付き纏う代償
私も天萊も、アリアも何も言わない。無言が室内を支配する中、それを破ったのは
「……何故ですか?」
天萊だった。
「上限解放を扱える人物が殆どおらず……また……発現しても、力に飲まれることが多く……サンプルが、中々……」
「なるほど。アリアは、上限解放とは何だと思っているのですか?」
「僕は……覚醒化の……突然変異の様な力だと……」
「……覚醒化ってなんだ?」
思わず口を挟む。
空気読めないのは重々承知やけど、元を知らないんじゃ話にならない。
上限解放のデータがないなら、穂で実験すれば……みたいな考えは過ぎったけど、それであいつを危険に晒す訳にはいかない。
なら、少しでも知見を得て調べた方が安全だし、最悪本人に聞けばいいやろ。
「覚醒化には2種類あり……1つは通常の『覚醒』……能力効果、身体能力、魔力量が……飛躍的に向上し……一時的に、新たな能力を得る可能性があります……。もう1つは『変異覚醒』……能力効果、身体能力、魔力量の飛躍的向上……それから、能力の完全な変質……です……」
「美麗は変異覚醒の持ち主です。夜鴉は……少し特殊ですが、現在は覚醒ですね」
「……なんで夜鴉は特殊なのかは置いといて、上限解放の効果とかはほんとに分からないんか?」
私の言葉に、首を縦に振りかけたアリアは、思い出した様に動きを止める。
それから、立ち上がって後ろのロッカーを開けた。
その中から、やけに分厚いファイルを取り出すと、そこから紙を1枚取り出してテーブルの上に置いた。例によって私は読めないから、天萊に代わりに読んでもらう。
「これは……紅葉が話した事ですか?」
「ああ……はい……」
要約すると、上限解放は覚醒よりも向上倍率が高い。が、覚醒とは違い、魔力を感じなかった。
って書いてあるから、魔力じゃないもので……
……魔力じゃないもの?
「これ、もしかして波動を使ってるとか?んでエネルギー使い果たしたから死んだとかあるか?」
私の言葉に、アリアは肯定の意を示し、紙を回収した。
「僕も……そう思います……」
これ以上の収穫は得られず、私達は研究室を後にする。
寮に帰るまでの道中、転移魔法をどうするか聞かれたけど、それより真偽を確かめたい。本人に聞くのが1番早いから、ヘヴィーの家に行く、って事を話した。
そしたら、転移魔法覚えてけばすぐ行ってすぐ戻れるって言うから教えてもらう事にした。
「読めないなら発音にしましょう。私の言葉を間違えずに発音してください」
「OK」
それから、転移魔法に必要な言葉の発音の練習。1文字1文字言ってから、次に繋げて言う。初めはゆっくり、慣れてきたら早口でも可。
ヴァリネッタの言った通りだ。
但し、ちょっとだけ私の場合は違った、っぽい。
「覚えるの、凄く早いですね。3回くらいでちゃんと通して言える様になっていますよ」
「な、私も驚いてるわ」
初めて聞いたのにこんな簡単に習得出来るとは思わなかった。まー無詠唱でって訳にはそう簡単にいかないやろけど。
「そうしたら、行きたい場所を思い浮かべながら言ってください」
「ヘヴィーの家でいいか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「分かった、さんきゅ天萊」
「いえ、それでは」
そう言って、天萊は一足先に無詠唱で転移する。寮の自室とか、その辺か?
天来を見送ってから、脳内にヘヴィーの家の周辺を思い浮かべて教えられた通りに詠唱する。
景色がふっ、と変わった。
ヘヴィーの家、の近くに無事転移出来たっぽい。
家まで行って扉を叩くと、中からはヴァリネッタが出てきた。
「来たけどまだ2人とも帰ってきてねー感じか?」
「それが……帰ってきてはいるんだけどな」
歯切れ悪く言うヴァリネッタ。
家の中に入るように促されて上がる。
「え、ヘヴィー……?お前……どうした?」
「………………影星か」
青白い顔で、椅子にぐったりと腰掛けているヘヴィーがいた。




