vs.敵対存在
天萊、羅刹、そして觜霊は、亡霊の案内の元、邪王の元へと足を進めていた。
特定した拠点は粗末な家で、本当にここにいるのか天萊も疑っている。然し、確かに一人がこの中に入って行く所を見た。自分達を誘い出そうとしているのだろう、と考えてはいるが、ならば尚更向かわない選択肢は無い。
学園を出て歩く事2時間弱。
目的地としていた場所に辿り着いた3人だが、周囲からは何の気配も無い。
建物の外見は、蔦が壁や窓に纏わりつき、所々苔生している。長らく使われていないであろう見た目に、やはり罠だったと天萊が思った時。
「天萊、動かないで」
羅刹の声と共に、視界の端を青白い光が駆ける。一拍遅れて、頭に響く程の音が轟いた。
音のした方を振り返ると、そこにはフードを纏った人型が3体。その内の1人は淡く光る赤色の紋章を天萊へ向けていた。
「隠れて不意打ちをしようなど、卑怯では?」
「戦場に卑怯等無い」
天萊の言葉に、真ん中に立つ人物が答える。その返答に、彼女は僅かに笑みを浮かべ、告げる。
「そうですね。確かにそうでした。ええ、戦闘ですもの。
では、同じ事をされても、問題はありませんよね?」
邪王の背後の何もない様に見える空間から、それぞれに向けて赤黒い球体が放たれる。
案内として先を歩かせていた亡霊を透明化し、自律行動を切断、自身の霊力と結び付け、意のままに動かす。
天萊の能力の一つ、【死霊士】は、霊体の召喚と操作に特化したもので、体の一部のように操る事を可能とする。彼女に武器は無いが、その代わり、両手の指の10本分と自律型の計11体まで一度に操作が行える。それによって、数で戦うという方法を取っているのだ。
勿論、デメリットも存在するが、立ち回り次第ではあってないようなもの。
そっと左小指を引き、霊を近くに手繰り寄せながら注意深く様子を見る。
確かに直撃はしたが、恐らくはダメージにはなっていないだろう。
予想通り、土埃から姿を現した3人は、軽く服を払っただけで、すぐに態勢を立て直した。
「そう簡単にはいかないみたいだね」
「そのようです」
青く輝く愛刀を構える羅刹に、居合の構えを取る觜霊。
天萊も、新たに4体の霊を召喚し、全て左手に接続した。
そして──
各々、見定めた敵との交戦が開始する。
─────
蘭葉蘭に威弧燈、五雨月の3人は、家のすぐ近くにある《水鏡の深潭》という洞窟内部を歩いていた。
水晶が壁や天井から生え、所々に水溜まりが生じている。地下13階層まで広がるここは薄暗い。滑りやすい床を、細心の注意と共に迷う事無く突き進んでいく。
「ここなのぜ?」
最後の階段を下りきった先に現れたのは、普段であれば何もない広場。
今はそこに、微かに光るホールが出現していた。
「この中に敵がいるんだな……」
「うん。気を付ける」
緊張気味の五雨月や蘭葉蘭と対照的に、威弧燈は軽い足取りでワープホールへ近付く。
「早く片付けてクッキー焼きたいのぜ!」
「悠長かよ」
「んあ?大丈夫だぜ!」
威弧燈の前髪を分け、中央に1本の角が現れる。鋭く尖った漆黒のそれは、鬼である事の証明だった。
普段は人間と変わらない見た目をしているが、鬼族としての力を完全に解放した時は、力を誇示するが如く生えるのだ。
「行けるかぜ?……とは言っても」
その瞬間、急速に体がワープホールへと引きずり込まれる。
「強制連行っぽいのぜ」
抗えない勢いに、威弧燈は薄らと口角を上げて自ら足を動かした。
書いてて思ったこと:觜霊って名前なのに霊使ってるの天萊って紛らわしい
因みに次話は蘭葉蘭達による裏世界攻略で1日が終わります。天萊達はとあるイベントまで描写なく戦い続けることになる…かもですね。




