第34話 情報は地道に追わねばたどり着けず
日付が回り、紺色の空が青に変わり始めた頃、ようやく目的地のミルモタウンについた。
「やっとついたにゃー。頭が痛えし腰が痛え。二日酔いににゃっちゃったにゃー」
「大丈夫?お酒の飲み過ぎは良くないよ?」
36000マイルをカード払いで払うデルフィニウムを他所に二人はミルモタウンを見渡す。
早朝なのでまだ人の数は少ない。だが治安が悪いと言われているだけあって不気味な静けさと独特な匂いが鼻をつく。
「この匂いなに?」
ミントが鼻を抑えながらロストマンにたずねる。
「どっかで人が死んでるんだろ。この街は基本死んだら放置だからにゃ。墓に埋めるって概念がにゃいにゃ」
「そうなんだ………」
自分たちが住む街とは何もかもが違うと思った。ロストマンによれば、生きるために格安で身体を売る女や危ない薬を各地にばら撒いている売人など魔女警察がいくらいても取り締まれないような犯罪の温床になっているとのこと。
「ホームレスを小さな小屋にぎゅうぎゅうに詰めて奴隷みたいに働かせてる奴もいるからにゃ。いつ見ても悪い意味で変わってにゃいにゃ」
そんな話をすると浮かない表情をしたデルフィニウムが戻ってくる。
「ようやく払い終えたです。二人ともここまでの道のりご苦労様です。まずは宿に入って休みを取るです」
「どこの宿を使うか決めたのかにゃ?」
ロストマンの問いにデルフィニウムが答える。
「本音はどこも使いたくないですが、背に腹はかえられないです。あの近くの宿とかどうです?」
デルフィニウムは眼前にある古びた旅館を指差す。
「もうあそこでいいにゃ」
即決し3人はその旅館へ足を運ぶ。
受付の老婆に話しかけ、1日でいいから部屋を貸して欲しいと頼み込む。
「あー今なら204号室が空いているよ」
老婆は舌ったらずにそう説明する。
「金額は?」
「10万マイルだね」
デルフィニウムの問いに老婆は一日で泊まるにはあまりにも高すぎる金額を提示する。
「ぼったくってきたにゃ〜」
「デルフィさんそんなお金あるの?」
二人は老婆に困惑する。
「あるわけないですよ。おばあちゃん。一日で泊まるですよ?それでその金額は割に合わないです」
デルフィニウムの抗議に老婆は耳を傾けようとしない。
「なら野宿しな。ここじゃこの金額は当たり前なんだ。そんな大層な服着てるんだから当たり前に払えるじゃろ」
「にしてもここ、旅館の雰囲気と一緒ですごく古い結界を使ってるみたいだにゃ〜」
二人の会話を遮ってロストマンが何気なく呟く。
「な、なんだいあんたは」
「ばあさん、今の時代結界ってのはいのちにゃんだよ?こんな結界じゃすぐに機密情報がバレちゃうにゃ。ほら今わかった。他所から来た観光客に多額の請求をして泣く泣く払わせて自分は薬打ってぱっぱらっぱーしてるんにゃろ?」
老婆の表情がこわばる。
「図星だにゃ。今から大手新聞社にこの情報売ってこよーっと。あーあ。老後の人生豚箱は寂しいにゃ〜」
「わかったわかった!2万5000マイルでどうじゃ?」
「ありがと!」
まんまと老婆を丸め込み、3人は指定された部屋へ移動する。
「ロストマンすごいね。悪いおばあちゃんに言うこと聞かせるなんて」
部屋についたミントは先程のロストマンを見て素直に称賛する。
「にゃーに簡単なことにゃ。ここの結界のセキュリティをインプットしてババアの情報を抜いたに過ぎにゃいにゃ」
ロストマンはシミのついた独特の匂いがするベッドに座り込みそう説明する。
「にゃ、にゃんだ?座っただけでミシッて音がしたぞ?」
「あちこちに蜘蛛の巣や消しきれてない落書きがあるです。わかっていたことですが、やっぱ泊まるには少々辛い場所ですね」
デルフィニウムはそう愚痴をこぼす。
「ムカデとか出たりしないかな?」
ミントがところどころ部屋に発生するゴキブリを横目に見ながらそう呟く。
「出るかもしれにゃいし出ないかもしれにゃい。ジョニーは虫が苦手にゃんだな」
ロストマンはそう言って意地悪に笑う。
