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戦闘狂の異世界記録  作者: 茜音
異世界戦闘記-表裏一体-
52/76

禁忌の秘奥

 蘭葉蘭(らんはら)とケーキ食べながら話してたら、部屋の両開きドアが開いて金髪の威弧燈(いこどう)と赤インナーの五雨月(さみだづき)が入ってきた。


「準備出来たぜ!」

「ケーキ食ってないで出るぞ」

「待って。もう少し」

「いい加減怒られるだろ」

「2人が遅いのが悪い。違う?」


 正論に黙る2人。


「……身嗜みは大事だろ」


 少しの間の後、五雨月の方は苦し紛れに答える。

 そんな言い訳も、


「これから戦うのに、必要?」

「う゛……」


 容赦なくぶった斬られて言葉に詰まる。

 そんな様子を気に留めず、蘭葉蘭は残ったパウンドケーキを口に押し込んで珈琲で流し込むと立ち上がった。


「行ってくる。いてもいい」

「いや、私達は元から呼んで来いって言われたから来ただけだから…」

「そっか。じゃあまたね」


 穂がやんわり断ると、手を振りながら部屋を出てった。威弧燈と五雨月も黙ってその後を着いてくのを見送って、私も珈琲を飲み干す。


「じゃ、私らも戻るか」

「そうだな……」


 椅子から立ち上がろうとして思い出す。

 私ら、転移魔法で送って貰ったから歩いて帰れないんだったわ。でもあれ、転移魔法陣だったよな。転移魔法って私個人しか移動出来ないんやろか……


「なあ、転移魔法って私しか移動出来ないんか?」


 そう聞くと、穂は少し考える素振りを見せてから、ゆっくりと頷いた。


「じゃあ私らどうすればいいん?」

「どうって……お前なら魔法陣の方展開出来るだろ?」

「えっ?」

「え?」


 不思議な顔で私に聞いてくる穂。え?は私の台詞だろ。何言ってんだこいつ?


「なんでそう思ったん?」

「いや、お前の神技(アビリティ)って再現か模倣だろ?」


 神技(アビリティ)ってあれか、波動奏者(エナジーコントロール)が持ってるやつか。

 そーいやヘヴィーなんか言ってたな。


「でもそれ、私がミスったらお前取り残される事にならねーか?」

「その時はー……ここと学園行ったり来たりして出来るようになったら連れて帰ってくれ」

「お前マジで言ってんのそれ?」


 しれっと言った穂に若干の不満。そうしないと穂は帰れねーからそうするしかねーんだけど。


「わかったわかった、とりま試すからちょっと待ってろ」

「やったぜ」


 で、転移魔法陣ってどう展開するん?波動(エネルギー)を周りに上手く広げられたら魔法陣になるんか?それ魔法陣って呼んでいいのか分かんねーけど。つか魔法関係なくね?

 元は一応魔法やから別にいっか……


 そっと絞り出す様に広げながら、転移の準備を始める。こういうのはゆっくりやった方がいいって紅葉に教えてもらった。

 少しずつ地面に魔法陣が描かれる。完成までにはちょっと時間かかりそうやけど、ちゃんと発動してくれそう……してくれるよな?


