れ──斬風刃!」


ソニアが風を投げた。

それは勢いを伴って、黒い扉へと吸い込まれるように飛んでいく。


ドカーン!という音と共に地響きがなり響き、砂埃のようなものがわき上がる。


それが少し収まったところで、瞑っていた目を開けると、黒い扉は跡形もなく消え去っていた。


改めて、ソニアの風魔法の威力に驚かされる。


「フンっ、こんな扉で隠そうだなんて、ナーバス・バルザは馬鹿なんだな」


得意気に言うその顔は満足そうに微笑んでいた。ソニアはやっぱ、生まれてきた性別を間違えたな。



「ソニアちゃん凄い!

私もそのくらい強くなりたいな」


「メルメはそのままでも強いよ」


「はいはい、お前らは同年代と比べると強いぞ。ほら、そんなことより扉が開いたんだから、行くぞ?」


いや、開いたんじゃなくて、壊したんだけどな。


そう突っ込もうとしたが、それは出来なかった。


壊した扉の向こうから、魔力を感じる事が出来ない俺でも、感じられる程大きく、禍々しい魔力が溢れるように漏れたからだ。


「この魔力……ナーバス・バルザ!」


ライヴァが忌々しそうな声で呟いた。


そうか。

この中にいるのか。


精霊さんと共に。


「あ、ジーク待て!」


俺はライヴァの声を無視するように、駆け出した。


早く、早く、早く、早く。


俺の頭の中には、それしかない。



「んだよ、コレ」


壊れた扉の奧。


そこには、人1人入る事が出来る程、大きな試験管がズラリと並べられている。


その試験管の中には、緑色の液体のようなものが入っている。

そして、試験管一つ一つに一匹ずつ精霊が入れられていた。


「こんなにっ!」


「嘘だろ、こんなにたくさん?」


「可哀想っ」


後からやってきた皆も、この光景を見て驚きと苦痛の声を上げる。


この部屋は見ただけだが、とても広い。

その広い部屋に、ズラリと試験管が敷き詰められているのだ。

ぱっと見だが、その数は百を軽く超しているだろう。



「ナーバス・バルザ!」


ライヴァが覇気のある声で叫んだ。


俺達の目の前には、大きな試験管が花道のように並べられている。


そして、その花道の先。

ほかのとは比べものにならない程に大きな試験管。その前に、アイツがいた。


「呼んだか?久しいのぅ、隊長さんや」


しわがれた声。

それを忘れたことはない。


白い髪。地面につきそうな程長い白髭。

以前はひょろりとしていたが、今では普通と言えるくらいに太っている。


間違いなく、アイツだ。

ナーバス・バルザだ。


俺の大好きだった、院長だ。

子供たちに人気だった、あの、優しい…。


そして、俺の大嫌いな。

精霊を奪い、売りさばき、仲間を殺した犯罪者だ。



「………──ちょう」


俺が声にならない声を上げると、院長は視線をこちらに向けた。


そして少しだけ目を見開く。


「お前は……まさか、ジークか?」


「名前を呼ぶな!

仲間を殺した、精霊を奪ったお前が!」


あんなヤツに名前を呼ばれたんだと思うと、

鳥肌が立つ。


「ジーク、お前は本当に役に立った。

コイツを召喚してくれたのだからなぁ。

本当に感謝しているぞ」


院長はそう言って、右へ一歩移動した。


すると、院長で隠れていた試験管の中身がよく見えるようになった。



あぁ、やはり変わっていない。

あの時と、全然変わっていない。


サイドだけが長い赤い髪。

そこから生えるようにある、黒くて尖った耳。

赤を基調とした、全体的にヒラヒラとした服。

首から提げられている、白い勾玉。


閉じられている瞼の奧には、おそらく、血のように赤い瞳が存在しているであろう。





「赤い精霊さん……っ!」





俺がそう言うと、後ろにいる皆が息を呑んだのが分かった。


「う、そだろ?アレがジークの精霊?ジークが召喚したのか?」


「ちょっと、それはないだろ」


「ジークくん……」



「おい、ジーク。聞いてねえぞ。

ソイツは…………────」


ライヴァの殺気が、少しだけ俺に向けられた。

それだけ、怒っているのだ。


「知ってる。知ってるよ。

俺が召喚したのは、“黒神化”した精霊」


「何故言わなかった。そういうことは初めに言って…──」


「言えないよ」


言えない。

だって、もし言ったとしたら、ライヴァは俺をここまで連れてこなかった。


自分たちで勝手に精霊さんを処分していただろう?


