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戦闘狂の異世界記録  作者: 茜音
異世界探索記-日常-
25/76

森奥の書庫

 恐々としながら本を戻す。そか、魔力量も上がってるんか、今の私……え、いつか内側から弾け飛んだりとかしねーよな?その死に方はマジ望んでない。意図してない自滅はダサすぎる。


 カプセルを指で突っつきながら、ヴァリネッタは私に訊く。


「で、1000秒かかるんだったよな」

「そそ、──あ、待ってそうだ」


 忘れてた。いやだって思ったより火力とか諸々がえぐかったから、ついそっちに気が向いたのはしゃーなくね?


「洗浄魔法?と転移魔法?ってやつ教えてくれ」

「はあ……?」


 最初、何を言われてるのか分からないと言いたげな表情は、理解したのか、左右異なる赤と青の瞳を見開いた。


「は!?いやいやいやいや無理無理無理無理」

「え、なんで無理なん?」

「教えるのムズイからだよ!魔法関係は!」


 なるほど。

 魔力の放出とか、コントロールとかで何とかなる感じじゃねーのか。

 うーん……?


「とりあえず何でムズイのか教えろ、話はそれからだ」

「お前教えてもらう立場なのに態度デカ」

「あ?」

「怖……説明するから落ち着け」


 ヴァリネッタは、私を落ち着かせると(別にキレてはなかったけどな)、魔法関係がムズイ理由を話してくれた。


 魔法を使うには今使っている言葉ではなく、『魔導語(まどうご)』ってのが必要になる。始めはゆっくり詠唱、慣れてきたら早口でやっても効果はある。

 一応慣れたら無詠唱でもいけるけど、結構難しい。出来る奴はそこまで多くないけど、ヴァリネッタは出来る。当然、大魔王連中は言わずもがな。

 魔法は種類が多彩で、電気を付けたり消したりするようなものとか、服を畳んだりするようなものもある。そして、特に大切なのは、多彩だからこその言い間違いや噛み。

 ちゃんと言えないと、魔法が発動しなかったり、違うものが発動したりする。

 異世界に転移してきた私は、この世界の文字も読めないから、それより難しい『魔導語』は読めないだろうし、異世界の奴らには発音可能かも分からない。

 だから、教える方も難しい。

 魔力も消費するし。


 ってことらしい。


「つまり魔導語が分かればいいんやな?」

「お前読めないだろ」

「いやいや転移魔法とかめちゃくちゃ便利やん?習得しない理由がないやろ」

「そうか…………お前に何を言っても無駄って分かったのは収穫だな…………」


 遠い目で呟くヴァリネッタ。失礼な事言われてる気がするんやけど。私は自分が強くなる為なら努力は惜しまねーぜ、どんだけ無茶な事でもな。


「まあ、図書館にでも行けば何かしら手がかりはあるかもな……応援はしとくわ」

「OK、図書館な、図書館……」


 ん、最近その言葉聞いた気が……


「あ」

「どうした」


 天萊と約束してたんだったわ。

 これ、まだ結構時間かかるよな。

 あんま待たせたくねーな……そだ。


「今度ここに来るまで、その生体記録板とチップ預けといていいか?」

「まあ……別に……悪くはねぇけど……?お前がいいなら……?」

「じゃあ頼むわ」


 ほぼ脳死状態で、適当な返事をしてるヴァリネッタに、生体記録板とチップを押し付けて家を出る。

 あーあ、こういう時転移出来たら便利なのになー、教えてくれてもいいのになー。


 徒歩で寮まで歩く。学園の方で薄らと、青と紫の光が飛んでるのが見えて思わず呆れた。まーだやってんのかあいつら?でもおかげで迷わずに済むな。


 504号室の寮の扉を叩くと、すぐに扉が開いて中から白い滑らかな髪と、赤い眼が出てきた。


「お早かったですね」

「時間かかりそうやったから途中で帰ってきただけだぜ、それより案内頼んだ」

「はい。もちろん!」


 天萊は嬉しそうに笑って、部屋を出てきた。鍵も持ってて、鍵に同じ鳳凰の模様が刻まれてるもの。

 あーこいつもちゃんと大魔王なんやなあ、ってしみじみと実感する。いつかあんな感じの模擬戦じゃなくて、ちゃんとした殺し合いとかしてみたいな。


「鍵は持っていますよね?」

「ああ」


 ポケットから鍵を取り出して見せる。目に見える権利を振り翳せるもの──まだ使った事は1回も無いけどな。


「それを見せると、本を借りる事も可能ですので。では、参りましょうか」


 私に鍵を仕舞うように促すと、階段を降りて行く。後に着いて行くと、寮の裏手側に続くタイルの道があった。周りは木が生い茂ってる中で、丁寧に舗装されて、道の脇には野花なんかが咲いてる、一言で纏めると「いい雰囲気の道」って感じだ。

