永遠の寿命
向かい合ってティータイム。今回の紅茶はアールグレイ。外界から取り寄せたものらしい。美味しい……けどストレート……ミルクもレモンも砂糖もない紅茶を飲める程私の舌は大人じゃねーぞ。お前はいいかもな!涼しい超えて無表情で紅茶飲めるから!
「で、まず一つ聞いても?」
「なんだ?」
「キミ、迷子の森を燃やしたって本当?」
「あー……」
そういやそんな事したな。なんかどうでもよかったから忘れてたわ。
いや、それを忘れる位あいつと出かけたのが楽しかったんだ。そういう事にしとこ。
「そうだけどどうした?全部燃えたか?」
「途中で鎮火した。全く……キミが破壊衝動を患っているのは知っているけど、だからって森まで燃やして行かないでくれない?何の恨みがあるのさ」
「いや恨みは……無くもねーな」
「でも森には無いんでしょ?」
「ない」
「最低」
森『には』ない。ただ、森を住処にしてた奴には恨みがある。
けど能力は貰えたし盗られた鍵は取り返せた。プラマイゼロにしてやってもいい。
まー、死人に口なし。相手が何を思ってようが私に伝わる事は永遠にないけど。
「本題に進んでもいい?」
「OKOK」
紅葉はカップをソーサーに置くと、足を組んだ。相変わらず無表情で私を見下ろす。
雰囲気が、初めて会った時のそれに変わった。
息が詰まる様な威圧感。
無言で話の続きを待つ。さっき紅茶飲んだばっかなのに喉が渇いて仕方ない。けれど、卓上僅か10数センチの距離にあるカップを手に取る事すら躊躇われる圧迫感。
「キミが何をやらかしたのかはよく分かっている。その上で、ボクはキミを評価する。……認めてあげるよ、キミの強さ。ボクが言った事、覚えているかい?」
「……」
世界に認められて永遠を貰う。
死んでも復活する事が可能で、寿命も魂も無い世界。
……それは嫌だ。
戦闘は好きだ。
戦って死ぬならいいと思ってる。格上や正体不明の相手と交戦するのは楽しい。
恩人や仲間は守りたい。
失うなんて、考えたくない。それなら代わりに私が死んだ方がいい。
この2つの感情は、どっちも本物だ。
死ぬ事が無い世界なら、私はあいつらの事を文字通り、何度でも命を懸けて守る事が出来る。
けどそれじゃ、戦闘を存分に楽しめない。
最初から死なない事が決定してる戦闘なんて、楽しくもなんともない。
そんなの……
「……嫌……」
「え?」
自然と喉奥から掠れた声が出た。
紅葉は、少しだけ表情を驚きで崩した。
私は今までになく必死に言葉を発する。
「私は、死んでも復活する様な人生は、嫌だ」
ぐっ、と正面から紅葉の視線に合わせる。
なんとか視線を逸らさないように、意志だけで耐えた。
何分……もしかしたら分じゃなくて秒かもしれない。
息苦しくなって、目を逸らしたくなって、圧力に負けそうになった時。
「……そんな事を言うの、キミだけなんだけど」
「…………いい、のか?」
「いいよ。でも、そのままじゃキミはいつか寿命で死ぬ事になる。キミが望むなら、寿命だけ無くしてもいい。どうする?」
寿命を、無くす。
それって、どうなるんだ。
「……見た目って、変わるんか?」
「いや?キミはずっとその姿のままになる」
……寿命で死ぬのは望んでねーんだよな……
それが出来るなら、そっちの方がより私の理想に近い。
これ以上成長してもしなくても、どうせ同じか。
「……それで頼むわ」
「分かった。……キミ、よく変わっているって言われない?」
「……さあ?」
よく言われんのは戦闘狂だな。あれ、これ変わってると同義なんか?
まあどっちでもいいか。多少なりとも変わってんのは事実やし。
「話は……終わりだ。何か気になる事はある?」
「ああ……」
そこでふと、聞きたくても聞く相手がいなかった質問と、穂に訊く事を忘れていた事を思い出す。
……が、この雰囲気、息苦しい。
「……話しにくい、その雰囲気……」
「雰囲気……ああ」
少ない言葉でも伝わったらしく、1つ頷いた。
その途端、威圧的な雰囲気はすっかり鳴りを潜め、漸く息が出来るようになった。さっきから呼吸はしてたはずなのに、酸素を取り入れてた気がまるでしない。
「これでいいかい?」
「ああ、……聞いていいか?」
「何?」
さて、何から聞くか……けど、もう死んだ奴の天性はどうでもいいってのは一理あるんよなあ……
それでも気になるもんは気になるな……
「他の奴の天性って分かるか?」
私の疑問に、今度は驚きじゃなくて変なものを見るような目で見てきた。失礼な奴やな。
「なんで?」
「ちょっと気になった奴が1人いるんよ。ちな能力は時間遡行なんやけど」
「ああ……ボクは知らないから聞いてみる」
聞いてみるって、誰?神か?
私にはぜんっぜん聞こえねーけど。
「……自分の時間の延長と短縮、ねえ……」
独り言のように零す紅葉。
時間の延長と短縮……
例えば、人の5秒間を自分の1秒にしたり10秒にしたりする、ってことか。
早い話、1秒間に動ける時間が他の奴より多いのが延長、1秒に動ける時間が他の奴より少なくなるのが短縮。
そう考えれば、穂の攻撃を躱せたのも納得する。
自分の時間を延長して、動きまくって躱した、って感じか。
「いや、もういいぜ。次に聞きたいのは上限解放について──」
「上限解放?」
「っ……!?」
突然の紅葉の冷たい声。
踏み込んじゃダメなやつだった、か?
どの道この話題はやめた方が良さそうやな……
「……疲れたから帰るわ」
さっさと話を切り上げて椅子から立ち上がる。
「ゆっくり休むといいよ」
紅葉の声が背後から聞こえてきたものの、私は振り返る気にもならずに寮の部屋まで戻る。
部屋に入り、ベッドに寝転がる。
やべ、着替え……まあいいや、何とでもなる。今度ヴァリネッタに洗浄魔法教えてもらえばいいか。
あ、そういえばモジュールも、天性も手つけてねーや。
あーでも、やり方なんてわかんねーし、明日にでもヘヴィーに聞けばいっか。
殺戮と遊び、楽しかったな。また行きたいな。
今日1日を振り返りながら、私は目を閉じる。
意外と疲れてたのか、抵抗なく意識は闇に引き込まれていく。
明日、ヘヴィーの家行った後どーすっかな……
その思考を最後に、意識を手放した。
昨日短編を1つ投稿しました。宜しければ下のリンクから読んでいただけると嬉しくなります。
私初の試みです。お見苦しい所がこの作品よりも多いと思いますが、良ければ。




