夜魔の牙城
みのりの後を着いて、街を出て、小道を通る。隣には小川が流れてて、私より小さい(身長的な話)子供達が足を浸してる。気持ち良さそーやな。
「なあみのり、あれやってかね?」
「あー、あの川?別にいいけどなんで?」
「さっき戦った後で足疲れたから」
「思ってる??」
そんなことを言いながらもみのりは、川べりまで私の手を引いて座ると、靴を脱いで水につける。私も、ブーツとストッキングを脱いで横に座った。
思ったよりも冷たい。氷水くらいには。ピリッとする痛みに無抵抗に晒されながら、水面を見つめる。綺麗に透き通った水が光を反射し、眩しさに目を眇めた。
ふとみのりがタイツのまま足を着けてることに気付く。本人は穏やかな顔で、ぼんやり遠くを見てた。前世の事とか考えてるんかな。邪魔すんのはちょっと悪いけどそれより気になる。
「なーみのりぃ、なんでそれ脱がないん?」
私に話しかけられたみのりは、パチリと瞬きをしてから私の方を見る。
そして私の足元を見た瞬間、高い声を上げた。
「ままままってなんで脱いでるの!?」
「いやお前こそなんで履いたままなん?脱がなかったらびしょびしょやろ」
「いやこれタイツだからね!?こんなところで脱いだら変人にしか思われないよ!」
んーよくわかんねーな。普通脱ぐやろ、足湯の時とか履いたままやらねーだろ、変なこと言うなこいつ。
それともみのりはそうしろって言われたんかな……それかこの世界の常識とか?
辺りを見渡す。全員素足で入ってるのを確認して、益々みのりの不自然さに首を傾げた。
「でもみんな脱いでるぜ」
「タイツだから!!分かって!?」
「何が?」
「だからー……もういいや、行こ?」
「OK」
何かを諦めたみのりに言われた通り水から足を引き上げる。
気付いた。
「みのり、私拭くものもってな」
「あ、私持ってるよ。はい」
みのりが肩掛けバックから取り出したのは、少し大きめのハンカチ。それを渡してきたから受け取った。白くて肌触りがいい。もこもこしてる。
「足の拭き方ー……は分かるか」
「バカにしてんのか?」
「してない!してないよ!」
慌てて首を振るみのりに、「分かってるぜ」と返せば安心したように笑顔を見せる。そして、バッグからもう一枚タオルを出すと、それで足を拭き始めた。
結構水吸い取るなこのタオル……
「これどこのだ?」
「うーん……前世と同じ世界で買った奴?」
「あーはいはい……わかんねーのな」
「ヘヴィーから貰ったからね」
タオルを畳んで仕舞おうとすると、みのりに手を掴まれる。
「…?このまま返すわけにはいかねーだろ」
「いや、でも影星バッグないし荷物増えちゃうでしょ?私が持つから大丈夫だよ」
「え、でも……?」
「いいのいいの!今日は私に全部任せて!」
洗って返すのが礼儀なんじゃねーのか?よく言われる言葉やと思うんやけど。
でもみのりがいいって言うならいいか。お言葉に甘えてみのりにハンカチを返す。
「で、次はどこに行く?」
ストッキングとブーツを履きながら聞く。みのりも靴を履いて立ち上がった。
「《夜魔の牙城》っていう所に行くよ。そこでデー……?じゃないね、遊ぼうね!」
「分かった、じゃー頼むわ」
「もち、任せて!」
みのりは私の手を握って歩いて行く。
────
いつ言えばいいか、分からない。
言ってしまってもいいことなのか?
影星はああ見えても優しい。
それは分かっている。
だが、恐らく自分よりも強い事は事実だろう。
だから不安なのだ。
弱い自分が、足手纏いになってしまう事。
そして、
距離を置かれてしまう事が。




