第5話 轟雷の魔女と指名手配犯
魔女警察の多くが、火 水 雷 土 風の5属性の魔法を使って戦う。 魔法は特殊能力とは違い、自分の内にある魔力をコントロール出来れば誰でも使用可能だ。だが属性の魔法には適性があり、理論上はどの属性の魔法も使えるが、その人に合う魔法ではないとその恩恵は出にくい。
デルフィニウムは雷属性の適性を持ち、その力で多大なる功績を残したエリート魔女なのだ。
「もう大丈夫です。私が来たからには、迅速にそして確実にこの騒動を終わらせるです。」
デルフィニウムはキャロルを安全な場所に避難させたあと、30人の盗賊たち相手に臨戦態勢に入る。
「殺しはしないです。捕まえて檻にぶち込むです。豚には豚箱が似合うです」
デルフィニウムは小さな杖から電撃を発生させると、目の前にいる5人の手下に浴びせていく。
手下達を気絶させたところでデルフィニウムは飛び上がると地上にいる盗賊たちに向けて雷属性の魔法を発射する。
無数の雷が盗賊たちの頭上に降り注ぐ。
頭領は難なくかわすが、経験の足りない下っ端はその雷に被弾してしまい気絶する。
それを陰で見るミントはデルフィニウムの戦いぶりを見て感心していた。
「(魔法を使いこなし、スピーディーに戦局を進めている)」
だが頭領の余裕の笑みは崩れなかった。
「いいこと思いついた。おいお前、さっきのガキ捕まえてこい」
頭領が醜い笑みを浮かべて手前にいる手下に命令する。
手下は身体を透明にし、人混みにいるキャロルの背後に立つ。
「え、誰......んっ!?」
手下はキャロルの口を手で押さえ、透明になり闇夜に消えていった。
デルフィニウムは順調にことを進めていた。本来デルフィニウムが手こずる仕事では無い。だからすぐに終わるはずだった。
「おい女!」
頭領がデルフィニウムを呼ぶ。
「それはちょっと卑怯すぎるです」
デルフィニウムの視線の先には、頭領とその手下の小さく小汚い男、その男は先程助けた少女、キャロルを盾にしていたのだ。男は手に刃物を持っている。そしてキャロルの首に突き立てている。
「油断したな女。俺の腹心であるこいつの特殊能力は身体を透明にすることだ。そいつの能力でお前がせっかく助けたこのガキを奪い返したってことだ」
デルフィニウムは歯ぎしりをする。これは自分の甘さが招いたことだと、もっと周囲に気を配るべきだったと、ひとりで大丈夫だからと増援を頼まなかった自分が悪いと。
「お前がこれ以上抵抗するならこのガキを殺す。殺されたくなければ跪いて杖を置け」
デルフィニウムは言われた通りに杖を地面に置き、地面に跪く。
「その杖をこっちに渡せ」
デルフィニウムは杖を盗賊の方へ放り投げる。
頭領はそれをキャッチすると背を向けて部下に合図する。
「生け捕りにしろ。魔女は高く売れる」
すると気絶していた部下が黒い邪気を纏って立ち上がる。そして縄でデルフィニウムを生け捕りにしようしたその時
「───!!!」
背後の手下全員が吹き飛んだのだ。
「もう限界だ。これ以上黙って見てられない。僕がお前たちを倒す」
跪くデルフィニウムの前に立ったのは木刀を持った黒いローブを着た仮面の戦士ミントだった
「ジョニーさん!」
キャロルが叫ぶ。
「弱そうな助っ人が来たな。おいお前、俺たちに手を出すならガキも死ぬぞ?」
ミントはそれを聞いても歩みを止めない。
「お、おいこのガキも死ぬぞ?」
頭領は狼狽する。
「ジョニーさん来ないで!私のことはいいから早く逃げて!」
キャロルの忠告を無視してミントは頭領に向けて歩き続ける。
「(ジョニー......?もしかしてこいつは外国人だから俺たちの言葉が通じないのか...?)」
ボスがそう思考を巡らせた瞬間、ミントは全速力で突っ込み、木刀を振る。
それを頭領は腕で受ける。