そうして少しだけ他愛もない話をしたあと、デルフィニウムは本題に入る。
「ご飯を食べ終わったら3人で情報収集に出かけるです。ロストマンとジョニーさんは賭博場、私はここのゲトー地域で聞き込みを行うです。それで大丈夫です?」
二人に目線を移しデルフィニウムは同意を求める。
「デルフィさんは一人で大丈夫なの?」
ミントが心配そうにたずねる。
「大丈夫です。危なくなったらすぐ知らせるですし身の守り方は自分が一番よくわかってるです」
デルフィニウムはそう言ってミントを安心させる。本音を言うなら一人の方が動きやすいからだが。
「おいらは異論にゃいにゃ。ジョニーと一緒に行動できるの嬉しいからにぇ〜」
二人の了承を得て、デルフィニウムは話を続行する。
「ブルグマンシアにつながる情報があったら連絡してください。夕方ごろになったら再び落ち合うです。そしてアジトがわかり次第私とジョニーさんで突入するです」
迅速に話を進め、デルフィニウムは一旦部屋を出る。優秀な魔女だなとミントは思った。うまく話を進め、すぐに決断し作戦を進める。もっと上の立場にいてもいい存在だ。灰の魔女にはミントも聞きたいことが山ほどあった。自分の出自を掴むために奴らの目的を聞く必要がある。自分の今の境遇については疑問がたくさんあった。ようやく手が届くのだ。だがその前にやるべきことは自分の一番大切な人を助けること。自分のことはその後でもどうにでもなる。
「ジョニー?ジョニー!聞いてるのかにゃ?」
ロストマンの声でミントは我に帰る。
「え、ああ!どうしたの?」
「ジョニーが助けたがってるやつに興味があってにぇ」
ロストマンはベッドの上であぐらをかきそうたずねる。
「アンナのこと?」
「そうにゃ」
ミントはしばらく考えたあとゆっくりと口を開く。
「りんご屋のおじさんと口論になってた僕を助けてくれた優しい女の子。素性もわからない僕に美味しいご飯やあったかいお布団を与えてくれた僕の恩人なんだ」
「そうにゃんだ。確かデルタ地区にいた子だよにぇ?あの街の人間らしい慈愛の塊みたいな女だにゃ」
頬杖をつきながらロストマンはそう言う。
「お兄ちゃんと一緒に住んでてお母さんはバラッド王国の役人みたい。でも学校でいじめられてたらしくて、それを直前まで僕やそのお兄ちゃんに伝えてくれなかったの」
「その弱い心をブルグマンシアにつけ込まれたってわけか」
ミントはこくりと頷く。
「にゃるほどなー。ガキなんてちょっと優しくしたらすぐ手のひらを返すからにゃー。ブルグマンシアは人の心を掴むのが上手いやつだにゃ。心が弱い人間ほど付け込まれてドツボにハマるにゃ」
「それで」と、ロストマンはベッドから立ち上がりミントの横にくる。
「そいつを助けてジョニーはどうしたいのかにゃ?」
耳元で囁かれミントは少し困惑するが、すぐに答えを出す。
「謝りたいの。あの時アンナを止めてあげられなくてごめんなさいって」
その答えにロストマンがキョトンとする。
「にゃんで?ジョニーは何も悪いことしてにゃいでしょ?」
「でも、アンナのお兄ちゃんに言われたんだ。「どうして何も言ってくれなかったの」ってその言葉が大きくのしかかった。あの時僕が無理矢理にでも止めていればアンナは助かったしお兄ちゃんも悲しい思いをせずに済んだ。なのに僕はあの時アンナを見捨ててしまった。だから今度は大切な人を絶対に助けるんだ。それがせめてもの償いだから」
拳を握りミントは静かにそう語った。
「難しい生き方をするやつだにゃ。どっかの誰かさんみたいだにゃ」
「ん?なんて?」
「なんでもにゃいよ。ジョニーの考えはよーくわかったにゃ。褒美にいいことを教えるにゃ」
ロストマンは立ち上がり、窓を開ける。
「ジョニーの大好きなアンニャちゃんはテロの道具として利用されるにゃ」
その言葉にミントは口をぽかんと開ける。
