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戦闘狂の異世界記録  作者: 茜音
異世界探索記-日常-
34/76

開放の代償

 勢い付けたまま、ヘヴィーは近くのそれに飛び蹴りを喰らわせる。そして、間髪入れず武器に『切断』を付け、振り回した。

 その一撃を戦闘開始の合図として、その物体も明確な目的を持って移動を始める。

 その先頭を動く1つが、360度からのナイフによって刺し貫かれ、煙を上げて消えた。


「……多いな」

「ああ。だが……」


 鎌を片手持ちにし、空いた左手の平をそれらに向ける。

 瞬く間に、魔力とは異なる性質の力が集まっていく。

 中心部に生成された、エネルギーが圧縮され、肥大化した球体を握り潰した。

 それは、光の粒となり千々に飛散し、その全てが謎の存在へと吸い込まれる。

 そして、次の瞬間には粒子を取り入れたそれらは、次々と黒煙を上げて消滅する。


 魔界にいると魔力が吸われる。よって、能力や魔法を使うのは望ましい択ではない。

 しかし、波動(エネルギー)ならば話は別。


 エネルギー弾を神技(アビリティ)によって創造し、その際に『暴走』『肥大』『狂乱』の効果を付属する。それを多方面に放ち、相手のエネルギーを媒体として、エネルギーを肥大、暴走させた後、制御を乱す事で、自身のエネルギーに耐え切れなくなった体を内側から崩壊させる。


 アルター・マジック I(ファーストスペル)〖Enemy Kill〗


 魔力を使わず、魔法の様に攻撃を行う。

 波動(エネルギー)を操る事が可能だからこそ成せる技。


「これなら速いだろう?」

「出来るのお前だけなんだよな」


 自慢げなヘヴィーの言葉を受け流して、ヴァリネッタはナイフを構える。

 片付けには、もう少しかかりそうだと零しながら、また一体、それに刃を突き立てた。


─────


「なあ穂」

「んぁ?」


 棚にしまってあったマシュマロ(消費期限不明)とガスバーナー、使われてない竹串。

 黒い机の上で、私と穂は焼きマシュマロを食べながら雑談してた。


 部屋を漁ってたら棚からマシュマロ、引き出しからは竹串、テーブルにマッチとガスバーナーと上に置く網があったんやから、当然やるよなあ!

 とはいえ、私よくガスバーナーの使い方分かんないから全部穂にやってもらった。中1って私まだ精神病院だったし、その頃は知識なんかよりフィジカルに重点置いてたからな。一応大学までの知識は最低限詰め込んだけど、実技は一切してこなかったし。

 火は青い方が良いとかあるらしいけど、2つ回せる奴があってよくわかんねーから青っぽい炎でずっとマシュマロ焼いてる。美味しい。


 まあマシュマロの話は置いといて、前々から気になってた事を今日こそ聞いてみる。丁度目の前には穂しかいねーし、邪魔される事はない。


「お前の上限解放って何が代償になってる?」


 穂の串から、マシュマロが抜けて落ちる。

 床に叩き付けられたそれを、穂は丁重に足で蹴って退かした。


「……情報って、どこまで知ってる?」

「あんまり。上限解放の方が覚醒より倍率高くて、魔力を使わないって事。過去の英雄が使えた事。使える奴がほぼいない事。……位か」

「意外と知ってるな」


 新しいマシュマロを串に刺して、炙りながら穂は台本を読む様に、なんとも思っていなさそうに話し始めた。


「上限解放については、俺もよく分からない。ただ、覚醒は限界まで引き上げるもので、上限解放は"限界を超えた"力が出せる。それが倍率が高い理由。能力に干渉する事も出来る。前の時間遡行に強引に割り込んだ時と同じ」


 そこまで話して、充分に熱されたマシュマロを口に入れる。

 熱かったのか、マシュマロを入れたままはふはふと息を吐いて、口を閉じる。


「熱いと思うなら先に息吹きかけた方が良かったんじゃねーか?」

「むぐ、むぐぐぐぐ」

「後にしろ」


 食べ物を口に入れたまま喋ろうとする穂を窘める。数秒後、飲み込んだ穂は改めて口を開けた。


「また落としそうだったから」

「あさっきの事気にしてんのか」

「そりゃまあ……ヘヴィーの研究所だし」


 足元から少し離したマシュマロの残骸をチラッと見て、露骨に視線を逸らす。


「で、代償は何か、だよな?」

「そそ、波動(エネルギー)じゃねーのか?」

「実は違う」


 最有力候補を潰されて、私は少しだけ考える。

 魔力?でも穂は持ってないって言ってた。あんだけ泣いてたんやし、嘘だとは思えない。

 体力とか?けどHPなんて概念ねーよな、この世界。じゃあスタミナとか……耐久力?でもそんな疲れてそうには見えなかったし……

 浮かんだ案を全部却下して、他に代わりになりそうなものを考える。


 限界を超える力の代償が、そんな軽いもんな訳ない。つか能力を否定するんやし、重い制約でもおかしくない。それくらいじゃねーと釣り合わないはず。

 穂が他に使えるものって言ったら後は命くらいしか……



 ……()()()()()()()()



 …………まさか。


「上限解放の代償って……!」


 私の叫びに、穂は何の表情も無く答えを提示した。


「上限解放の代償は、()()寿()()だ」


「……なんで」


 その時、研究所のドアの方向からデカい音がした。思わず音の出所を振り返る。

 磨りガラス越しで、よく見えねー、けど……あれは……

 ……なんか黒い奴がめちゃくちゃ押しかけてきてる?え、ホラーじゃねーか。

 穂も窓の方を見て、小さく悲鳴をあげた。


「おう……これどうする?」

「どうするって……」


 話し合ってる間にも、ガラスは激しく叩かれる。気のせいじゃなければ数も増えてるような……


「ガラス破られたら困るし応戦するしかねーだろ」

「ああ……そうなるか」


 足音を殺しながら、ライフルを拡大して構える。魔力フル装填で、開けた瞬間これをぶっ放す作戦。

 その後は、出来るだけここから離れて戦う。


「……開けるからな」

「……ああ」


 穂が扉に手をかける。バズーカは、穂に当たらないぎりぎりのラインで構えて、いつでも引き金が引ける様にセット。


「……開けるぞ」


 言葉と共に扉を押し開く。同時に、入口目掛けて魔力を解き放った。

 勢いにぶっ飛ばされる黒い物体。


 こいつらを殺せば、結構な量のコストが回収出来るはず。

 穂に寿命を削らせない様に、私はもっと強くならねーと。


 穂の手を掴み、空いた隙間から外に飛び出す。建物内の魔力減少が微々たるものだったからか、魔力が削られていく感覚をありありと感じて小さく舌打ちを零した。

 MPが増強されてるとはいえ、奪った能力はそう簡単には乱発出来ない。


 注げるだけ、バズーカに魔力を注ぎ込む。これで、私の体に残る魔力は3分の1以下、しかも現在進行形で削られる。

 けどそれでいい。

 私本体が空になっても、まだバズーカの方が残ってる。

 流石に無機物から魔力が吸い出される事はない、と思いたい。つーかそれに賭けて魔力入れたんやし、そうじゃねーと困る。


 後は、限られた手札でどこまでやれるか。


 それだけだ。

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