人間兵器の闘争主義
影星は、みのりが離れた事を確認すると、地を踏み締め目の前の敵に急接近。
すると、目の前に薄い膜が出現する。振り下ろした拳が弾かれるのを確認して、その場を飛び上がる。直後、その場に眩い程の電気を発した球体が地面と接触し、爆発を起こした。
冷静に敵の能力を観察し分析する。
結界、もしくは物理攻撃無効、それと恐らく雷に関するものだと推察をする。
現在自分が相手取っているのは5人。まずは結界の方から割ってしまおうと、それに向かって右足の前蹴りを叩き込む。鏡が割れるような音と共に、この靴に載せられたもう一つの効果が発動した。
「結構効くと思うぜ」
「ッ、が……」
『障壁破壊時極大ダメージ』
この効果は、展開した相手がどこにいようがダメージとして換算される。
キック+特殊効果のダメージは、人間一人の耐久力を優に超える。
体外へ赤黒い液体を流した塊は、建物まで吹き飛び、叩き付けられ動かなくなった。
直後、左手の甲に何かが刺さる。視線を移せば、そこには細い針が一本のみ。
それを抜いて捨てると、次なる相手を沈めようと動き出した時。
「……?」
視界が僅かに歪む。軽い眩暈に襲われながらも、手近な相手へと手を伸ばし──
「っ……?」
確かに掴んだはずの腕は虚空を切った。
霞む視界の先には人影がある。
先程よりも少し鈍くなった頭で思考を回し、原因と解決策を探る。
不調になったのは針が刺さってから。ということは、針に原因がある。
考えられるのは状態異常。しかも即効性。視界の歪みと眩暈。
ここから考えられるのは──
「──毒、状態……!」
「中々頭、回るんすね」
呟きに反応したのは、目の前の男だった。手には、小型の銃を持っている。
「正解。まあ針が細い分効果はそこまで強くないんすけど」
そして、銃の先を影星へ向ける。
だがそれよりも、引っかかることがあった。
効果はそこまで強くない。
だが、それにしては違和感を感じる。
毒による歪み、眩暈、霞み、までは理解できる。
……だからといって、距離を測り間違えることがあるだろうか。
「……いや、それより」
バズーカに魔力を注ぎ込み、放つ。加減などしている余裕はない。
その魔力波は、ターゲットのすぐ横を掠めていった。
「嘘だろ……!?」
外れるとは思わず、思わず一瞬動きが止まる。
その瞬間、相手の銃から弾ではないものが飛び出す。
当然視認は出来ていた。出来ていた上で、距離もとった。──つもり、だった。
右足の太腿に針が刺さる。それに気付いた時には既に遅く。
「今度は麻痺かよ……!」
足先から痺れる様な痛みに舌打ちをして針を抜く。
その一瞬の隙が仇となった。
頭上で白い光が弾ける。それが雷だと認識するのとほぼ同時、耳を劈く音と光が影星を包み込んだ。
─────
「……消えた?」
狙った先、不意打ちだったはずなのだが、その場に姿はなかった。
目を疑ったが、後ろから肩を叩かれて振り向いた。
「何言ってるんすか?大丈夫っすよ、毒だって念の為二重に掛けたし、感覚だって狂わせたんだし」
「デバフばかりかかった相手に今のは躱しきれないはずだ」
「そうそう。もう一人いるんだから、気にしていられないよ」
仲間にそう声をかけられるも、拭えない予感。
それは、現実となった。
「今のは結構ヤバかったぜ?でも隙見せてくれてさんきゅ」
「は……?」
首元を切り捨てたその人物は、返り血を浴びて残忍な笑みを浮かべた。
雷が目前に迫る中、影星は停滞する思考を何とか動かし最適解を導き出そうとする。
そもそも、今の自分が動きにくいのは毒針を撃たれたからで……
原因を思い浮かべて気が付いた。
今の自分は状態異常にかかっている。だから思う通りにいかないのだ。
そこまで考えて、自身が持つ能力と照らし合わせて解決策を見出した。
まずは【星達の不純物】のバフモードを起動し、ステータスの引き上げとHP回復を発生させる。だが、今回は前者のステータス、特に速度上昇が重要だった。
【速度変化】での加速は魔力消費量が多い。地の能力で魔力消費を抑える事が狙いだった。
そして【置換上書】で状態異常を元の状態へと上書きしたのだ。
回避を行い、光に紛れて気配を消し背後へ回る。
そして、油断している時を狙って蹴りを放った。
先から飛び出したナイフが首を切り裂き、そのまま落とす。
「大したことねーな」
奪った能力は雷操作。決して使えないと言うつもりはないが……
「今は別にいっか」
「……化け物が」
銃口から逃げる様に跳躍し、頭部にバズーカを振り下ろす。駄目押しにハイキックを放ち、手を離れた銃を握り、いとも容易く鉄塊へと変えた。
更にそれを投げつけると、火炎弾を4つ飛ばす。
「炎!?」
「無能力じゃなかったか……!」
回避行動を取る二人。そしてその先には、
「ちょっとピンチなシーンもあって楽しかったぜ、じゃーな」
既に躱し様がない距離に、魔力が迫っていた。
圧倒的な波に飲み込まれ、後には。
「さて、みのりの方はどうなってるんだ?」
僅かに地に散らばる人の一部だったもの、のみだった。
影星はバズーカを肩にかけると、奪った五つの能力を確認する。
【結界展開】、【毒素調律】、【感覚操作】、【雷霆の共鳴】、そして【再生の旋律】。
ついでに、【毒素調律】を奪ったことにより、一定以下の毒は効かなくなる耐性も少しだけ身についた。
能力数が増えるのは喜ばしいことだが、今朝も戦ったばかり。その上、一度魔力砲を外してしまった事が響き、思ったよりも魔力が減っている。今戦闘に参加したら、穂が邪魔だと思うかもしれない。
そう思って、影星は気配を消して様子を見守るのだった。