 ちょっといいホテルかなんかの裏庭にありそうだな、とか思ってると、向こうから、人影が2つ近付いて来る。


「あら?」


 天萊が声を上げる。

 気付いたのか、2人共本の表紙から顔を上げた。


「あれ、天萊?」

「どうしたのよ、アンタが図書館なんて珍しいわね」


 1人は金髪のドーナツヘア。同じく金色の目に、白いチュニックワンピース。

 もう1人は、白と黒のツートーンヘアのセミロング。翠色(すいしょく)の瞳に、シャツワンピースを纏ってる。

 恐らくどっちも女。


「いえ、影星を連れて行く所です。紹介しますね、私の仲間の大魔王、悠衣(ゆい)心夢(ここね)です」

「私が影星だ、よろしくな」


 金髪の方が悠衣、白黒の方が心夢って言うらしい。こいつらも大魔王なんか、力は私より全然弱そうに見えるのに。


「う~~~ん、影星って、もしかして最近有名な?」

「ええ、そうです」

「あの影星ね……まあ、そこそこやるみたいだし、知り合いになってあげてもいいわよ」

「なってあげてもいい……?お前、大魔王だからって」

「では、失礼致します」


 拳を握り締めた時、天萊に私の腕を引かれた。暗に「仲間に手を出すな」と言われている様だ。流石に殴りはしねーよ、紅葉に何言われるかわかんねーから。

 ただなんか、天萊もそうやけど、他の大魔王からはヤバさをそこまで感じないんよな。これは紅葉が特別ヤバいってことでいいんか?それとも、他の奴は完全に隠してるんか?


「着きましたよ。ここが図書館です」


 ぼんやりと考えながら、半ば引き摺られる様にして辿り着いたのは、煉瓦作りでステンドグラスが所々に嵌められた建物。しかもこれ、高さ的に二階建てだ。形こそ長方形だが、左右の手前の壁は階段状に高くなって、先に行くにつれて煉瓦の色が濃くなってる。

 ……いや違う、これステンドグラスじゃねーな。

 模様と色が描かれたガラスが、自ら発光してる?


「入りましょうか、どうぞこちらへ」


 さっき考えてた事がどうでも良くなる程外観は綺麗だったけど、内装はもっと綺麗だった。


 まず、二階に行く為の階段やらエスカレーターやらが必要ない。転移魔法陣で事足りるのは、学園内の大図書室が証明してるから、か?

 照明は発光するガラスの他、上から3cmくらい伸びてる支えにランタンがかけられてて、暗くはないけど明るくもない、リラックスに向いてる明るさ、くらい。

 勿論ソファもテーブルもあって、テーブルの中心では、人が通った時の微風に火が揺られながら、蝋を舐めて机上を照らす。

 本棚は綺麗に整列していて、ちゃんとジャンル分けもされてる。


「なあ……こういう建物系って、誰が作ってるん?」


 思わず訊く位には、私史上最も好みの建物だった。

 天萊は微笑みを浮かべながら答える。


「建物や発展などにとても口煩い魔王組織がいるのですよ。外界から、積極的に文化を取り入れ、美しさを追求する、変わった組織、〈永克覇王(えいこくはおう)〉という、古い所が」

「へー、そんな奴らがいるんか」


 魔王って組織によってやってること結構違うんやな。


「ここを管理しているのは、〈玲瓏の理想郷(グロリアス)〉と〈暗影の祝園(アビスヴァイス)〉という、二つの魔王組織です。サーガとナイティアの所……と言えば、分かりますか?」

「あいつらか、分かるぜ」


 一応ここ、学園の敷地、みたいな管理になるんやろか。あの二人がまさか全教科教えてるわけじゃねーし、ナイティアは化学教えてるって羅刹が言ってたな。


「歴史関係は……これですね。はい」


 天萊は、数多の本棚から一冊の本を抜き出した。

 勿論、この世界の言葉で書いてある。


 うん。


「読めねーよ!!」


 図書館なのに、思わず叫んだ。マジ役立たねえ図書館。

 文字が読めないのって大変なんやな……

 

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