永克覇王
紅葉に言われた通り、3階の生徒会室に行くと、背中を向けて椅子に座る黒髪の男がいた。空中に浮かぶモニターが12個、それぞれ別のワープホールを映してる。
気配に気付いたのか、椅子ごと回転させて夜鴉はこっちに体を向けた。
「……」
なんも言わねーじゃねーかこいつ。1か月前のこいつこんな無口だったか?……いや、初めて会った時の会話全部雨飾に任せてたか。
「紅葉にお前から指示貰えって言われたんよ、次どうすればいい?」
「……いや……お前らは……まだ……」
「いいんか?」
黙って頷く。コミュニケーション能力皆無とかそんな次元じゃねーけど大丈夫かよこいつ。
まあそれは一旦置いといて。
「動かせるやつ動かして早いとこ叩き潰した方がよくね?」
短期決戦でボコボコにしたほうが早く解決するし、向こうから変に手出されることもないし。魔王組織って確か3つだよな?充分な人数いそうやし、何も難しく考える必要無いと思うんやけど。
「……無理だな……」
「ん、なんでだ?」
ところが、私の提案は秒速却下。理由聞いた所、2つ理由があるらしい。
1つ目は、邪王連中が敵にいるからその為に戦力温存、つまり大魔王を裏世界の方に送り込むのを避けたいから。
2つ目が、裏世界は未知でどんな世界効果があるのか、どんな能力を持ってるのか、敵は何人か、どれくらい強いのか。ここら辺の情報が少しも掴めねーから、もし何かあった時に対応出来るようにローテーションで回す事にした、って事らしい。
追加で言うと、魔力回復にもある程度時間かかるしその間に襲撃とかされたら困る、ってのもあるみたいやな。
「んじゃ、私らは今日は特になんもなしか?」
「……いや……魔王を呼んできてくれ」
「パシリじゃねえか」
夜鴉の頼みに、穂が小声で突っ込む。聞こえてんのか聞こえてねーのか(多分聞こえてて都合が悪かった)、スルーすると、私に視線を向けた。
「……念波会話に応答しねぇ」
「あー、だからついでに様子見て来いってことか。ちなどこの魔王?場所は?」
私が聞くと、足元が淡く光る。
転移魔法陣か。
「……行けば分かる」
こいつは私が誰にでも話しかけに行けるコミュ強人間だと思ってるんやろか。
そうだけど。
「分かった、んじゃ行ってくるわ。穂と」
「あ俺も?」
「当たり前やん」
ぐいっと穂の手を引いて強引に魔法陣の中に入れる。抵抗はされなかった。
一瞬の浮遊感の後、飛ばされたのは城っぽい家の真ん前。
屋根付きの六角形の柱が高々と聳え、白い壁に円形のはめ殺し窓。高さは二階建てっぽいけど、踊れそうなくらい広いバルコニーもある。足元は綺麗にタイルが敷き詰められて、低めの柵で舗装されてる。柵の外には色とりどりの小花が咲いててめちゃくちゃ綺麗。
「す……げえ」
「……荒らしたら、ヤバそうやな」
こんなとこに住んでる魔王ってどんな奴だ?
大魔王……じゃねーから、サーガかナイティアか?つか私があったことあるのそこら辺しかねーしな……
でもサーガはともかくナイティアにこんな美的センスあるとは思えねーし……
「……とりあえず、開けてもらった方がいいんじゃないか?」
「せやな、そうするか」
鋳物門扉を開く。更にもう1つ、建物に直に取り付けられた扉。
その隣に設置されたインターホンを押すと、すぐに扉が開いた。
「上がって」
目の前には、灰紫色のドリルサイドテールの子供。黒灰色の瞳に、小豆色のオーバーサイズパーカーを羽織ってる。
「ここに魔王がいるって聞いたんやけど、お前もその1人か?」
そう訊くと、子供はこくんと頷いて、扉を大きく押し開ける。
「私達、魔王組織、〈永克覇王〉。貴方達のこと、知ってる」
大きな目で私達を見上げて、当然とでも言いたげに答える。
うーーん有名人になっちまったか。……1か月前からそうだったな。
「入って。大丈夫、やる時はやる」
服を子供とは思えない力で引っ張りながら、魔王は私達を家の中に入れる。
「うわ中すげ……」
螺旋階段にシャンデリア、青と紫で構成された内壁に、大理石が使われた床。白い柱がアクセントになって、内側も城かよって思うくらいには憧れの建物。
「やっぱこの服の方がいいか?でも汚れたらなー……」
「前髪が変なのぜ……」
……その内観にそぐわない、黒髪赤インナーと金髪ポニーテールがいた。