「驚いたなぁ、人質の制止を振り切って俺に突っ込むとは。お前にとって人の命なんてどうでもいいものなのかぁ?」
「その子を殺したら後ろにいる魔女警察の子も加勢するから、お前たちも簡単に殺せないでしょ。僕と魔女警察の子が一緒になったら、お前たちなんて簡単に片付けられるもん」
「ちゃんと人の言葉話せるんだな。良かったぜ。会話できねえかと心配しちまったよ」
異常に強靱な腕で木刀を跳ね返すと、頭領は大刀を持って臨戦態勢に入る。
木刀と大刀が交差する。この男はそこそこやれるようだ。だがその間合いを突いていけば、勝機は必ずある。だが合間に死角からクナイが飛んでくる。ミントはそれを皮1枚でかわしていく。
「(キャロルごと透明にして位置をつかめないようにしてる。それに何も無い空間からの投擲、厄介だな......)」
頭領は大刀を横薙ぎで振るう。ミントはそれを前かがみで外し、右足で頭領の足を払う。
「くそっ!」
尻もちをつく頭領にミントは木刀を振るう。頭領はその木刀を掴むと起き上がってミントの腹に蹴りを入れようとする。ミントはその脚に手をついて一回転、後方に着地する。
「逃げ足だけは早いみたいだな」
「まあね」
軽口を叩き合うと2人はお互いに向けて前進する。頭領の突きをかわして斜めから顎に向けて木刀を振るう。
確実に顎をとらえた。だがキン!と金属音がなった。それは人体に攻撃した時になる音ではなかった。
「やるねぇ!」
頭領は涼しい顔でそう返す。体勢を立て直したミントは背後に気配を感じる。
「くる!」
後ろへ蹴りを入れ、前方に向かう頭領の斬撃も受け止める。
「透明人間相手じゃ分が悪いみたいだな!」
「そんなことないよ」
パワーでは頭領が勝ち、ミントは押し切られそうになる。
ミントは後方回転で下から大刀を蹴りあげる。
「なっ!」
腕を上にあげ大きくひるんだ頭領の大刀をはね飛ばし、上へと飛び上がる。
「気配を察知さえ出来れば、透明だろうとまともにたたかえる!もらった!」
ミントが脳天めがけて木刀を振るう。
だが
「!?」
その脳天を砕くことなく、ミントの木刀は折れてしまった。
「もう気づいていると思うが、俺様の特殊能力はな!全身の筋肉を鋼に変えることなんだよ!」
頭領は下品に笑うと、降下中のミントのみぞおちにパンチをいれる。
「ぐっっ!!!」
ミントは大きく吹っ飛び、木に衝突する。そのダメージは相当深く、ミントは血を吐いた。
「がは...!」
その衝撃からか、ミントの背にある木はバランスを崩し、ミントに向かって倒れていく。
「く、くそ」
起き上がろうとするミントは無情にも木の下敷きになってしまった。
「うう......」
呻き声をあげ、木から抜けようとするミントを頭領は見下ろす。
「勝負あったなぁ?スピードだけはあってパワーは全くねえ、飛んだ正義の味方だぜ!」
もう闘う必要は無いと判断したのか、キャロルを人質にとっていた透明人間も元に戻る。
「(くそっ、こんはずじゃ...)」
もがき苦しむミントを見て、頭領は醜く笑った。
デルフィニウムも反射的に動こうとするが、クナイに牽制され、黙って戦況を見つめるしかできなかった。
「(あんな木本来ならすぐ壊せるです。でも今行くとあの子が死んでしまうです)」
デルフィニウムの周りには黒いオーラをまとった数名の盗賊が取り囲んでいる。
「(シオンお姉さんがいたらこんな状況すぐにひっくり返せるのに......自分の才能のなさが憎いです......)」
自分の腹の底から卑下し、デルフィニウムは舌打ちをするしかなかった。
デルフィニウムフラワーズ
職業 魔女警察
年齢 22
身長 153センチ
体重 48キロ
性別 女
好きな物 ハーブティー ほうきでドライブ 子供と遊ぶこと
嫌いなもの 姉に貸してるお金
容姿 金髪ロング 碧眼 黒いローブに黒い三角帽子 私服だと白を好んで着る。