「……………」


ライヴァは黙りこくる。

ほら、図星なんだ。


それを見かねたバジルが、口を開く。


「ジーク、お前“黒神化”が何か知っているだろう?授業で習ったはずだ!それを知っていて、そんな事を言っているのか!?」


「知ってる。俺が一番よく知ってる」



たくさん調べた。

嘘であって欲しいと、俺がどれだけ探したか。


“黒神化”


それは、心を悪に蝕まれる事。

人型の精霊にだけ起こるそれは、精神の制御がきかなくなり、暴走をしてしまう。


“黒神化”の特徴。

それは、耳が大きくなり、尖って、黒に染まる。

瞳の周りを囲む白眼が漆黒になる。

爪が伸び、黒くなる。


そして、最終的には肌も黒くなるのだ。



「“黒神化”していようがあるまいが、俺にとっては大事な精霊だ。一生もののパートナーなんだ」


だから、取り返すんだ。

救い出すんだ。



院長を見やる。

彼もこちらを見ていたようで、パッチリと視線が絡み合った。


「コイツはまだ完全なる“黒神化”にはなっておらん。爪と肌がまだだからな。だが、それらが完璧に終わると、コイツの価値は上がるぞ?」


クックックッと喉で笑う院長。



俺は後ろをチラリと見た。


皆は俺や院長、精霊さんを見ながら呆然としていた。


ライヴァは眉間に皺を寄せながら、精霊さんを見つめていた。


……───やはり、味方はいないか。


だが、それは予想していた事。



俺は再び院長に視線を戻す。


「俺は許すつもりはないよ、院長。

あんたの罪は深い。一生を背負って償ってもらう。そして精霊を返してもらうよ!」


「ジークはやはり馬鹿か。

お前たちで、このわしに勝てるとでも?

この死に損ないが」


「何のために、この十年間修行してきたと思う?簡単にやられたりしない。精霊さんは絶対に返してもら………っ!」



俺は話している途中で気付いてしまった。

驚きすぎて、声が出ない。



院長や皆は、不思議そうに俺を見た後、俺の視線の先を追う。



あぁ、やはり。

やはり、変わっていない。


あの美しい色がそこにある。


血のような鮮やかな赤が、精霊さんの瞳にあった。

目が開いていたのだ。


「な、何故だ!麻酔はまだまだ持つ筈だ!

何故目が覚めたんだ!?」


ギャーギャーと喚く院長。


だが、その声も、パリーン!という音と共に消え去った。


精霊さんが試験管を突き破り、院長の首を手で締め上げたからだ。


俺も皆も院長も、突然の事で身動きが出来なかった。



「ぎ、ざま……この、わじを、………ごろそう、……いう、の、か」


院長が苦しそうに言いながら、ジタバタと暴れる。

でも、精霊さんの力には適わないようで、首から手が離れる事はない。


「こ、の………やろ…っ」


院長は息を詰めたかと思うと、首がうなだれてピクリとも動かなくなった。


無表情の精霊さんは、パッと手を離した。

院長がバタリと音を立てて、崩れ落ちる。


死んでしまった。

あの院長が、こんなに簡単に。


ライヴァが俺の隣に来る。

こめかみから、冷や汗が垂れていた。


「院長の次は俺達、てかぁ?」


苦笑いをする。

それは流石にヤバい。


精霊さんは腕をダラリと下ろし、顔をこちらへと向けた。


「精霊さん……」


俺は気付いた。

精霊さんの爪が少し長くなって、黒くなっている。


“黒神化”が進んでしまっている。



精霊さんがゆっくりと手を上げた。

その手には大きな魔力が集まっている。



精霊さんは炎の属性神だ。

これからすることが、手に取るように分かる。


でも、神の一席である属性神に、俺達人間が対抗できる筈がない。


「精霊さん……止まって」


だが、俺の声は届かない。

まるで空気のように消えていく。


「精霊さん!」



精霊さんの口がスッと開く。





《殺す》





精霊さんの口からは、その言葉が紡がれた。


それと同時に、俺達に向かって、魔法が放たれた。








精霊さん。俺は敵じゃないよ。

助けに来たんだ。

この檻のような場所から、連れ出すよ。



だから、目を覚ましておくれ。



前話の後書きで、主人公が出て来ると宣言いたしましたが、そんなに出てきませんでしたね(゜Д゜;)


すみません(´・ω・`)


計画では、精霊さんを完全に助けるところまで書く予定だったんだけど、なんか長くなったので切っちゃいましたww


そして、更新が遅くて申し訳ありません。


これからも不定期になります。



読んで下さった読者の皆様、本当にありがとうございます。

こんな駄作を少しでも読んでもらえて、Banは嬉しいです。


これからも応援などなど、よろしくお願いします!

誤字・脱字を見つけましたら、連絡を宜しくお願いします(*'▽'*)


それでは、またの機会に(*^^)v


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