ペットボトルの飲料水に向けられる和碩親王妃の危機管理意識
挿絵の画像作成の際には、「AIイラストくん」と「Ainova AI」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
私こと李杉乃、山手侯爵家より李朝の皇室へ親王妃として嫁がせて頂いて以来、友好国の高貴な方々とは常日頃より懇意にさせて頂いております。
その中でも中華王朝の愛新覚羅千里和碩親王妃殿下におかれましては、公私の両面に渡り親密な御付き合いをさせて頂いているのです。
それは何も、我が李朝と中華王朝とが傍系皇族や貴族間の政略結婚を伴う緊密な同盟関係を結んでいて事実上の姻戚関係にあるからという政治的な理由ばかりでは御座いません。
何しろ愛新覚羅千里和碩親王妃殿下は私と同様に元々は日本人で、尚且つ生駒英里奈伯爵という知人を共有しているのですから。
日本からアジアの友好国へと越境した私と愛新覚羅千里和碩親王妃殿下は、謂わば東アジアの友好と輝かしい未来の為に手を取り合った同志のような間柄で御座います。
故に国際会議やシンポジウム等の公務でも同席させて頂く機会も多いのですが、去る夏の日にて日本で行われました調印式においては、そんな和碩親王妃殿下の抜け目なさと頼もしさを改めて実感させられた次第ですよ。
「こうして東アジア経済振興条約が満場一致で成立しました事を、心より喜ばしく感じる次第です。これは東アジア諸国の友好関係を一層強固にする要石であり、明日の東アジアの平和の道標でもあります。」
そうしてにこやかな微笑を浮かべてミネラルウォーターを手にされたのですが、そこから先の一瞬が誠に鮮やかだったのです。
「さて…」
異物の有無や濁りを確認する為にラベルが剥がされたペットボトルの中身を注視する抜け目の無さに、キャップを開栓する時の慎重で尚且つ無駄の無い手付き、そして匂いを確認する為の丁寧な仕草。
その全てに一分の隙もなく、尚且つ決して悪目立ちしない洗練さも兼ね備えていたのですから。
この和碩親王妃殿下の無駄の無い慎重な仕草は、調印式の後に行われた祝賀会でも話題になっておりましたよ。
「ペットボトルを凝視される一瞬だけ眼差しがサッと鋭くなったように見受けられましたが、やはり公安職上がりという和碩親王妃殿下ならではの慎重さで御座いますね。エアコンの効いている室内であるとはいえ、この夏の暑さでは矢も楯もたまらず開栓したくなるのが人情でありますのに…」
条約成立に気を良くされたのでしょう、シャンパンを傾けられる中華民国の大総統閣下の声色は普段以上に弾んでおりましたね。
「仰る通りで御座います、石明姫閣下。和碩親王妃として正式に王室入りする以前の独身時代、私は式典等に参列される愛新覚羅永祥和碩親王殿下の警護を何度も務めさせて頂きましたからね。飲料水等の安全確認も何度となくさせて頂いたのですが、その経験が今日に繋がっているのでしょう。」
それに応じられる和碩親王妃殿下もまた、晴れやかな微笑を浮かべていらっしゃったのです。
此度の条約成立により、東アジア諸国の友好関係の更なる盤石化を確信されたのでしょうね。
「あの、生駒英里奈伯爵閣下…長崎での式典で愛新覚羅永祥和碩親王殿下を暗殺の危機から御守りした事が、和碩親王御夫妻の婚礼のキッカケであると御聞きしております。和碩親王妃殿下のように頼もしい御方が御側にいらっしゃる事は、永祥和碩親王殿下におかれましても誠に心強い事で御座いますね。」
「仰せの通りで御座います、李杉乃親王妃殿下。和碩親王殿下におかれまして千里和碩親王妃殿下は、最愛の伴侶であると同時に最強の懐刀でもあるのですから。」
そんな伯爵閣下の御言葉には、殿下の公安職時代からの旧友としての絶対的な信頼と親愛の念が込められていたのでした。
そして私と致しましても、和碩親王妃殿下のような頼もしい御方を友とする事が出来ましたのは類稀なる僥倖で御座いますよ。
きっと彼女達とならば、東アジアを今日以上に輝かせる事が出来るに違いない。
そう改めて感じた次第で御座います。




