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戦闘狂の異世界記録  作者: 茜音
異世界戦闘記-表裏一体-
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裏世界の思惑

 昇降口まで転移で戻ると、階段部分に座って分厚い本を膝に乗せた悠衣と目が合った。

 私が帰ってきた事に気付くと、開いてたページに紙を挟んで閉じる。


「あ、おかえり!」

「……誰か待ってるんか?」


 こんな所で本読んでるから少し気になって訊いてみると、頷いて少し不服そうな表情を浮かべた。


「さっき心夢から念波会話(テレパシー)があってさ、空璃沙達をそっちに向かわせるーって言われたんだけど全然来ないの。ずーっと待ってるのに!」

「へーそうなん……ん?」


 空璃沙達?

 そいつらって私がさっき会ったよな?


「私さっきそいつらと話したぞ。威弧燈達ぶちのめした後に」

「ごめんぶちのめしたって何?」

「あーなんか襲いかかってきたから」

「襲いかかって……あー、なるほどねー、そっかそっかー」


 1人で勝手に納得したように頷く悠衣。私には全く分かんねーけど、私が喧嘩ふっかけたって曲解されねーなら別にいいか。

 そんな事より魔力回復しねーとならねーな。


「なあ悠衣、雨飾いるか?後美麗も。多分そいつら怪我人運んでくるぜ」


 まあいるだろうと思って聞いてみたけど、帰ってきた返事は少し意外なものだった。


「美麗はいるけど雨飾はいないよ?」

「は?なんで?」

「だって心夢に呼び出された?らしいから」


─────


「……で?」


 やや不機嫌な声に、心夢は顔を上げた。

 いつの間にか音もなく、隣に現れた人影からほんの少し距離を取って、つい先程まで見ていたそれを指さす。

 その態度に、雨飾は軽く肩を竦めて片膝を地面につけた。


「服汚れるんだけど……はぁ……これでなんでもなかったら許さないから」


 文句を垂れながらも魔法陣を検分していた雨飾は、ふと青色の瞳を眇めた。

 右手を魔法陣の上に翳す。その姿は、いつにない真剣な様を見せていた。


 同じ仲間として、滅多に真面目にならない事は知っている。この世界での殺人が許容されているのも、半分は雨飾のせいであり、大体の時、彼は殺すか壊すか美麗と喧嘩をするかしかない程には、自分とはズレている感性を持っている。

 今までの戦闘で本気になった事もないだろう。或いは、遥か昔に紅葉と戦った時ならあるかもしれないが……

 心夢はその時代を生きていないし、2人とも話そうとはしない為詮索はしないと決めている。


 閑話。


「何かあったの?」


 そう訊ねると、漸く立ち上がった雨飾は服に着いた土を払う。


「まあね」

「何があったのよ?」


 その質問に、少しだけ考える素振りを見せた彼は心夢を魔法陣の傍まで引き連れる。


「よく見て」


 言葉通り、隅から隅まで眺めてみるが、相変わらず違和感こそあるものの正体は分からない。

 文字、形、模様、どこにも不自然な場所は──


「ここ」

「ここって……あ!」


 呆れた様子で”ここ”を指す先によく目を向け、そして思わず声を上げた。


 問題のその部分。

 描かれた文字列は上下で二列。違和があるのは下に描かれている文字列。

 それは、鏡文字になっていた。


「これ……は、何を意味するのよ?私アンタ程詳しくないから分からないわよ」

「勉強してきなよ。君何のために図書館常連になってるの?」

「…………悪かったわね無知で。で、何?」


 嫌味ったらしい物言いに若干腹が立ったものの、言葉自体は至極全うの為、内心の怒りを可能な限り押し殺しながら再度尋ねる。

 それに気付いているのかいないのか、小さく溜め息を零すと説明を始めた。


「この魔法陣の上の文字列は支配系、特に精神作用系の魔法で、条件付きを表すものも追加されてる。これは対象者を予め定めておくタイプ。下の方は、再発動するっていうものを鏡文字にしたもの、つまり『この魔法陣は二度と再発動しません』って意味になる」


 普段とは打って変わったまともな説明に、心夢は少しばかり関心と尊敬を覚えた。

 そこまで詳しくは無い自分にも、凡そ理解しやすい説明が出来るのだから、普段からこのようにしていれば嫌われることも無いだろうに何故なのか、という気持ちも同時に浮かんだが。


「じゃあ、その再発動しませんって書かれていない物は、基本的に再発動するの?壊れたりは、しない訳?」

「そうだね……」


 そう答えたきり、無言になる雨飾。

 それが答えなのかと納得しかかった時、意外にも話が続いた。


「学校の転移魔法陣あるでしょ、あれは再発動可能っていう文字は入ってない」

「なんで?」

「魔法陣は勝手に壊れるからだよ」


 勝手に壊れる。

 それは、先程見た現象と合っているはずなのに、話を聞いた後では奇妙な気持ちへと変わる。


「じゃあなんであれは壊れないの?」

「魔法陣は基本的に術者の魔力を通して使う事が多い。けどあれはそうじゃなくて、使用者や漂っている魔力を吸収して稼働させてるの。だから、魔法陣の維持に必要な魔力が補填され続けて壊れない。魔力が無くなるといずれ自然に壊れる」

「へえ……」


 話をまとめるのであれば、魔法陣は基本的に魔力があれば維持され、それが無くなると自然と崩壊する。という事は、再発動するか否かの答えは『魔法陣が壊れる前に魔力を補填すれば可能』だろうか。


「でもさっき壊れたわよ、物理攻撃で。それになんでわざわざ再発動不可なんて文言足したのかも分からないし」

「なんでそんな設計にしたかは分からないけど、壊れたのは再発動しないようになってるからだよ。この魔法陣はもう用済みだから壊れる。それ以外はない。……僕のいるべき場所はここじゃないから、先に戻ってるよ」


 そう締め括ると、雨飾はその場から姿を消した。転移魔法で一足先に学園へ戻ったのだろう。


 いなくなった後も、暫く魔法陣を眺めていたが、ふと引っかかる事があった。



 この魔法陣は、いつからあったのだろうか?



 裏世界からの宣戦布告後に、家の下に描いたというのか。

 確かに家主達は相当魔法関連には疎いが、気が付かないものだろうか?


 いくら考えても、分かるわけがない。


「聞いておけばよかったかしら……」


 気が付いたのが、どうやら少し遅かったようだ。

記念すべき70話目を雨飾に取られました。


……


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