「ブルグマンシアはテロリストだにゃ。奴は最もらしい理由をつけてガキを人間爆弾にするにゃ。リーカス共和国がその方法で滅ぼされたのはきっとデルフィの口から聞いたと思うが、ここバラッド王国もその方法で滅ぼしにかかると予想するにゃ」
「じゃあ今すぐにでも奴を倒さないと」
「落ち着け落ち着け。焦ったら時期が早まるだけだにゃ。慎重に尚且つ迅速に進めることが先決だにゃ」
窓から小鳥が入ってくる。その小鳥はロストマンの人差し指に止まる。小鳥の挙動を真似ながらロストマンは淡々と話す。
「猶予はないとは思う。奴は相手を舐める癖があるが実行に移す時は早いにゃ。だがこっちにはおいらがいる。おいらが一人いるだけで情報科の魔女警察10人に匹敵するにゃ」
「信じていいの?」
「おう」
掴みどころがない男だとミントは感じた。初めて会った時は情けなかった。馬車の中では横暴だった。そして今この空間では誰よりも頼もしく感じる。決して本心を見せない抜け目のなさがこの男の強みだと感じた。
「なんでこのことをデルフィさんに言わなかったの?」
ミントは疑問をぶつける。このことを知っていたら自分ではなくデルフィニウムに言うべきだろうと思ったから。
「あいつだったら突っ走って余計事態を悪化させるからにゃ。ジョニーは冷静で聞き分けがいい。だから言っただけの話にゃ」
ロストマンの人差し指から小鳥が飛び立つ。ズボンのポッケから小さな紙を取り出し何かを書くとロストマンはミントに向けて問いかける。
「頭脳はおいらに任せろ。ジョニーはおいらの手足として働くにゃ。文句はにゃいな?」
ミントはこくりと頷く。
「うん。ロストマンありがとう」
「ふん」とそっぽを向くロストマンを見てミントは静かに微笑んだ。
────
旅館の屋根に乗って、デルフィニウムは通信石を耳につけ誰かと連絡を取っていた。
「…………もしもしシオンお姉さん?デルフィです」
シオン姉さんと呼ばれたその魔女はデルフィニウムの声を聞くと通信石越しにため息をつく。
『はぁー、なんだよデルフィ。私今大事な勝負で忙しいっつーの』
「嘘つくのはやめるです。さっきから楽器の音が聞こえてくるです。どうせまた闘技場に行ってるんでしょう」
『はぁーーーー………」
嘘を看破されて大きなため息をつくシオン。機嫌が悪そうに要件をたずねる。
「突然ですが今私はミルモタウンにいるです。ここに灰の魔女が潜んでると噂がありましたから。なので姉さんも力を貸して欲しいです」
『どの灰の魔女?』
「ブルグマンシアです」
その名前を聞いてシオンは通話越しに鼻で笑う。
『フッ、また突っ走ったのかお前。灰の魔女追うなら遺書を提出しないといけないはずなんだけど?今すぐ私に書けってか?』
「もう書いたです。シオン姉さんの分も今作成中です」
『偽造は罪だぞ。魔女警察が罪を犯すとかどんな芸だよ』
「姉さんの言えたことじゃないです」
嘘をつきつつ、デルフィニウムは脱線しないよう本題に戻る。
「ブルグマンシアの脅威は普段会議に出席しない姉さんでもわかると思うです。本来なら人員を割かなきゃいけないですが厳戒態勢です。そうもいかないので最小限の増援を呼ぶ予定です。シオン姉さんには前線を頼みたいです」
『私も今手つけれないんだけど。それにお前もう結構な身分になったし1人でもやれるだろ』
「闘技場行ってるのにそれが言えるのは流石です。残念ですが灰の魔女は私1人ではとても敵わないです。シオン姉さんほどの実力を持つ相手じゃないと勝てないです。どうか頼みます」
シオンはしばし口をつぐむ。わかってはいる。彼女は頼んでも動く相手ではないと。魔女警察の中では屈指の実力を持つがその分曲者で手綱を握るのすら大変なのだ。面倒ごとには首を突っ込まず、常に独断で動く。だが魔女警察の上層部は実力の高いシオンを手放すことができず遊軍として自由に動かしている現状だ。
『話は大体わかったからさ、とりあえず今月の分の金貸してくんね?』
「……………」
「またこれだ」とデルフィニウムは内心嘆いた。シオンは自分の頼みごとを引き受ける時大体金をせびる。実際彼女1人でも十分な戦力なので渡しても問題ない。だが人質の命がかかってるこの状況で金をせびるのはさすがにどうかと思ってしまった。
