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戦闘狂の異世界記録  作者: 茜音
異世界戦闘記-表裏一体-
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EP.4 連続誘拐事件

 20時。

 黒乃は家のパソコンを開いていた。

 何もゲームをしている訳ではない。いや、さっきまではしていたのだが、それとは別の件だ。

 この後、無色と共に影星の家まで向かう手筈になっている。ゲーム途中に来られるよりは、予めゲームをやめた方が無色を待たせることも無く良いと思った。それだけだ。


 とはいえ、この暇な時間を潰す為には結局電子の海にいる他無いのだった。


 サイトを徘徊し、適当にWeb小説を流し読み、ネットニュースを調べる。

 その最中だった。


 『連続誘拐事件から今日で30年。残された家族の想い』


 30年前、彼は未だ産まれていない。その為、この事件について詳しくは知らなかった。

 もしかして関係があるのかと思いながら、その記事をクリックした。


『連続誘拐事件から今日で30年。残された家族の想い


 神楽市(かぐらかわし)で起きた連続失踪事件から、今日で30年が経つ。ターゲットの年齢は、主に18歳から25歳の男女だった。

 犯人は未だ見つかっていないが、この事件は9年前を最後に発生していない。

 被害者の一人の家族Kさん(仮名)は、この事件で最愛の妹を失ったと告白する。

 Kさんは「あの子が無事に帰ってくることだけが望み。また一緒に、2人でクイズ番組を見たい。かけがえのない日を返して欲しい。犯人の事は一生許せません」と語った。』


「神楽川……?」


 どこかで聞いたことある様な地名に、少し思考を巡らせて思い出す。

 そこは、黒乃や無色が住んでいる場所でも、影星が住んでいる場所でもない。だが、同じ県内ではある。

 まさかそんな物騒な事件が起きていたとは、少し早めに産まれていたら自分も危なかった、と安堵共に名も知らぬ誰かへ黙祷を捧げた。


 チャイムの音に、黒乃は椅子から立ち上がる。

 廊下を通って玄関を開けると、そこには予想通りの来客がいた。


「待たせたな」

「大して待ってねぇよ、そんなことより行くんだろ?」

「提案してきたのはお前だが……そうだな」


 玄関に置いてある家の鍵だけパーカーのポケットに入れ、無色と共に家を出る。

 日の光に極力当たりたくない黒乃にとって、とっくに日の落ちた夜は行動に適している。

 そうでなくとも、まだ蒸し暑いのだ。直射日光がない方が良いというのは双方一致した意見なのだった。

 鍵を閉め、道を歩き始める。


「そういえば、影星の家は結局どこだったんだ?」


 道すがら、無色に訊ねられる。

 そういえば、「家の場所が分かった」とは言ったが、具体的にどことまでは言っていなかったとぼんやりと思い出す。


「あー、隣の市。1時間ちょいで着けるとは思うぜ。まあ普通に歩いたら……だけど」

「……そんなにかかるなら、タクシーを使った方が良くないか?」

「ま、普通はな。でも俺らは人捜しに行くわけやし、スマホ落ちてたり手がかりあったりするかもしんねぇだろ?だからそういうの探すのも面白そうだなって」

「不安でしかない」


 乏しい危機管理能力を見抜かれたのか、呆れたような視線を寄越される。それを笑顔で受け流し、夜道を進む。

 人通りも車通りも多い安全な道だが、絵面的に子供を上手く丸め込んで攫った犯罪者に見えるのか、時折不思議そうな目を向けられていることにも黒乃は気が付かない。


 髪の色はどうしようもないから、せめて服は黒以外のものを着ればいいだけなのだが、家に置いてある服は全て黒である。

 勿論、客人用の服も。



 時折会話を交わしながら目的地まで歩いていると、車一台分程の細さしかない道へと差し掛かり、それに伴い通行人がいなくなっている事に気が付いた。

 少しずつ、街灯も減ってきている。


「……こっちで合ってるのか?」


 無色に訊ねられ、黒乃は脳内に刻み込んだ地図を思い出しながら答えた。


「隣の市に行く道は2つ。大通りか、こっちの細道……つーか裏道?」

「なら大通りから行けばいいんじゃないか?」

「あいつが人目の多い場所なんて通るか?」

「なるほどな」


 性格読みの判断に、無色も納得してそれ以上は追求しなかった。

 殺したい時は、どうせ全員殺すのだから人目を避ける必要も無い。

 だが、少なくともあの日は遊ぶ約束をしていただけで、殺しに行くわけでは無い。


 利点がないならば、リスクのない道を通りたいと思わないのが影星だ。

 特に、恩人や友達との約束ならば、基本的には自身の欲求よりもそちらを優先する性格。


 あの日がたまたまそうじゃなければ……だが。


 やがて、光もまばらになってきた頃、目の前が開けた場所に出た。

 そこは、寂れた公園だった。

 ろくに手入れもされておらず、雑草が伸び放題で木の枝や葉も散らばっている。


 そして、公園内からは大きな話し声や笑い声が聞こえてくる。


「……誰かいるのか?」


 そっと公園内を覗いてみれば、人々は中央付近に集まっている。ベンチには荷物が置いてあったり、手の届く範囲に酒の缶が転がっているあたり、この集団は酔って騒いでいるようだ。

 幸いにも今は夜。

 茂みの後ろや木の影を歩けば、何とか見つかる事無く通れるだろう。

 だが……


「引き返した方が良い気がするんだが」

「ん~だよなぁ流石に」


 影星とは違うのだから、1人相手でも無事かは分からない。まして、5人も相手にするなど到底不可能な話だった。

 生死不明の人を探している途中に自分達が死ぬなど、笑い話にすらならない訳で。

 大人しく引き返そうとした時。


「あの!」

「んぇ!?」

「待て声出すな……」


 背後から聞こえた不意打ちの女性の声に、黒乃は驚いた声を上げる。

 慌てて無色が小声で止めるも、時既に遅く。


「誰かいるぞ!」

「誰だテメェら!!」


 公園から、次々と人影が飛び出してくる。

 危険物は持っていないようだが、いかにも不良集団といった様子を醸し出している。


「……通して頂けたりなど?」


 恐る恐る申し出た黒乃に、一番前にいる男は舌打ちを零し睨みつけた。


「ああ?」

「えぇ……」


 困惑し、引き下がった黒乃を横目に、無色は一歩前へ歩みを進める。


「見逃すつもりや、通すつもりはあるか?」

「見逃してやってもいい。──が」


 無色と、背後の女性を指し、笑いながら言った。


「テメェとそこの女を置いてけ。そうすりゃそこの男は見逃してやるよ」

「……そうか」


 見逃すつもりはないのだろう、と黒乃が結論付けた時。


「ごほぉ!」

「……え?」


 先程まで会話を行っていた男が、蹲った。

 突然の展開。

 黒乃も女も動いていない。

 つまり、この状況を作ったのは──


「それは無理な相談だな」


 そう言って、男を見下ろした無色。

 その人物に他ならなかった。

長くなりそうなのでEPは一旦ここで区切ります。

今更ですが、EPと異世界の時間軸がリンクしている事はありません。

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