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戦闘狂の異世界記録  作者: 茜音
異世界探索記-日常-
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異世界の理

「……は?大魔王?って事は、ここはやっぱ異世界なんか?」


 情報が多い。脳内で整理してみるか。

 転移、とも言ってたから、転生とは一旦別物として考える。

 とすると、私は生きてて何らかしらの原因でここに転移しちまったわけか。

 心当たりとしては、外に出た時のあの目眩位か。情報にはならなさそうやな。


「ああ。順番に答える。まず、この世界は貴様の生きていた世界とは別物だ。世界名、《魔律永遠輪廻(エターナルアイランド)》。貴様にとってはれっきとした異世界だ。現在地は、学園のある世界最大都市、《暁の幽玄(ルルヴェシティ)》。時計が飾ってあった、高い建物が学園だ」

「へー…」


 地理には正味あんま興味ねーんだよな…ま、一応覚えとくか。……覚えられるもんなら。


「次に大魔王とは何か、だな。この世界で、魔王より上の立場の9人のことだ。〈不死鳥大魔王(フェニックスロード)〉と呼ばれている。さっき貴様が交戦していた相手だが、紫の方が[雨飾(あまかざり)]、黒髪の方が[夜鴉(よがらす)]。2人とも大魔王だが、雨飾の方は危険人物と言われている」

「だよな。ロケラン持ってたし。………………いやちょっと待て、"魔王より上の立場"ってなんだ?普通の魔王もいるんか?」


 ふと言葉が引っかかって、ヘヴィーに聞き返す。

 聞かれたヘヴィーは、さも当然と言ったように頷いた。


「そうだが」

「あ、っそ……」


 これ以上はまたややこしくなりそうやから黙っとこ。


「所で貴様、左腕を折ったそうだな」


 話が一段落したのか、ふとヘヴィーがそんな事を言い出す。さっきの会話の内容、聞かれてたんか。


「まーな、でも大丈夫だぜ」

「……少し着いてこい。貴様、住む場所も何も無いだろう」

「は?まあそうやけど…」

「ならば尚更着いてこい」


 スタスタと路地裏を出て行くヘヴィーの後ろを着いて行こうとして、違和感に気付く。

 さっきより動きが鈍いというか…体が重い。ライフルだけやからまだちゃんと歩けてるけど、マシンガンも持ってたらちょっとキツかったかもな。


「どうした。迷うぞ」

「ん、ちょっとな」


 数歩先を歩くヘヴィーに追いついて、横に並びながら訊く。


「どこ行こうとしてるん?後お前はなんなん?」


 ヘヴィーは進行方向を見ながら答える。


「この世界唯一の技術者的立ち位置で、《魔界(まかい)》に《魔界研究所(まかいけんきゅうじょ)》を設立している。そこの所長だ。今から行く所は私の家で、私のパートナーや助手とついでに顔合わせをしてもらおうと思ってな。それが終わり次第、気に食わないが大魔王のリーダーの元へ連れて行く。どうせ、貴様の面倒は私達に負わせるつもりだろうがな」


 そう言って、めんどそうに溜息を吐いた。


「人間だが、守護者と呼ばれる事が多い為、種族が人間だと思われない事がある」

「守護者って?」

「知らん。気が付いたらそう呼ばれていた。{幸福の守護者}とな」


 どの辺りが幸福の守護者なんやろか…呼ばれる理由はあるんやろうけど、見た目別に幸福って感じも守護者って感じもしねーけど。


「貴様今少し失礼な事を考えなかったか?」

「見た目別に幸福っぽくも守護者っぽくもねーな、って」

「だいぶ失礼だな」


 数秒、横目でじとっと睨み付けられたかと思えば、すぐに何事も無かったように前を向く。

 切り替えの速さは守護者っぽい……か?分かんねーわ。


「あ、そうだ」


 大事な事を思い出した、と言いたげな様子。こいつほんとに大丈夫なんか…?道忘れたとか走った時に財布落としたとかしょーもねー事じゃねーよな?いや道忘れんのはしょーもなくねーわ。むしろヤバすぎるな。ほんとどの辺が守護者なん?この世界の住民の目はビー玉かなんかか……?


「伝えておくべき事があるが、まず一つ。〔天性(ギフト)〕は貰ったか?それと〔世界補正〕は…高いな」

「ん、なんだそれ?」


 天性(ギフト)?世界補正?全然分かんねーんやけど。


 ヘヴィーは私を検分する様に見つめたかと思えば、少しだけ表情を緩ませた。


「世界補正は100……良い。天性(ギフト)も今日の夜には発現する。異世界からやって来る奴は、話にならない程弱い奴が多いが……貴様は違うな」

「説明しろ意味わかんねーわ」


 よくわかってねーのに良いとか違うとか言われても分かるか。


「2ヶ月程前の話だ。突如、この世界によく分からない何かが現れてな。それと同時に、この世界に度々人間が転移してきた。その様な奴らを捕らえ、解体と実験と思考を繰り返した結果、どうやら異世界から転移してきた奴は、この世界にある程度対応できるようになっているらしい。それが〔世界補正〕だ」

「見ただけで分かるもんなんか?」


 すると、ヘヴィーは右目からレンズを取り出す。無着色で綺麗なレンズ。イメージ、つーかほぼコンタクトみたいな感じか?


