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戦闘狂の異世界記録  作者: 茜音
異世界探索記-日常-
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波動奏者

 私は、暫く無言でヘヴィーの言葉を理解しようとした。

 そこから出てきた感想は、


「お前……英語話せたんか」

「そこではないだろう今の」


 雰囲気ぶち壊しの言葉だった。

 いやだって思った事が口から出てきちまったんよ、異国の言葉があんなにすらすら話せるとは思ってなくてつい、な。


「今のは本心やから許してくんね?……ちゃんとした事言っとくと、今のがお前の自己紹介なのは理解したわ。ところでこの荷物は?」

「ああ、それは今必要ないからデスクの上にでも置いてくれ」

「ん」


 言われた通り、デスクの空きスペースに包みを置く。

 結局これが何かは教えてもらえなかったな。


「で、何すりゃいい?」


 私の問いかけに、ヘヴィーは少しだけ考える素振りを見せて、それから緩く首を振った。


「特にないな。荷物を持って欲しかっただけだ。暇だろうし、研究所内を見て回っても構わないが、絶対に壊すなよ。私は別件があるからな。……行くぞ、ヴァリネッタ」

「うい」


 何かよくわかんねー器具?機械?を片手に、ヴァリネッタを伴って外に出て行った。外は魔力吸われるんじゃなかったか?それとも、過去の英雄ならそれくらいなんてことないんやろか。

 まあ、どっちでもいいか。所長直々に研究所の探索が許されたんやし、色々見て回るとする。


「なーみのりぃ、折角やし見て回ろうぜ」

「あー、そうするか。俺もまだ詳しく見てないからな。何か面白いもの探しに行こうぜ、星辰」


 みのり……穂も手荷物を床に降ろしながらそう答えた。


─────


 目的の場所に向かいながら、ヘヴィーは脳内で思考を巡らせる。

 聞いていたのだ。先の、影星とヴァリネッタの会話の内容、「転移魔法を教えてもらって扱えるようになった」と。

 ヴァリネッタは、宇宙に飛ばされたようだが、ヘヴィーの中では既に一つの答えが浮かび上がりつつあった。そして、「魔力が減っていなかった気がする」という感覚が決定打となり確信した。


 影星は、波動奏者(エナジーコントロール)に目覚めた、という事実を。


 心当たりはある。魔力が変換されていない状態での戦闘と、五体満足で撤退した事(撤退に関しては、ヘヴィーが半強制的に連れ出したが)、自身の鎌につけられた付属効果を受けた事、そして、あくまで噂程度ではあるが、図書室の転移魔法陣を利用した事も。能力の数も多いし、天性(ギフト)だって類を見ない形の物。

 思い返せば、この世界に適応可能な準備をしていなかったのにも関わらず、正常でいられる事自体が規格外で常識外の存在。


 紅葉に目を付けられ……基、気に入られる訳だ。


「お前、とんでもない奴と知り合いになったな」

「悪い奴ではない」

「そりゃわかるけど」


 波動奏者(エナジーコントロール)には、ある特徴が発現する。

 それが<神技(アビリティ)>と呼ばれるものだ。


 効果は様々あり、1人として同じ神技(アビリティ)を保有する事は無い。最も、そもそもの母数は余りにも少なく、自分達のみである為断定は出来ないが。


 ヘヴィーは<創造>。主に物質を思うがままに創る力で、武器の大鎌も元は魔石回収用だった筈が、神技(アビリティ)が影響を及ぼし、意味不明にも結果改竄効果付きになってしまったものだ。流石に想定していなかった事である。

 能力の創造も時間をかければ可能ではあるが、実戦向きでは無い。


 ヴァリネッタは<破壊>。主に物質を破壊する力。本人の武器はナイフではあるが、それは波動(エネルギー)を具現化し、それに付随する形で『能力破壊』の効果が備わった、言わば専用武器。因みに、能力破壊と謳っているが、実際は能力によって生み出されたものも破壊対象内になる。


 みのりは<適応>。様々な事象に適応する力で、例え水中に突き落とされようが、逆に銀河まで放り投げられようが、その場に適応する事で生存が可能になるという、2人とは異なる性質を有している。

 能力の代償(デメリット)のせいか、魔力は一向に与えられていないが、これのおかげで慣れた魔力を持つ者が展開した転移魔法陣のみ、使用可能となる。


 そして影星は……


「考えられる効果としては、再現かコピーか、ってとこか」

「どちらにしても、本人は気付いていない様だし、まだ能力に対しては使えないだろうな」

「なんならまだ不完全なんじゃねえの?」


 神技(アビリティ)は、極めれば能力と同じ程の効果を発揮出来るが、未熟な内はそうもいかない。

 ヘヴィーでさえ、能力の創造には時間がかかるのだから、そう簡単にやってもらっては困るというのが本音だが。



 そういくつかの雑談をしていると、ヘヴィーの右手に持つ機械が甲高い音を立てた。

 魔力異常を確認した、というサインに、2人は素早く周囲を見渡す。

 今回の仕事は、半年に1度の検査で、研究所周辺に異常が無いかを確認する事。

 みのりと影星を連れて行っても良かったのだが、広がるは焦土が大半以上であり、残念ながら楽しめるような場所は無い。

 あまり大人数で行って、声で音が掻き消されてしまっても嫌だから、という理由もある。


「……なんだ?」

「おいヘヴィー……空が……」

「空?……何が起きている」


 いつの間にか上空へと視線を移したヴァリネッタが、何かを見つけた様にヘヴィーの肩を引き寄せる。その言葉に、遅れて天を見上げたヘヴィーは、困惑のあまり疑問が口から飛び出した。


 蒼天は、瞬く間に曇り、陰に覆い尽くされていく。

 曇天から、まるで雨のように降り注ぐは、


 闇のように暗く、黒く、絶えず形を変化させながら地を徘徊し始める、不定形の蠢く何か。


 即座にヘヴィーは大鎌を、ヴァリネッタはナイフを具現化し手に取ると、それらに向かって駆け出した。

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