相棒
研究所の方だけじゃなく、別方向からも黒い奴らがにじり寄ってくる。正直ちょっとホラー体験。なんか空も暗いし。
けど、私は1人じゃない。
隣には、安心して背中を任せられる存在がいる。
「なー穂、人から聞いた話なんやけど、命預けられる奴は相棒って言うらしいぜ」
「それ、もっと仲良い奴に言う言葉じゃねぇの?」
「あっれーもしかして私の隣に立つ自信ねーのか?」
横目で穂の表情を窺えば、視線に気付いたのか不敵な笑みを覗かせる。
自己肯定感低いから不安そうにしてるかと思ったけど、あん時の言葉、効いたっぽいな。
「んな訳。──行くぞ星辰」
「お前ならそう言ってくれると思ってたぜ」
まずは何が有効打になるか探る必要がある。
近くの奴をバズーカを持ってる手とは反対の手で掴んで、まずは蹴りを叩き込んだ。
足裏に伝わる感覚が、硬い。物理攻撃は悪手か。
手を放して炎をぶつけ、一度距離を取る。ワンパンとはいかなかったけど、間違いなく蹴るよりは効いてる。
ただこれだと、私の魔力が足りない。
「少なくとも体術はやめた方が良い。マジで効いてなさそう」
「そうか……なら」
穂が指を組んで合わせると、光線束が前へ直線状に飛んでいく。
「これならどうだ?」
ヘヴィーが話してた穂の能力の一端、〖光子爆火〗か。
……正直食らいたくねー威力だな。
地面には光線が飛んだ跡が残ってるし、射線上にいた奴は全員消えてなくなった。
こいつ、やっぱ私よりつえーだろ。
でも今の一撃で、ヘイトが穂の方に向いた。私は完全にフリーで動く事を許されてる。
問題は、残り少ない魔力量でどうダメージを出すか。
私のデフォルト能力が自己強化に偏ってるのがちょい厳しいか?
一応何発か炎は出せるけど確殺じゃない。
……そもそも、このキル判定ってどうなってんだ?
最後にとどめを刺したのが私ならOK?それとも、間接的にでも私が関われば誰が殺そうが関係ない?もしくは、最初から最後まで私が相手しないとダメか?
普通に考えれば1番目っぽいよな。
なんか使える能力……雷の方があいつには効くか?でも乱用できねーし……
置換上書……光以外も有効打にして上書き?
その方が良いか。
現状、穂が1人で応戦してる。ちょくちょく撃つのをみて分かったけど、あの技、直線的にしか飛ばない。
かと言って一列に行儀よく並んでくれる訳ねーし……
そか。
私が穂と同じ事出来ればいいんか。
「穂、さっきのやつって光の粒操ってるんよな?」
「そ、つーかちょっとこっち手伝ってくれ!」
「OKOK、んじゃ合わせろ」
「合わせろって……さっきの?」
「やればわかる」
バズーカ内部の魔力を【置換上書】で光の波に置き換える。
光は、波と粒で出来てる。穂が粒子を操って撃つなら、私は波に変えて撃つ。
それなら、光としての効果が最大限発揮されるはず。
「それじゃあ……ん?」
「ん?ってなんだよ」
穂の隣に立った時、宙に浮かぶ無駄に綺麗な丸いオブジェ?みたいなやつがある事に気付いた。なんだあれ。
今までは、あいつらに気取られてて全然気付かなかった。
「なあ穂、なんかある」
「なんかってどれだよ?」
「あの黒い丸いやつ」
「黒い丸い……あ、ほんとだ。ぜんっぜん気付かなかった」
指先でそれを指すと、穂も今の今まで見てなかったらしく、驚きの声を上げながら敵を光で消し飛ばした。
もしかしてあれのせいか?いや絶対そうだな……
「穂、あれ壊した方が良くね?」
「確かに。ちょっと撃ってみるか」
球体に〖光子爆火〗が一直線に飛ぶ。
その瞬間、球体の近くにいた奴らが今までに見た事ない速度で庇いに行った。……いや、守りに行った?
光は直撃したものの、黒い奴らが守ったせいで球体自体は無傷。穂も、困惑した様な声を漏らす。
「マジか……どうしよ」
「もう火力ゴリ押しするしか」
「……そうだな」
改めて、バズーカを構える。黒い奴らは球体を攻撃される事を警戒してるせいか、周辺から動き出さない。
叩くなら今が1番。
「私は周りの奴消してからにするから、お前は最初からあれだけ狙ってくれ」
「ん、うん?うん……」
多分理解してくれた穂は、球体に向けて手を翳した。
発動前の予兆を感じ取ったのか、大事な物を守る為に1点に固まろうとする。
それより前に、私はバズーカの先を向けた。
銃口の前に、淡い黄色の魔法陣が四重になって重なる。
バチバチと、先端から強烈な光が弾けて止まらない。
初めての現象に、動きと思考が固まる。
何がどうしてこうなってるのか、私には理解出来なかった。
「なんだ……これ」
「…………もしかして……」
「なんか知ってるんか?」
「ああ……多分、ヘヴィーの……いや、話は後だ。まずはあれを何とかするぞ」
「……OK」
引き金に指をかけて、光を放つ。
私が想像してたよりもずっと広く、威力の高いそれが、周囲の塊を次から次へと薙ぎ払う。
空いた隙間から中心部に、別の光が突き刺さった。
光の波と粒が、衝突し、融合し、より強く輝く。
そして、光で満たされた頃──
耐えきれなくなったのか、捌ききれなくなったのか。
とうとう、破裂音を立てて爆発四散する。それと同時に、僅かに残っていた周りで蠢くものや、遅れてここまで辿り着いたそれらも煙を上げて消えていく。
曇天を割って日が少しづつ差し込まれる様を見て、私はバズーカを下ろした。
ふと本体を見ると、奇妙な模様が描かれているのを見つけて、少し首を傾げた。
上下左右対称の花のような模様が、幾つも連なって全面に浮き出てる。白くて細い線で。なんだこれ。
なんてバズーカの確認をしてたら、今度は左腹の辺りが湿っぽい。
何事かと空いてる手で触って確かめる。
血、だった。
手にはべったりと赤い液体がついてる。なんで?私さっきからなんで?しか言ってねーけどマジで何?
「やったなあいぼ……ちょっと待ってお前どこ怪我した?」
「いや……怪我じゃないんよ」
「……じゃあなんで?」
「わかんねーんよ」
「わ、わかんねぇ???」
嬉しそうに笑った穂が、私の手を見た瞬間表情を強ばらせて手を握る。
とりあえず、どこから血が出たのかの話はしてみたけど、攻撃受けた記憶少しもない。つーか私なんて見向きもされてなかったし。
「なんだ貴様ら、外にいたのか」
するとタイミング良く、ヘヴィーの声が聞こえてきた。私達はそっちを向く。なんせこいつは天才だし、このよくわかんねー状態も何とかしてくれるはず。
そんな期待を込めた。
「…………あの、ヘヴィーさん?」
「お前らはお前らでなにしてんの……?」
死んだ目で人に背負われてる奴の方が、重症やと思うのは私だけなんやろか。