「出来た?」

「今作ってっから待て」

「分かった。後ちょっと気になったんだが……」


 穂が何か言いかけた時、円と模様が繋がった。そこまで大型にする気が無かったからか、予想よりは速く作れたな。これなら2人で乗れるやろ。


「出来たぜ」

「あ、マジ?分かった」


 なんか言おうとした穂は、結局言わずに魔法陣の上に乗った。私も隣に立って、波動(エネルギー)を注ぎ込む。

 一瞬の後、景色が学園の校門に切り替わる。無事に転移魔法には成功したか、良かった。


「ねえ、キミらさ」


 なんて思ってたら、いつの間にか近くにいた奴に声をかけられた。


「ん、なんだ紅葉」

「それ転移魔法陣?どこと繋げてある奴なのさ」

「ああ、永克覇王の家にな」


 穂が私の背後に移動したのを気配で感じながら答える。紅葉は溜息を吐くと、こっちに近付いてきた。


「残してたら魔法陣の誤作動とかでこっちに来るかもしれないだろ。消してもいいかい?」

「……確かにそうだな、あいつらも来れるんか。頼む」


 一応許可求められたから承諾すると、描いた魔法陣が無かったかのように消えた。こいつどんな能力持ってんだろ。


「ところで、何でわざわざ魔法陣なんて作ったの?」

「ん?だってそうじゃねーと穂のこと置いてっちまうやん」


 首を傾げながら質問に答えると、紅葉は珍しく無表情から驚きに変えた。とは言ってもめちゃくちゃ分かりにくい変化やから会ってすぐの奴とか絶対分かんねーだろーけど。私は1ヶ月くらい指導してもらったから何となく分かるようになったってだけで。


「いや、そんなことないけど……?」

「え、あ、ん?」


 どういう事だ?魔法陣は作る必要は無かった……って事か?なんで?


「転移魔法陣の方は『術者を含む事が出来る大規模転移魔法』、転移魔法は『術者と接触している相手を転移させる』だから、別にみのりが影星に触っていれば転移出来るけど……?」

「……マジで?」


 聞き返した私の後ろで「やっぱそうか……」って声が聞こえて振り返る。

 少し気まずそうな表情で視線を彷徨わせる穂。

 ……おいまさかこいつがさっき言おうとしてた事って……


「あー……思った、けど作ってたから言わない方がいいかと思って……」

「……」


 いらねー気遣いなんよな……でも一応私の事考えてくれたんやろしな……言い難いな……


「……ヘヴィーとヴァリネッタ、帰ってきたよ。今は保健室にいるから行ったら?」


 雰囲気に耐えかねたのか、紅葉がそっと話題を変えてくれた。こういう時ほんと頼りになるわ。


「そうするわ。行こうぜ穂」

「あ、ああ……そうだな。行くか」


 昇降口の壁に体を預けた紅葉の横を通って校舎内に入る。保健室は……確か1階にあったはず。

 静かな廊下に2人分の足音が響く。


「……なんかごめんな」

「いや、大丈夫だ」


 穂が謝ってくるから、私も無難に返す。実際悪気があった訳じゃねーし、そもそもそんな規模のデカいミスに繋がるわけでもねーし。


「言った方が良かった、よな」

「もう気にしなくていいっての」


 視線が下に向きつつある穂の肩を軽く叩いて慰める。自己嫌悪に陥りやすすぎるなこいつ。情緒もなんか不安定だし。

 ま、それを何とかするのは相棒の私がする事ってことで。


「それで、禁術とは結局なんだ?」


 そんな事を考えてたら、保健室からヘヴィーの声がして足を止める。

 おいおいなんかおもろそうな話しようとしてるやん、なんだ?

 こんなん入るしかねーよな。


 てな訳でスライド式ドアを蹴りでぶっ壊して保健室の中に凸る。


「禁術って何の話だ?」

「うわびっくりした壊さないでよ」


 木っ端微塵になったドアだったものの破片を浴びたらしい雨飾は、服を叩くとヘヴィーを半目で見詰める。


「君の声が大きいから増えたじゃないか」

「うるさい。いいから言え」

「それが教えてもらう人の態度なの?」

「貴様が嫌味ったらしい事を言わなければ良いだけだ」


 ヘヴィーの言葉に軽く肩を竦めた雨飾は、その『禁術』とかいうやつについて話し始めた。


「今は使われてない始原魔法(しげんまほう)って呼ばれてる奴の派生。今使われてる魔法は、始原魔法が簡略化されたり改良されたりしているもの。だから、直接的な攻撃の魔法よりも補助的な魔法が多いでしょ?」

「……確かにそうだな」


 転移魔法に洗浄魔法。どっちも攻撃魔法じゃねーな。転移魔法に関しては自分ごと宇宙にぶっ飛べば殺せるやろから、必ずしも殺傷能力が0って訳じゃねーけど。

 ん、なら始原魔法ってのは今の魔法と禁術の2つに分かれてる、って事になるよな。

 結局禁術が何か、の答えにはなってなくねーか?


