身体増強Lv
カーテンを閉め忘れた窓からの光で目が覚めた。
いい目覚めだな。さて、今日は……ヘヴィーの家行って……
避けてた歴史でも、調べてみるか。
備え付けの風呂場に入って、シャワーを浴びる。髪の毛までちゃんと洗って、湯は貯めてねーけどまあ、必須じゃねーだろ。めんどいし。
髪をドライヤーで乾かして、みのりに買ってもらった黒のブラウスと、紺色のタイトスカートにガーターソックスを身に着ける。そして、黒いロングブーツ。めちゃくちゃ黒いな……
鏡で見てみると、赤茶ロングに赤目の奴が黒々しい服着てる図で、いつもと違う自分に違和感がある。なんかあんま落ち着かねーな。こういうのって、黒乃がしそうな恰好やけど。
でもこれなら、私って思う奴少ないんじゃねーか?多分、着物っぽいけど着物じゃない、少し変わった服も私の印象の一つなんやろ。
この服はー……洗浄魔法教えてもらって洗えばいいか。
身支度を整えて外に出る。この寮オートロックでほんと便利だわ。
さてと、んじゃ家まで行くとしますか。
そんな事を考えながら寮の階段を降りてたら、学校の方から朝には似つかわしくねー爆発音が聞こえてきた。何事だ?
なんか……え、実験でもしてる?それか花火でも上げてる?
階段を飛び降りて音のする方へ向かってみると、良く見えねーけど2人?が空中で争ってる?っぽい。誰が何やってんのか全然見えねー。これどういう状況だ?誰か説明してくんねーか?
んーと……
他の奴ら、何も気にしてねーから私も気にしねー方がいいんか?周りの奴らガンスルーやけど、気にする程の事でもない?日常の一つ?
この世界に来て初めての情報の濁流。ここ仮にも学園やろ?なら止めた方がいいとか……あるじゃん?教師が止めるとかさ。あのナイティアでも、サーガでもいいとか、あるじゃん。止めれる奴とかさ、大魔王の誰かとか……いるじゃん?
「あ、おはようございます」
「あ、おはよ天萊。なー何が起こってるん?」
「ああ、大丈夫ですよ。いつもの事ですから」
たまたま通りかかった天萊に、挨拶されたから返してついでに聞いてみる。え、いつもあんな事やってるん?誰と誰が?
「私も混ざっていいか?」
「ふふ、あの2人の間に割り込むのはダメですよ」
「ふーん、誰なん?」
「美麗と、毒舌トリハピサイコパス屑です」
「それ雨飾って聞いたぜ?」
「……そうですね」
苦い顔で認める天萊。雨飾って、私がこの世界で最初に戦った紫髪の方だよな。あいつが何したってんだ……おもろいけどあいつはそれでいいんやろか。
にしても、混ざっちゃダメな理由って何なんやろか。因縁の対決とか?もしそうなら邪魔する気はねーけど。
「あいつらってライバルとかなんか?」
「そうですね、ライバルです」
「お前の中のライバル像どうなってんの?」
ライバル=死んで欲しい奴にはならんやろ。つか何があったら死んで欲しいなんて思われるん?不思議でしょーがな……あーでも、もしかしたら私が殺した奴の家族は、私に死んで欲しいとか思ってるかもな。
聞き入れる気は微塵もねーけど。
「でもなんでそんな風に言うん?」
「……それはですね」
天萊が、むっとした表情で言った言葉は、私の想像より遥かにヤバかった。
「毎日美麗の部屋を破壊しているからです」
「…………悪い、なんだって?」
「毎日、あいつが、美麗の部屋を、破壊しているからです」
「…………聞き間違いじゃねーんやな」
大切な事は2回言う決まり通り、しかも2回目はゆっくり言ってくれたおかげで理解した。
どう考えてもあいつが悪いな。寝起きドッキリじゃねーんだぞ。
「聞きたいことは色々あるんよ。けど、敢えて1つに絞るなら『なんで?』なんやけど知ってるか?」
本当は、『何で?』とか、『いつから?』とか、『そんな事して怒られないんか?』とか、色々ある。
けど私だってこの後用あるし。
自分で言うのもなんやけど、私より倫理観ガバい奴初めて見たし。
何より、そんな奴の話は長々と聞きたくねーし。
「美麗が一番新参なんです。あれは、紅葉と同時期に大魔王になったんです。というか、紅葉とあれが最初の大魔王なんです。だからでしょうか……?嫌い、みたいですね。それと、美麗は”世界の意思”に認められた不老不死なので、壊れない物だと思っている可能性もあります。……何せ、人を殺す事は救いだと思っているイカレ野郎なので」
「聞いた私がバカだったわ」
全体的にあいつやべーわ。そういや紅葉、初めて話した時言ってたっけか。
確か……殺戮行為を取り締まってない理由で「雨飾が虐殺をしてるから。正義の執行で救いらしい」だった気がする。
いや意味わかんねーな。「倫理観死んでる」は言われるけど、正直あいつよりは断然マシだしまともな自信しかない。
……下見て安心してるんじゃねーぜ。
「そういえば影星、どこに行かれるのですか?」
天萊は、私の方を見て訊く。まだ私がこの世界に慣れてないからって、気にしてくれてるんやろか?でもまあ、気にかけてくれんのは嬉しい事やな。
「ヘヴィーの家行った後、歴史調べようと思ってるんよ」
「歴史……ですか、分かりました。では、後で私のお部屋まで来てください。学園外の図書館まで案内致しますので。504です」
「さんきゅ」
礼を言って天萊と別れ、ヘヴィーの家まで向かう。道結構うろ覚えやけど、確かヘヴィーと一緒に歩いた道はこっちだったはず……だ。
路地裏を出て山道に差し掛かった時、2つの対照的な色のツインテールを見つけた。私とは違う方向に行こうとしてるっぽいな。
「ヘヴィー!穂ー!」
大声で名前を呼びながら駆け寄る。向こうも私に気付いたのか、足を止めてこっちに視線を投げた。
「影星か。どうした?」
「いや一応お前に用事あったっちゃあったけど、まーヴァリネッタでもいけると思うわ。何しに行くん?」
すると、ヘヴィーは右手に持った袋から小瓶を取り出す。
水っぽいけど……それにしては少しだけ粘り気がある?気がする。
「それなんだ?」
「今朝、紅葉から依頼をされてな。奇妙な魔法陣が見つかったとの事で、消滅させる手段としてありとあらゆる薬品を掛けに行く。これはその中の1つだ」
「力技すぎね?」
「それは俺も思った。けど、雨飾さんでも壊せないなら、ゴリ押ししかない、って」
「あーなんかヤバそうやな、がんば」
「ああ、お前も気を付けろよ」
ひらりと手を振って、私はヘヴィー達が歩いてきた方へ向かう。
大魔王でも壊せない魔法陣、な……あの施設と関係あるんやろか……でも多分、美麗はあの時のメモ、紅葉に渡してると思うんよな。
私達が気付いたことやし、紅葉なら少し考えれば分かりそう。
ってなると、その上でヘヴィーに調査依頼を持ち込んだ事になる、よな?