「何マイル欲しいです?」
『3万くらいかなー』
「わかったです。その代わり絶対に来て欲しいです」
『いけたら行くわー』
その言葉を最後にシオンからの通話は途切れた。通信石を耳から離し、がっくりとため息をつく。
「命より金が大事ですか………」
なぜこうも自分の身内は人格破綻者が多いのだろうと思った。姉の性格は昔から知っているつもりだが彼女の傍若無人ぶりは目に余る。
「あとはスイレン様やゼータ地区の支部長たちも呼ぶです……」
項垂れながらもまた番号を打ち電話をかける。それを繰り返したあとデルフィニウムは部屋に戻った。
───────
食事を終えて3人は先ほどの作戦通りに行動をする。デルフィニウムはゲトー地域、ロストマンとミントは賭博場で聞き込みを行う。
「夕方になったら宿の前に集合するです」
その言葉を残して3人は離散した。
道中、ロストマンが腹をおさえながらミントに愚痴る。
「くそ、あのばばぁクソまずい料理を提供しやがって。鯖もまずいし飲み物もまずいし終わったら絶対潰すにゃ」
「潰すのは良くないよ」
そう話しながら賭博場に向かって歩き続ける。
「なんかみんなボロボロの服を着てるね」
「バラッドの中でも特に貧困地域だからにゃ。ここで住むなんて自殺行為に等しいにゃ。でも一部の建物は豪華だにゃ。ほら」
そうやって指差した場所は金色のレンガで作られた煌びやかな建物。「1時間15000」と書かれた看板が置かれており、店主と思われる初老の男が店の入り口に立っている。
「あれはどんなお店?」
ミントの問いかけにロストマンは平然と答える。
「女が商売で男のキノコを舐める店だにゃ」
「キノコ舐めるんだ。つまんなそう」
ロストマンの比喩にミントは首を捻る。
「キノコってあのキノコじゃにゃいぞ。ほら耳貸して」
耳元でキノコの本当の意味を知ったミントは一気に顔を赤くする。
「そ、そんな反応するほどか?ピュアな奴だにゃ」
大袈裟なミントにロストマンは肩をすくめる。
しばらく歩いたあと目的地につく。先ほどの夜の店とは比べ物にならない豪勢な見た目の大きな建物にミントは思わず声が出る。
「ここが情報の宝庫。金に狂った奴らが日夜金のためにあらゆる遊びをする場所だにゃ」
カメラを撮るようなポーズをとってその建物を見つめるロストマン。しばしの沈黙の後呟く。
「結界のセキュリティはそこそこ。ここに奴はいないが奴の関係者はいるっぽいにゃ」
「なんでわかるの?」
「結界の情報をインプットするのがおいらの能力にゃ。基本的に国や街、建物には入ってきた人間の情報を記録するシステムがあるにゃ。それは念写して解析することができる。個人の記録を解析しても個人の特定にはいたらにゃいが、その人物や建物の情報を抜き取って自分の記録を入れたら容易に結界を破れるし乗っ取れるにゃ」
ロストマンは自慢げに語る。
「こう言うことができるのが、おいらが「解術師」と呼ばれる所以だにゃ。結界は独自に作ることもできるし、そこにウイルスをばら撒いて弱らせることもできる。通信石や魔法も結界がないと効果を発揮したりしなかったり〜と。無駄話はここまでにゃ」
話を切り上げてロストマンは賭博場に入る。中に入るとパチンコやダーツ、ポーカーやビリヤードなど多種多様のゲームがあった。それに勤しむ者たちは皆必死の形相でそのゲームを楽しんでいる。
「相変わらず平和そうで安心したにゃー」
ロストマンはそう言って店頭にいる店員に話しかける。
「にいちゃん。おいらここで情報を集めてるストローキャットっていうんにゃけど、ここら辺に顔のいい黒とピンクの髪のおんにゃはいなかったかにゃ?」
ロストマンの問いに店員が答える。
「はて、当店の記録表を見てもそのようなお客様はいなかったはずですが」
その答えを聞いてロストマンはミントの方を見る。
「ジョニー、こいつどう思う?」