「で、派生だという話は分かった。結局禁術とはどの様なものなんだ?」


 少しイラついたヘヴィーの声。


「始原魔法を悪い方に改変したもの、って言えば1番分かりやすいかな。知ってれば誰でも使えるけど、代償は高く付くよ。効果は能力にも劣らないけどね。禁術は基盤になる始原魔法さえ知ってれば、そこからいくらでも派生させられる。分かってくれた?」


 それを聞いて黙り込むヘヴィー。なんか考えてるような真剣な表情。

 かと思えば、急に目を見開いた。


「その禁術を知っている奴はどれくらいいる?もしくは始原魔法でもいい」

「ちょ、何急に……?殆ど居ないよ、多分」


 掴みかかる勢いで迫ったヘヴィーに後退りしながら答える雨飾。

 答えを聞いたヘヴィーは、さっと離れて保健室内を歩き回りながら何か呟いてる。その足が、途中で止まった。


「その代償とは、効果により変動する?」

「うん。君が話してた召喚は、それくらいなら死んだりしないと思う」

「貴様は禁術や始原魔法を使えるんだな?」

「まあある程度は……何この質問?」

「貴様の魔力は無限なのだろう?」

「そうだけど……?」


 ヘヴィーの質問の意図が読み取れない。雨飾がやったのか?って事を聞きたい……訳じゃなさそうなんよな。


「邪王連中の魔力も無限らしいが」

「そうだね。僕なんて性質的には半分邪王みたいなものだと思うよ」

「そいつらが始原魔法、及び禁術を知っている可能性は?」

「僕に聞かれても……」


 望んだ返答とは違ったのか、ヘヴィーは舌打ちと共に雨飾に鋭い視線を向けた。怒りと殺意と敵意とその他諸々が混ざった視線。


「……悪かったね、答えられなくて。気になるなら紅葉にでも聞きに行けば?」

「いい。あいつには会いたくない」


 溜息混じりの雨飾の提案を、吐き捨てるように却下して保健室を出て行くヘヴィー。その時、青紫のツインテールが視界の端に映った。


「ヴァリネッタさん」

「あー、悪い後で」


 引き留めようとした穂の手を強引に振り払って、部屋から早足で出て行った。


「……追いかけた方が、いいか?」

「ああ。少し心配だしな」


 頷きあって、私と穂も廊下に出る。気配は外から感じる。って事は、もう外に出てったんか……

 ふと、近くの扉が薄く開いてるのが目に入る。そっと開いてみると、目の前は遊具やらネットやらが設置された外だった。


 遠目に、タイヤに腰かける2人の姿。


「穂……」

「……行ってみるか」


 外に出て、出来るだけ足音を立てないように土の上を歩く。


「分かっているんだ、これが八つ当たりである事は」


 その声が聞こえて、私は足を止めた。

 罪悪感と、それから少しの悲しみが籠った声。


「ヘヴィー……?」


 穂が掛けた声が聞こえたのか、顔を上げる。

 瞳には、薄く水の膜が張っていた。

かなり長いですね。でも設定は熱々のうちに打って冷ました方が良いと聞いたので書いちゃいます。次も戦闘は無し。戦闘ばっかじゃ私も飽きますしおすし

何の気なしにユニーク見たら1000越えてました。ありがとうございます!ありがとうございます!(´つヮ⊂)ウオォォ


(2024/12/16)すいません。今何気なく描写の為に見返したら大矛盾してたのでめちゃめちゃ直しました。

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