「私は技術者だ。求める物が何か分かりさえすれば、それに対応する物を作るなど造作もない」


 そう言って、再びレンズを嵌め直した。1回取りだしたレンズって目に入れていいんか?でもこいつならなんか平気そうやな…衛生観念考えて作ってそう。


天性(ギフト)については〖観測者〗から聞いた。曰く、与える者と与えない者がいて、与えない者はこの世界で生きていても仕方の無い奴だと言っていた」


 ふーん、残酷な世界やな。それとも雑魚は淘汰されて当然の世界なんか?つか観測者って誰だよ。

 ……ん、待てよ。じゃああいつらが私を狙ってきたのは、この世界で生きていけるか生きていけないかを確認してた、って事か?


「さて、質問はあるか?」


 いつの間にか、学園からは遠ざかり、山道に差し掛かっていた。奥の方に小さく見え隠れする青い屋根はこいつの家か?


「私生きてるんよな?」

「ああ。異世界転移は、基本死を伴わないからな」


 一応確認取っただけやけど、やっぱ生きてるっぽいな。にしても、異世界に来るなんて経験、普通じゃしねーよな。


「観測者って誰なん?」


 そう訊くと、ヘヴィーはほんの少しだけ苦い顔をして一言。


「神だ」

「……」


 こいつは神との交流が可能なんか。案外すげーのかも。それにしては随分と嫌そうやけど……さっき大魔王のこと「気に食わない」とか言ってたし、なんか色んなとこに因縁転がってそうやなこいつ……


「……あいつら、殺気感じなかったけどデフォか?それと、狙ってきたのは私が天性(ギフト)を貰うに値するか試してたんか?」

「中々鋭いな。そういう事だ」


 まあそうだな…と、ヘヴィーは言葉を口の中で転がしながら続けた。


「あいつらの殺気が無かったのは、殺すつもりが無かったからだな」


「……は?」


 殺すつもりが無かった?あんだけ殺意しかねー攻撃してきて?

 ……どういうことだ。


「貴様が言ったように、値する人間かどうか見極める意図は確かにある。だが、あいつら……特に雨飾からすれば、貴様はただの遊び相手だ。遊び如きに殺気を撒き散らかす奴はいない。だろう?」

「……」


 確かにその通り。遊びに本気になる奴なんて居ないし、そういう奴は大体大人気ないって言われる。主に黒乃とかな。

 あいつらは遊びだったのか。まー本気っぽさは無かったけど…


 気に食わねーな……


「次なんやけど、そのよく分からない何か、について教えてくんね?」


 もしかしたら私がここに来たのと何かしら関係があるかもやし、情報が多いに越したことはない。


「色々種類がいるんだが、1番多いのは人間に羽が生えた様なやつだな。発見次第即殺害処分しろ、と」


 ん、なんか想像してたのと違うな……人間を素体にしたって別に強くもなんともねーはずだし……

 いや違うな。これ私ら含め転移してきた奴を素体にしたいんか?外から人入れる方が怪しまれなくて済むとか……


「悪いけど知り合いはいなさそうやわ。つかそんなキモいの知り合いになりたくねーしな」

「そうか」


 特にヘヴィーは気にすることもなく、家の前で立ち止まった。


「…それとは別件だが」


 いつの間にか巨大な鎌を左手に握っている。何となく、嫌な予感がして、少し気付かれない様に下がる。


「動きにくい、と思わなかったか?」

「は?なんでお前がそれ知って……」


 説明もなく、そいつは何の躊躇いもなく鎌を私に向けて振るう。咄嗟に受け止めようと反射で動くも、鈍くなった体じゃ庇いきれない。


「私の身体能力はそこまで高くない。勝手に先に進まれ、迷われては困るから、少し貴様の身体能力を改ざんさせてもらっていた」

「……は?」


 鎌は確かに私の体を斬ったはずなのに、痛くもなんともない。

 それどころか、急にライフルが軽くなった。


「入れ。今のように治すこともできるが、体は休めた方がいい。それと私の体力が持たない」


 ドアを開けながらヘヴィーが言う。多分後半が本音やろし、別にまだまだ大丈夫やけど、ヘヴィーのパートナーと助手がシンプルに誰か気になる。入れてくれるって言うなら入れてもらうか。

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