仲間
明日また来る、って言い残して穂は家に帰ってった。多分明日もまた行くんやろな、まーおもろそうやし行くんやけど。
ベッドの上でストレッチ。いつもよりは体使わなかったし、明日こそは思う存分動かしたい。考えるだけで気持ちが高揚する。
一通り体を動かして、寝ようと体をベッドの上に倒したその時。
「起きてるよね?」
「うわなんだお前」
突然ドアがぶっ飛ばされた。
煙と破片の中から、ロケランを右肩に担いだ紫髪がぴょこっと現れる。
「何しに来たんサイコパス最低大魔王」
「あれ僕君に嫌われるような事した記憶無いんだけど」
「天萊に聞いたぜ、美麗の部屋毎朝ぶっ壊してるらしいやん」
「あー、あれかあ。別にあいつ以外には迷惑かけてないでしょ?」
しれっとした顔で認めた上でそういう事を平然と言うのが嫌われてるんやと思うけど。つか私今現在進行形で迷惑被ってるんやけど、これについてはなんかねーのか?こいつの事やし多分ねーな。
「で、何の用だ?」
渋々体起こして雨飾の方に顔だけ向ける。よく考えなくても、こいつが私に用あるなんておかしい。こいつとは、関係なんてここに来てすぐの殺し合いくらいしか無かったし。
「あの2人はどう?」
「あの2人……あーヘヴィーとヴァリネッタの事か?」
「そうそう」
壁にもたれかかる雨飾。なんだかんだあいつらの事は気にしてるんやな。
「多分大丈夫だぜ、今は家で休んでるみたいやし」
「そっか」
あまりにも素っ気ない返事……あれ、こいつ紅葉から聞いてんじゃねーのか?
「なー雨飾」
「聞いてないよ」
「先回りされたけど聞いてねーんやな」
「教えてもらえなかったからね」
信用無いよね、とぼやく雨飾。それはお前の今までの行いやろ。
「……で?」
「何?」
さっきもちょい思った事やけど、こいつが私に用あるとは思えねーし、2人の事気にしてたっていう割にはあまりにも返事が適当すぎる。
「お前、私に何聞きに来たん?」
「……あー、気付いた?」
ぺろ、とわざとらしく舌を出し片目を閉じた雨飾は、瞬間的に表情を真顔に切り替えた。
「君、元々この世界の住民じゃないでしょ?だからさ、僕らに全部任せて逃げる事だって出来るのに、そうしなかったのは何でなの?」
ん、そんな事か?意外としょーもねーこと聞きに来たんやな。
分かりきってる答えやろ、そんなん。
「戦いたいから」
「あー、それ本心なん」
「だった」
戦うのが好きなのは紛れもない本心。
けどそれ以外にも理由はある。
前の世界からずっと、私は恩人や友達の事は守りたいと思ってた。だから、私の精神異常が治らない事は寧ろプラスだとすら思ってる。だって躊躇いなく敵をぶっ殺せるんやからな。
普通の奴らにかかってるリミッターが無いことで、私は良心とかに囚われなくていいから色んな面で好都合だ。
「前の世界は雑魚しかいなかったし、大切な奴らにカウントされんのは2人だけやったけど、こっちに来てからは、私より強い奴がいる事に気付いたからな。後仲間増えたし」
「それ、あの3人でしょ?そんなに少ない人数を仲間って呼ぶのは大袈裟なんじゃない?」
理解出来ない、みてーなニュアンスを言外に含めた雨飾。
こいつに仲間意識がない、ってことじゃねーやろけど、大魔王って立場上、範囲が広いのかもな。こんな奴でも統治者なんやし。
だからこそ、1人間として言っときたい。
「仲間って括りに人数なんて関係あるか?」
守り守られ、支え合うのが仲間ってやつやろ。
「……まあ、君の感覚だとそうなのかもね」
「夜鴉がお前の事相棒って言ってんのは知ってるか?」
ふと、私と穂が相棒って枠に収まった経緯を思い出す。
あいつが、私にその言葉の意味を教えてくれたんだった。
「知ってる。命を預けられる相手だって言ってた」
じゃあ、お前は。
「お前にとって、夜鴉ってなんだ?」
それに対する返答は、
「安心して、背中を任せる事が出来る存在」
雨飾と夜鴉については、31話 悪夢の現実にてちょっと触れてます。良ければ。