それに、いざとなれば紅葉が行けばいいだけやし……うーん?
まあ、考えてもわかんねーもんはわかんねー。
ヘヴィーの家に着いた私は、ドアを叩く。
すぐにヴァリネッタが出てきて、中に入れてくれた。
「今あいつらいないけど、それでいいのか?」
「多分大丈夫だぜ。なあ、闘争主義の強化方法とモジュールの作り方教えてくんね?」
「あー……分かった、任せろ」
用件を伝えれば、ヴァリネッタは少しだけ考える素振りを見せて、それから頷いた。
「まずはモジュールからな。能力だったよな?」
「そそ」
「能力を作るんだったら、お前の苦手な魔力放出になるけど大丈夫か?」
「あー、まあ慣れたし平気だぜ」
「なら適当な所に向けて魔力を放出して、コントロールしてその場に留めろ」
「なんだそれ???」
知らねー知らねー、分かんねーよ!放出した魔力をコントロールしてその場に留める?無理難題押し付けてくんじゃねー……
「難しい話じゃないと思うぜ。んー……凧上げ的なイメージでいけるはず」
「んんん……OK、試すわ」
そっと魔力を出してみる。バズーカを使ってて慣れたし、出力は多少自由に扱えるようになったけど、コントロールするのは難しいな。勝手に魔力流れてくし……この場に……この場に…………
「意識集中させろ。余計な事考えんなよ」
ヴァリネッタの声に、一瞬逸らしかける。
散乱する意識をなんとか固めて、ぐっと歯を食いしばる。
コトン、と軽い音がして板が現れる。大きさは縦16cm×横12cmの長方形。横の部分には、空洞が3つ。これが生体記録板らしい。
「出来たんじゃね?それが能力か?」
「多分な」
興味深げなヴァリネッタと共に、生体記録板を覗き込む。
《生体記録板》
名前 ???
性別 ???
身長 154cm
体重 41kg
血液型 ???
……この???ってなんだよ。私の名前も性別も血液型も分かりませんでしたってか?私もわかんねーけど。
「これ、お前のステータスか?」
「そそ」
「ふーん……身長体重以外はわかんねぇのな」
「私もわかんねーからしゃーねーな」
「性別までわかんねぇのは珍しいな」
「そういうもんか?」
「そうそう」
そんな風に感想を言い合いながら、同じ要領でチップを作る。全部Lv10のやつ作って保存した方が早そうやし。
9個のガチャカプセルみたいな球体が、浮かびながら踊り回る。出来るまで1000秒。その間に天性を強化するか。
「で、これどうやるんだ?」
「うーん……前例がないんだよな、このタイプ。考えられるのはあれだな……本のページに魔力を送る。とか」
「んじゃ、ちょい試すわ」
本を呼び出すと、身体増強のページを開く。まだ何も書いてない。
えっと、殺したのは鍵奪ってきた奴4人と遊びに行った帰りの6人で合計10人?
Lv5になったらコスト増えるし……5まででいっか。
ページに手を合わせ、魔力を慎重に注ぎ込む。
文字が浮かびあがって、数字がどんどん更新されていく。
1から2に、2から3に、3から……書き換えられて行って、数字が5になった時に手を離した。
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身体増強
・虚妄世界:Lv5
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「出来……た、ぜ」
「お、良かったじゃねぇか。それで、何となく変わったか?」
少し腕を動かすと、風が起きた。
……風が起きた?何事?
「強化され過ぎだろ!いや、2乗が5回分だもんな……」
倒れた椅子を見て、ヴァリネッタは呟いたり頭を抱えたりした後、何かを諦めた様に嘆息した。
その後、残った6のコストは生命力増強に3、魔力増強に3振った。
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生命力増強
・虚妄世界:Lv4
魔力増強
・虚妄世界:Lv4
身体増強
・虚妄世界:Lv5
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「にしてもこれ、ヤバそうだな……絶対力加減はしろよ」
「分かってるわ、流石に気を付ける」
ヴァリネッタに釘を刺されるも、反論する理由も無いし、何なら私までヤバいと思ってる。
あーあ、どしよ。
Lv1に加算式なので、多分Lvは合ってると思います……




