封印の仮面
ヴァリネッタとメティスは、互いに武器を交えていた。
ヴァリネッタのナイフに乗る効果、<能力破壊>はモーニングスターが能力で作られた武器では無い為発動しない。その代わり、敵の能力を完全に無効化する事に成功していた。
【同一調和】。
周囲の景色と同化し、その中を自由に移動可能な能力であり、発動中は法則を無視して行動する事が出来る。
【腐食菌糸】。
ウイルスを蔓延させたり、新たな細菌を生み出す。既に存在する菌に、変質や腐食効果を付け変化させる事も可能。
本来、この空間はメティスにとって圧倒的に有利。
常に薄霧に覆われ、足元には細菌が数十億存在する土が広がっている。おまけに、世界効果は気配感知を阻害するもの。
この場所以上に能力を活かせる所はないだろう。
しかし、それを邪魔するのは、ヴァリネッタから放たれる、生命エネルギーが変換された特有の破壊の波動。それに充てられて、能力の発動が許されない状態になっている。
それでも武器が辛うじて守られているのは、メティスの魔力を幾重にもメイスに纏わせているからだ。だからこそ、破壊出来ない最後の砦としてヴァリネッタの前に立ち塞がっている。
一方、ヴァリネッタは内心で焦っていた。
凡そ13万年前、紅葉により起こされた「紅色悪夢」。
自身の故郷に破滅の力が及んだ時、無謀だと分かっていて、正面から挑んだ。
結果は死の淵を彷徨う程の重体。そこから掬い上げられ、今も生きているのは神こと[観測者]から与えられた『守護者』という称号により、殆ど奇跡と言って差し支えない極僅かな確率で、寿命と力の大半を犠牲にし、蘇生したからだ。
力の大半を蘇生に使ったことで、魔力にしても、波動にしても、絶対量は大幅に減少した。
それが問題だった。
魔力の場合、絶対量に変化が生じると、保有する魔力量もそれに準じて調整される。
そして、波動とは違い、魔力の場合は絶対量の変化は、難しい事ではあるが不可能ではない。
その最たる例は影星の天性〖闘争本能〗の1つ、魔力増強。
殺した人数をコストと置き換え自身を強化するものだが、事実キャパシティは恐ろしい程上昇している。
だが、波動はそうもいかない。容量を変える事が出来ず、器から大量に溢れ出す事になる。
そのままでは、波動過多でヘヴィーとヴァリネッタの体が崩壊する。
ヘヴィーの方は、常に差し支えない程度に放出し、定期的に実験を行うことで発散させながら過ごしていたが、ヴァリネッタの場合は器と量に差がありすぎて、その発散方法では到底消費しきれなかった。
そこでヘヴィーが作ったのが『封印の仮面』だった。
力を無理やり抑え込む物だが、それでは力が内側に溜まりすぎて暴発する。
故に、仮面を半分にし、50%は抑制、50%は全力使用で何とか持ちこたえている。能力を積極的に使わないのも、出来るだけエネルギー消費を戦闘時にしておきたいから、という理由だ。
今、ヴァリネッタは仮面を外した状態、つまりは波動過多。
このままでは、いずれ体が崩壊を始めてしまう。
魔力と違い、使った端から溢れ出した体外の波動を吸収して回復するのだから、限界が来るのもそう遠くはない。
そのことを理解しているから、決して表には出さないものの、少なくない焦燥を抱えながら戦闘を行っている。
身体能力ではメティスの方が上。その差を、際限なく溢れる力で埋めている。
現状は、互角かややヴァリネッタが優位といったところだ。
四方から具現化されたナイフが飛ぶ。それらを弾いて飛ばすと、メティスは一直線にヴァリネッタ目掛けて地を踏み、モーニングスターを振り翳した。
ヴァリネッタは、攻撃を正面から受け流し、左手で破壊エネルギーを込めた打撃を、棒を握る腕に向けて繰り出す。
魔力で全身を覆っていても相殺しきれなかったのか、舌打ちを零したメティスの手から武器が離れる。その瞬間を見逃さず、新たに具象化したナイフで胴体を狙い飛ばす。
「ッぐ……」
躱すことが出来ずに深々と突き刺さった攻撃に、小さく呻いて後退した。
核は殺すことが出来ない。よって、後は意識を落とせば目的は充分に果たせる。
そう考え、ヘヴィーが勝利を確信した時──
「……仕方ないね」
そう呟く声が耳に届いたかと思うと、
──突如、空間が揺れた。
自分のところ、近接格闘が主すぎて二度見しました。
バリバリ能力乱発するド派手なシーンとかも描きたいですね。描けたら。




