2つの世界
「なあここ何も無いぞ?」
どこまでも続く虚無を眺めながら、弥月黄はぼそりと呟いた。
突然、周りに何も無い空間に放り込まれた永克覇王の3人、否3鬼は、手分けをしながら見回ったが、驚く程に何も無かった。
1日ほど掛けて結界を破り、意気揚々とワープホールに踏み込んだかと思えば、ことわざでも比喩でもなく、文字通りに1寸先も闇だった。
仕方無く戻ろうとしたのだが、帰りのワープホールすらない。
転移魔法も試したのだが、御丁寧に阻害されていた。
フィジカルに重きを置いている分、能力も魔法も精密に扱えない彼らにとって、阻害魔法の解除は困難を極める。
故に、八方塞がりの状態で放置されているのだった。
「てーかさあ……」
空璃沙が不意に零す。
「……核すらいないって、ヤバくね?」
「そうだな……」
その言葉に、狛香綺も同調した。
裏世界にいるはずの人物が居ない。異常事態なのだが、どこに行ったのかもわからないし、そもそも出られないのだから探しに行けるわけもない。敵を探しに行くこと自体、おかしな話なのだが。
そして、居なくなった光陰世界の人々は、もう1つの裏世界へとその身を移していた。
─────
残る3鬼、緋嶺夜、黎焔炎、柊薔薇は、目の前の状況に困惑していた。
周囲の景色は、先程までいた渓谷の底。細い川が流れているが、1匹の魚も泳いでいない。
現実と比べて、死んだ世界だ。
敵は6人。その中で、特筆して目立つのは、紅梅色のウルフカットに、薄雲鼠の瞳を持つ人物と、柿茶のハーフアップ、曙色の瞳の少女。どちらも、髪飾りには瞳と同じ色の宝石が嵌っている。
何故か、この世界には核が2人もいる。
それが、この世界の世界効果なのか、それとも……
「いらっしゃ〜い」
思考を中断するように、呑気な声が向けられる。
声の主は、少女のようだ。
「精神世界-デンデラ ν-へよ〜こそ!」
手を大きく振り、にぱーっと笑みを貼り付けた幼子は、ロリータドレスを揺らした。
「私は光陰世界-ティンガル Ω-の核、リアン・フォード!訳あって、こっちの世界に移ってきたよ〜」
リオンと名乗った少女は、髪に指を巻き付けながら、浮かんでいる笑みを消さずに言った。
「そうそう、私の世界に君たちの仲間が向かったみたいだけど、もし入ってたら悲惨だね〜。核の私がいないから、まともに機能してないと思うし〜、最悪帰れなくなっちゃうね〜」
その言葉に、柊薔薇は息を詰め、黎焔炎は無言でリオンを睨む。
一方で、緋嶺夜は嫌な予感と共にどこか納得していた。
大魔王を倒すよりも先に、魔王を倒すのは当然とも言える。
そんな腑に落ちた思考を、胸騒ぎが上回っているが、どちらにせよ勝てなければそれまで。
「……油断はしない」
赤黒い角が現れ、戦闘態勢へ移行する。
その様子を見て、リオンは笑った。
「何故……笑っている」
それには答えず、リオンは拳を構えた。
「ルクス、戦える〜?」
「いつでもいい」
ルクスと呼ばれた精神世界の核は、両手に短剣を携える。
そして、絶望的な戦いが幕を開けた。
体調崩しました〜〜〜笑えない
明日の投稿もないです。毎日投稿ってなんだっけ?




