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戦闘狂の異世界記録  作者: 茜音
異世界探索記-日常-
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魔界研究所

 もう少し観戦するらしい夜鴉から離れて、ヘヴィーの家に転移する。

 中に行きたかったのに家の外に転移した。まだ練度足りねーか、仕方ない。


「ハローヘヴィー、元気か?」

「ああ。悪かったな、心配させて」


 ドアを開けると、いつもとは違って白衣を着たヘヴィーが、家の中を忙しく動き回りながら問いに答えてくれた。

 床に、椅子に、荷物が色々置いてあるような。なんこれ、今から旅行かなんか行くんか?


「……どっか行くん?」

「少し研究所の方にな」

「へー……」


 研究所……ってそういや魔界にあるとか言ってたよな。

 よし、断られるとは思うけど、連れてってもらうとするか。


「私も行くわ」

「別に構わん」

「……マジ?」

「ああ。ちょうど荷物持ちが足りなくてな」


 断られると思ったのに、全然断られなかった。それどころか即答だし、多分私が行きたいって言わなくても荷物持ちを強制させられてた可能性あるな。


 あ、そうだ。折角やしこの機会に言っとこ。


「なあヘヴィー」

「なんだ」


 呼びかければ、手元は荷物を用意しながら、顔だけこっちに向ける。

 優しいこいつらしー話の聞き方やな。


「私誰かに制限されて働くのは嫌いやけど、恩人にはちゃんと報いるぜ」

「……私が貴様の恩人だと?」

「ん、だってそうやろ?」


 ほら、とミニサイズのバズーカを見せると、表情が分かりやすく歪んだ。余程バレたくない事だったみてーやな。でもごめん、みのりにそれ聞いちまったんだわ。


「誰にも頼まれてねーのに作ってくれたんやな。私が銃火器使う事も、武器を盾にする事も、最初戦った時見てたから知ってたんやろ?だから合わせてくれたんよな。わざわざ攻撃弾くような加工までするくらいやし?」

「ぐ……」


 ヘヴィーが唸る。痛い所を突かれた様で、押し黙って顔を背けた。いつの間にか並行作業してた手は止まってるし、なんならちょい震えてるし。

 流石にやりすぎたか?

 ヴァリネッタとみのりも温かいものを見るような目で見てるし。


「まーだから、お前からの頼みなら基本聞くぜってだけだ」

「……そうか」


 小さい声で一言だけそう返され、足元にしっかりと結ばれた荷物が飛んでくる。

 何が入ってんのか、重量があるそれを私は持ち上げた。


「行くぞ。外野だからと笑うな貴様!」


 ヘヴィーによるチョップが、ヴァリネッタの頭部に直撃する。表情を見れば、優しげな笑顔を浮かべていた。


「いや、お前も丸くなったよなって」

「過去の私が刺々しかったとでも?」

「実際そうだろ」

「そんな事はない。本当にない」


 パートナー同士の軽い言い合いを、楽しそうに眺めるみのり。

 私の視線に気付いたのか、邪魔しないように私の元へ歩いてきて、耳元で囁く。


「ヘヴィー、私の前だと完璧な天才、みたいな顔しかしないから、知れて嬉しいな」

「それで言うとヴァリネッタもそうじゃねーのか?」

「そうといえばそうだね。あんまり笑わないし」

「ふーん……」


 この2人を見てると、なんか黒乃と無色を思い出す。タイプはそんな似てねーけど、でもなんか。

 こういう軽い応酬を、楽しんでる様に見えるのが、それを想起させる、のか?

 感情に乏しいオーバーリアクションの廃人と、感情は豊かだけど表情に出す方法を知らない裏路地育ち。

 あいつらの漫才みたいな掛け合いが、こんな所で思い出されるなんて予想しなかった。


「さっさと行くぞ!」

「はーいっ」

「全く……」


 みのりが荷物を抱え込んだのを確認して、ヘヴィーは足元に魔法陣を展開した。


「なあ、これなんだ?」

「集団転移用の大型魔法陣だ」

「…………」


 嫌な予感。

 図書館とかと同じ気分になるんか……?

 少しは慣れたけど。でも慣れても不快なもんは不快な訳で。


「転移」


 そんな易しいもんじゃなかった。

 ヘヴィーが宣言すると同時に、視界がぐにゃっと歪んで、エレベーターが一気に下降する時と同じ感覚が襲ってくる。

 足下が覚束ないわ視線は定まらないわで散々だが?


「着いたぞ。ここが魔界だ」

「ちょ、今気持ち悪いから……」

「研究所はこの先だ」

「……」


 聞き入れてもらえねーのはさっきの事根に持ってるからかもな……

 休ませてもらえる訳もなく、私は謎の包みを持ちながら、若干平衡感覚の狂った頭でヘヴィーに着いてく。


 ヴァリネッタが説明してくれた話によれば、魔界はこの場にいる奴らの魔力を吸ってるらしい。だから魔界は大気中の魔力が濃くて多いんだとか。その副産物として、魔力回復が出来る『魔石』って奴が大量にある、らしい。一応食えるけど、不味いからおすすめはしない。硬いし。

 みのりは魔力を持ってないから、魔界での影響を受けてないんだってさ。

 魔力が一気に削られたり、魔力がない状態で能力とか使うと命に関わるけど、じわじわ削られるくらいなら身体被害はそこまでない、とも教えてくれた。


「そういやさ、前に転移魔法教えてくれって言ったやん?」

「言ってたな。それがどうした?俺は頼まれても教えねぇよ?」

「いや使えるようになった」

「……?悪い、もう1回」

「天萊に教えてもらったら使えるようになった」

「…………??」


 一応ヴァリネッタには伝えとこうと思って伝えたら、ぽかんとした顔で銀河を背負った。ネットミームのコラみたいな顔で私を見てくるから、堪えきれずにちょっと吹き出して余計おもろくなった。


「後なんかその時魔力減ってなかった気がする」

「?????」


 いよいよ思考停止したヴァリネッタは、研究所に着くまでずっと1人だけ宇宙にいて、なんの反応も返さない。

 なんかちょっと可哀想だった。


「着いたぞ」


 漸くヴァリネッタが地上に到達した頃、ヘヴィーが1つの建物の前で立ち止まる。

 白い壁に磨りガラスが嵌った長方形。縦長ではなく、平べったい形を取ったそれは、1階建てである事が想像出来る。

 鉄扉の横の機械に手を翳すと、無機質な音の後に解錠音が鳴った。

 ヘヴィーは、機械から手を離すと扉を押し開ける。


 中は薬品棚や理科室の黒いテーブル、専用のデスクと椅子、ケーブルも何も繋がってない空中に浮いたモニター、など。廊下沿いに扉があるから、ここは普段作業するような部屋でもっと特殊な事は他の部屋でやるのかもな。


「……さて」


 唐突に、白衣を靡かせて、私の方を見る。


「改めまして、ようこそ(welcome to)魔界(demon)研究(research)所へ(institute)!私が所長のヘヴィー・プラネットホームだ」


 コツ、と革靴の音を響かせて、眼前の天才は胸に手を当てた。

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