そう聞かれたミントは何もわからず肩をすくめる。
「そうか。でもおいらが調べた限りそのおんにゃは確かにここ周辺を通った気がするにゃ。結界の範囲内を見ればわかるだろう?調べてくれ」
「そう言われましても……」
すると困惑する店員を見かねた奥にいる店主が急に割って入る。
「お客様〜。いかがなさいましたか〜?どのような遊戯をご希望で」
「遊戯なんか求めてにゃいよ。聞き込みを行ってるんだにゃ。探してる人がいてね。このおんにゃだけど」
そう言ってロストマンは店主の男に件の女の似顔絵を見せる。
「…………」
その似顔絵を見た店主の顔が強張る。
「わかりやすい反応だにゃ」
思わずロストマンは吹き出してしまう。それに腹を立てたのか店主の男はロストマンを怒鳴る。
「冷やかしに来たのか!だったら帰れ!ここは遊び場だ!情報提供なんかするわけないだろ!」
「そうだにゃ遊び場だにゃ。なら賭けをしよう」
「賭け……?」と疑問符をつけて言葉を返す店主にロストマンは頷く。
「この可愛い女の子のジョニーちゃんがおいらの1000マイルで好きな台を打つにゃ。それでトリプルセブンをとったらお前はいうことを聞くにゃ。負けたらおいら達は二度とここには来ないにゃ。それでいいか?」
「あ、ああ!いいとも!やってみろ!」
店主は鼻息荒めにそれを了承する。ロストマンはミントに1000の文字が書かれた札を渡し好きな台を打たせに行く。
「僕パチンコなんてわかんないよ………」
「大丈夫だにゃ。好きな台を選んで1000マイル入れてレバーを引くだけだにゃ。絶対当たるにゃ。安心して行ってこい」
なんとかミントを説得して打ちにいかせる。店主はその姿を見てほくそ笑む。
「(馬鹿が、今日の台は全部期待値が低いもの。当たったとしても6万しか稼げない。トリプルセブンなんて当たるはずがないのさ!)」
にやけ面を抑えずに勝利を確信してる店主。しばらくするとミントが帰ってきた。箱の中に大量の銀の玉を入れて。
「一回引いただけで7が3つ揃ったよ。そしたら大量に銀の玉出た。これどこに運べばいいの?」
箱3台分にもなるその量を見て店主はおろか他の客も驚きの声をあげる。
「でかしたジョニー」
満面の笑みでミントを褒めるロストマンの横で店主は驚きながら話しかける。
「き、貴様………どうやって引き当てた………」
「運に決まってるにゃ。必死こいて何万も入れるボンクラより1000だけで大当たりを勝ち取るジョニーの方が何倍も賢いってことにゃ」
「それで………」と、ロストマンは店主を詰め寄る。
「何か隠してるでしょ?洗いざらい喋ってもらおうか?」
──────
「大手柄にゃジョニー!その20万はおいらたちで分け合おう!デルフィの分はもちろんなしだにゃ!」
札束を数えながらロストマンはご満悦な表情でミントに話しかける。
「だめだよ。ちゃんとデルフィさんにもあげよう。あの人も1人で頑張ってるんだから」
「ほんとに調子狂うにゃあお前と話してると」
怪訝な表情を浮かべるロストマンをよそにミントは先ほど得た情報を整理する。
「ここにブルグマンシアが来たのはほんとだったね」
「ああ、ギャンブル中毒の男に灰の因子を植えつけて自分のアジト周辺に配置してたみたいだにゃ」
あの店主はあの後殺されるだろう。機密情報をこちらに渡してしまったのだから。ロストマンとミントにしてみれば無駄な労力を浪費せずに済んだわけだが。
「肝心のアジトはわからなかったみたいだけどね」
「まあこれは時間の問題だにゃ。デルフィも何か掴んでそうだし」
そんなことを話しているとロストマンの通信石のブザーが鳴る。
「噂をすれば………もしもしバカ女?うん、うん、うん。にゃるほど〜うん。わかったにゃ〜」
5分ほどで会話を終え通信石を切るとロストマンはミントの方を振り向く。
「よかったにゃあジョニー?お前の愛しのアンにゃちゃんは助かるかもしれにゃいぞ〜」
そうニヒルに笑い、ミントが一番欲しかった情報の全貌を話し始めた




