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戦闘狂の異世界記録  作者: 茜音
異世界戦闘記-表裏一体-
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共闘

 穂は私を背後に回したまま、動こうとする気配がない。私も後ろから、グロウの事を観察する。


「まあ、お邪魔が入りましたね」


 本人は、むっとした顔で立ち上がり、服を軽く叩く。


「まあ、いいです。貴方もここで仕留めておきましょうか」

「やれるもんならやってみろよ」


 睨み合う2人。

 その間にも、闇は少しずつ距離を詰めてくる。しかし、その動きは鈍い。


 なんでこいつら、遅くなってるんだ?


「なあ星辰、俺はどうすればいい?」

「……そうだな」


 思考中に訊かれて、深みに入りそうになってた所を引き上げられる。


 本来なら、こいつら殺して少しでもコストに回したい。その間に、この世界(フィールド)を穂に分析してもらうのが、優位に事が運ぶかもしれない。

 けど、さっきみたいに動けない状態で一気に叩かれるのは流石に不味い。……でも穂だけここに残すのは危険、だよな。同じ事になったら、離れてる間は助けらんねーし。だったら私もここに残ってあいつを何とかした方が……


 ……いや、ここで信じられなかったら、相棒じゃねーな。


「穂、こいつらの足止め頼む。私はこの世界になんかないか探してくる。闇の塊みてーなやつは何回殺っても復活してくるし、生半可な攻撃じゃ再生もされる。死なねーように時間稼ぎ、頼んだぜ」


 長々と説明してる暇は無い。要点だけ伝えて、闇と闇の間を縫って走る。


「任せとけ!」


 心強い言葉を背に、未知の暗闇へと足を向けた。


─────


 穂は、影星の姿を見送ると、改めて敵へ視線を向ける。

 相変わらず鈍間な動きをする闇の塊は、どうやら己に光系の能力がある事を察しての様だった。

 理論抜きに、近寄り難いのだろう。


 1か月前であれば、恐らくは頼まれたとしても断るか、良くて影星と一緒に、と言っただろうと想像が着く。

 けれどもう、そんな事は言わない。



 遡る事、影星が紅葉に呼び出された次の日。

 穂は、夜鴉の元へ出向いていた。


「私、強くなりたい」

「……」

 

 夜鴉の城の一室で、じっと相手の目を見つめる。その様子を見て、彼は静かに口を開いた。

 

「……理由は」

「影星の相棒として強くなりたい」


 一切目を逸らすことなく言い切ると、何か思う所があるのか、それとも格下への同情か。

 真意は分からないものの、聞こえるか聞こえないかの声量で呟く。


「……その気持ちは……分かるけどな……」


 その言葉の節々を拾った穂は、一縷の希望を込めた視線を向ける。

 とは言え、たった1人程度に割いてやれる時間が無いのは事実。


「……ダメだ。……そもそも、お前は戦う必要が無い」


 そう、一蹴された。


「それを決めるのはヘヴィー、もしくは私のはずでは?」


 けれど、それで諦めるようならば。

 簡単に、引き下がる程の平板な決意ならば。


 わざわざ、大魔王嫌いの主に、頭を下げて頼み込み、予定と居場所を訊ねてもらう真似はしない。

 例えそれが、雇主の機嫌を大きく損ね、仕事に影響しようとも。


「私はまだどうするか決めてない、それは確かです。でもだからって、何もしないなんて有り得ない。もしあいつになんかあった時、頼ってもらえる……支えられる……


 それが、相棒ってやつだろ」


 相棒(影星)の隣に立つ為であれば、どんな努力だって惜しまない。


 曲がる事のない意志が通じたのか、夜鴉は席を立ち、扉へと手をかけ、穂の方へ僅かに体を向ける。

 前髪が揺れ、隠されていた紅眼が露になる。左右異なる瞳に睨まれ、穂は言葉を失った。


「根上げたら殺す」

「は……え……?」

「……始まるまで」


 その言葉に、穂は目を見開いた。

 

 これが、影星と夜鴉が会う事のなかった理由である。


 その日から、朝から晩まで基礎から鍛え直す強化訓練が始まった。

 只管に身体を動かし、経験を身体に刻み込む。模擬戦に次ぐ模擬戦の中で、致命傷を受けた事も度々あった。だが、それも『隣に立てる程強くなりたい』という意思のみで、何度も生死の境から抜け出しては、その度に確かな実力をつけてきた。


 何時しか、治癒力は飛躍的に上昇し、能力による自動回復も相俟って、受けた損傷は短時間で修復され、鍛えられたステータスは以前の何倍にも跳ね上がった。


 但し、上限解放だけは何度解放しても物に出来なかった。

 寿命を削り強力な効果を得る事が出来る。

 その為だろうか、力をコントロールする事が難しい。重ねて、何度も解放を行っていたら、先に寿命が尽きてしまう。

 どれだけ実力が向上しようが、寿命に囚われる事を選択した人間であるが故に。


 それでも、強くなったという実感は十二分に湧いてくる。

 

 誇りを持って、隣に立てるようにと今日まで自身を追い詰めてきたのだから。



「私はあの子と遊びたかったのですが……全くもう」

「行かせるとでも?」


 不服そうなグロウに、掌から光線を放つ。

 それを躱し、ハルバードを手元に召喚した。

 黒く染まったそれを見て、穂は僅かに目を細める。

 

 決して油断は出来ない。


 けれど、実戦に勝るものはない事も確か。


 気を抜かず、かといって難しく考えないように。


 薄らと笑みを浮かべ、戦闘態勢を整えた。

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