敵対組織
寮の部屋に帰ると、既に先客がいた。
いやここ私の部屋なんやけど。
「遅かったね、影星」
「まずベッドから降りろ」
「キミ、外に出た服でベッドに座られるの嫌なタイプ?大丈夫だよ、洗ったから」
「そうじゃねーよ、確かに気になるけどな」
人様のベッドの上に座る紅葉。礼儀どうなってんだおい。許可してねーぞ私。しかも不法侵入にあたるんじゃねーのか?あーでもこの世界の法、目の前のこいつだわ。
「……つかお前どっから入ってきた?」
「普通に転移かな」
「そか……降りろ」
「綺麗にしたから大丈夫だよ」
「…………もういいわ」
諦めて私もベッドに座る。この部屋、机はあるのに椅子がねーんよな。ガバガバ部屋過ぎるやろこれ。それとも家具は自分で調達してこいって?だとしても椅子は置いてくれ。
「……で、ここに来た理由は?」
私の問いに、漸く本題を思い出したのか(覚えてたけど聞かれなかったから、答えなかったとかもあるかもな)、紅葉は話し始めた。
「ちょっと色々あってね。キミ、邪王組織と裏世界って知ってる?」
聞いた事はない気がするけど、一応記憶を遡ってみる。
邪王?裏世界?
……聞いた事ねーな。
「知らないけど、お前らの因縁の相手か?」
「まあ……大体そんな感じ」
「それで?色々って?」
「……」
そこで、何故か紅葉は黙る。相変わらずの無表情で何考えてるかわかんねーけど、沈黙の長さ的に何かを真剣に考えてんのは伝わってきた。
「……もし、なんだけど」
暫くして、話す事を整理し終わったのか、口を開いた紅葉の一言目は、まさかのifの話。
呆気に取られるってこういう事か、って冷静な頭でちょっとだけ思った。
「この世界に何かあったら、キミはどうする?」
「……どうする?どうするって?」
予想しない言葉に、少し反応が遅れて聞き返す。
質問の意図が上手く掴めなかったってのもある。……いや、脳の処理が追いつかなかった、の方が正確か?
「言い方を変えよう。キミはこの世界の為に、戦ってくれる?」
「あーね、全然いいぜ」
「……本当に?」
「異世界の奴らともっと戦いてーからな」
砕いた質問に、今度は即答する。
そも私がこの世界に留まる事にしたのは、好きなだけ殺せるからやし、強い奴と戦いたいのは本心やし。
だから、言われなくても自分で片足所か全身突っ込みに行く。
私はそういう奴やからな。
まあ、理由はそれだけじゃないんやけど。
友達とか恩人がいる世界やし守りてーなってのも1つある。
「キミらしいね。じゃあ、そんなキミに1つだけ話……というか、情報共有をさせてもらうね」
「ん、なんだ?」
「さっき話した裏世界。そこともしかしたら、戦う事になるかもしれない」
「……さっき話したも何も、まだ詳しい話知らねーんだけど」
「……そうだっけ」
てっきり話したと思っていた紅葉と、そんな話を全く聞いてない私で齟齬が起きてる。ワード出したから話した気になってるんやろか、しっかりしてくれ。
「裏世界っていうのは、この世界の裏側にある世界の事で、表世界が崩壊すると裏世界が崩壊する。逆も然り。分かった?」
「……まあ」
「ありがとう。それで、そこと戦うかもしれないけれど、その時はキミの力を借りてもいい?」
「OK任せろ、いつ行くんだ?」
「まだ終わってないよボクの話」
ベッドから立ち上がる私の服の袖を異常な力で引いて戻す。袖がちぎれたかと思う程の力。
逆らえずに、元の場所に座り直した。ちょっと首元締まって苦しかったのは置いといて、とりあえず話の続きを聞く事にする。
「今は行けないんだ。表世界と裏世界を行き来するには、ワープホールが必要だから」
「開けないんか?」
「そもそも、まだ戦うかは確定していないんだよ」
私の服の袖から手を離して、紅葉はドアの方へ歩き出す。話は終わりとでも言いたげな雰囲気に、私も見送りかけて慌てて引き止めた。
「邪王は!?」
「ああ」
忘れてた、とでも言うように、ドアに手をかけて言った。
「そっちはボクら大魔王の敵だから気にしなくていいよ」
軽い調子で言い残して、紅葉は部屋の外へ姿を消した。
自分の言いたい事だけ言って居なくなったぞ。ベッドもぐちゃぐちゃになってるし。……これは私が寝てそのままだったからか。
つかこれ、もしかして私結構大規模な戦闘に巻き込まれる可能性?おもろそうではあるけどめんどくせーことにもなりそうやな。
ま、その時が来るまで自由にさせてもらうとするか。
する事ねーし、多分早い時間やけど今日は寝て、明日ヘヴィーの家に行ってモジュールとチップ取りに行く。
その後はまあ、なんか……あるだろ。
外に出たままの服でベッドに潜りたくねーけど、寝巻きなんて用意してねーし洗浄魔法も知らねーからこのままやけどしゃーなし。
布団を被って目を閉じる。
前日の疲れを取り切れてなかったのか、意外にもすっと意識が落ちていった。




