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戦闘狂の異世界記録  作者: 茜音
異世界戦闘記-表裏一体-
55/76

水世界-ジアード μ-

 ホールの先は、1面水だった。

 中央には、20mはある透明な塔が聳え立っている。


「……見た所はいなさそうだな」

「そうみたい。早く倒そう」

「油断しないようにするのぜ」


 威弧燈が先頭を歩き、蘭葉蘭と五雨月が着いていく。

 


「居そうなのは……ん?」


 なんとはなしに、威弧燈は上を見上げる。その時、塔の上に4人の人影を見つけた。

 2人にも指先で示せば、軽く頷いた。


 流れる水で生成された塔の上。その上の玉座も、また流水で出来ている。そして、その座に座る人物。

 

 白髪の、肩程度までの長さ。閉ざされた瞳の色は知らず。眠っているとでも思われそうな程に、微動だにしない。


 右側には、ローズグレー色のショートヘアに、ラベンダーの瞳をした人物と、藍鼠(あいねず)の髪を低い所で結び、サックスブルーを覗かせる人型。左側には、キャラメル色の髪を2つ団子にし、アプリコットの両眼を鋭く光らせる容姿を持った相手が控えている。


「ここの(コア)はお前なのかぜ?」


 威弧燈は、玉座に座る人物に声をかける。

 その声に反応してか、薄らと瞳が開いた。

 気怠げな瞳は、黄色に光っている。


「……そうだけど」


 何度が瞬きをした後、(コア)は玉座から立ち上がる。

 その瞬間、何故か今まで聞こえなかった水音が、鮮明に鼓膜を擽る。

 たったそれだけのはずなのに、どうにも落ち着かない気分にさせられる。

 横目で蘭葉蘭と五雨月の様子を伺うと、僅かにだが顔色を悪くさせていた。


「俺は……[マリー・デイクロット]……あくまで自称……名前は…無い……」


 立ったまま、うつらうつらし始めるマリー。その右手の中指には、金色のクリスタルが光る指輪。

 その代わりか、主の肩に手を置いて、左側に立つ人物が口を開いた。


「お初にお目にかかります、永克覇王の方々。水世界-ジアード μ(ミュー)-へようこそ。私は、[ミルディア]。こちらは、[エルモア]と[アクレシオ]でございます」


 そう言って、片手でスカートの裾を摘むミルディア。

 更に彼女は続ける。


「表世界には、殺して能力を奪う能力者もいらっしゃる様ですので、他の裏世界は(コア)となる方のみを残している様です。然し、この場所には、貴方様方が来られると思っていましたので、私達は隔離空間へ避難は致しておりません。私達4人の戦力を以て、貴方様方を殺させていただきます」

「……随分話してくれるな」

「あら、お気に召しませんでしたか?では、他の世界についてもう少し……」


 いっそ不自然な程、情報を話すミルディアに、警戒心を露にする五雨月。

 水音が流れる中、マリーから視線は外さず目を細めて観察し、ゆっくりと思考を回転させながら、威弧燈は真意について考える。


 ただの親切心……ということはまず無いだろう。敵同士なのだから。

 確実に殺せるという自信から来ている?それにしては、奇襲や不意打ちに対する防御はしていないように見え──


「(……ん?)」


 その時、威弧燈は初めて違和感に気が付いた。

 いくら瞬きをしてみても、目を擦っても変わらない。


「(視界がぼやけて見えるのぜ……)」


 いつからかは分からない。ただ一つ分かる事は、この場所に来るまではそんな事は一切なかったという事。

 そして、急に気になり始めた水の音。


 瞬間、脳裏を過ぎった1つの考え。


 恐らく、水の音をトリガーとして何かしらのデバフをかけているのだろう。そして、効果は遅効性。

 効果を十分に発揮するまでには時間が必要になる。


 2つ目の考えと反対だった。

 デバフ無しでまともに戦った場合、鬼であり魔王である自分達には勝てないと始めから分かっていた。故に、確実にデバフが働きかけるまでの間の繋ぎに、無視出来ない話題を晒したのだろう。

 この世界に来てすぐに発動しなかったのは、(コア)たるマリーが──というより世界効果が非起動状態だったから。

 それは、マリーが玉座を立った時と同じタイミングで水音が影響を及ぼした事が証拠。


 そして、これら全ての推論が正しければ、この世界効果は『水によるデバフ』であり、時間が経つ程不利になる。


「蘭葉蘭、五雨月」


 合っている保証は無い。だが、間違っている根拠だって無い。


「もう話は聞かなくていいのぜ」


 ならば、自分を信じるまで。


「でも、話は聞いた方が」

「それが罠だぜ」

「え?」


 不思議そうな蘭葉蘭を手で制して、4人を見上げる。


 ここからは、時間をかければかけるだけ戦闘が困難になるだろう。

 片付けるなら、今しかない。


「俺が(コア)と左側の相手するから、2人は1人ずつ頼むのぜ」

「あ、ああ……」


 戸惑い気味の返事を受けて、威弧燈は地面を踏み締める。

 バシャ、と重い水の音がした。


「一体何を……ッ!?」


 ミルディアの言葉は、途中で意味を為さない空気となった。

 無理もないだろう。


 同じ塔の上には、先程まで下にいたはずの存在。

 それが、助走も無くたった一度の跳躍で同じ土俵まで登ってきたのだから。


「生かすのは、1人だけで十分。邪魔するなら、殺してやるのぜ」

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