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【完結】犬死にした俺は、過去に戻ってやり直す  作者: Pのりお
第二章 高校生編 -夏-
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第二十五話 写真

「でも、それって確かな話なの?」

「それについては謝らないといけない。るいちゃん、ごめんね。勝手にリュックのなかを見てしまった」

「別にいいです」


 百瀬るいは、口の端にせんべいのカスをつけながらそう答えた。


 シャワーを浴びたあと、替えの下着はどうしたのだろうと思っていたが、リュックのなかに替えがあったのかもしれない、なんてどうでもいいことを考えた。


 父さんがつづける。


「それで、るいちゃん。アルバムを一つ持ってきていたね。そこに、あの妹の姿が映っていたから確信できた」


 あのリュックにはそんなものも入っていたのか……。


 なんとなく、そのことからも百瀬るいの覚悟が伝わってくる。もう二度と戻らないつもりで家を出たのかもしれない。だから、思い出の詰まったアルバムを入れて、今まで行ったことのない親戚の家まで一人でやってきた……。


 ――クズが。


 一瞬、頭のなかが黒いものに包まれた。すぐに黒いものが晴れ、目前の現実に視界が戻る。


 ダメだ。過去のことを考えてはいけない。今は、この子のことに集中しなければ。


 母さんが、俺のほうを見て言った。


「明人、ごめんね。あまり聞かせたい話じゃないからどうしようかと思ったんだけど」

「俺のことはどうでもいいよ。今さらだし。とりあえず、事情は理解できた」


 深夜のことを思い出す。百瀬るいは泣きそうな表情を浮かべて、家を見上げていた。どんな気持ちだったのだろう。せっかく一人でやってきたにもかかわらず、インターホンを押す勇気などなかった。俺に話しかけられても、逃げることしかできなかった。


 もしも、生前の人生において同様のことがあったとしたら、俺も両親もその存在に気づくことはなかったということになる。結局、一度も俺たちに声をかけられず、警察に保護されるしかなかったのではないか。


 いったい、そのあとどうなったのだろう。警察に保護されたら、親元に帰された可能性が高い。この子の事情は解決されないまま、苦しい未来を迎えていたのかもしれない。


 ――駅員に告げた嘘が、まさか本当になるなんてな。


 あのとき、駅員が警察を呼ぶ前に割って入ったことで変動した未来にいる。なにがいい選択なのかわからないし、俺が声をかけたことで悪い未来につながる可能性もある。でも、袖をつかむ手を見て、それを振りほどくなんてこと俺にはできなかった。


「さすがに帰すわけにはいかないでしょ。もちろん簡単じゃないのはわかってるけど」

「明人ならそう言うと思っていた。正直なところ、俺も同意見だ」


 ここで守らなければ、以前の人生と同じ未来を歩ませてしまう。それがどんな未来かわからないけど、こうやって巡り会ったことがただの偶然だとは思えなかった。


「親戚なんだ。親戚だから、来た姪っ子を受け入れただけということで押し通す。幸いなことに、今の学校はお休みだ。時間はいくらでもある」


 どうやら、俺に話すより前に覚悟を決めていたらしい。玄関付近で母さんと父さんは、そのことをずっと話していたのかもしれない。


 俺はうなずいた。


「異論はない。もともとここに連れてきたのは俺なんだから」

「じゃあ、決まりだ」


 こういうときに、子供としての自分が恨めしい。俺にできることはほとんどない。


 百瀬るいは、とんとん拍子で話が進んでいくのに驚いている様子だった。


「……いいんですか?」


 俺と両親は顔を見合わせて、同時にうなずいてみせた。


 こうなったら、やることはいくらでもある。実の親との交渉は父さんに任せるしかないのだけど、一時的だとしても家に泊めるには準備が必要だ。


 結局、父さんは午後から仕事に行かなければならず、昼前には家を出た。母さんと百瀬るいは、いろんなものをそろえるために買い物に行くことになった。俺だけ留守番である。


 といっても、なにもしないというわけじゃない。


 二階に、普段は物置同然で使用していない部屋がある。その部屋の整理を任された。


 ネット通販で買ったけど使わなかったマッサージ機、壊れてしまったストーブ、カメラ用の三脚などが置かれている。一つ一つを外に運び出して、一階のリビングまで持っていく。


「ふぅ……」


 一時間ほど体を動かしていたら疲れてきてしまった。休もうと思ったそのとき、ふと玄関前に置かれたままになっていたリュックが視界に入った。


 急に俺のなかにある衝動が生まれる。誰もいないはずなのに、つい周囲を見渡してしまう。


 ――いけない。でも……。


 勝手に体が動く、俺はそのリュックのファスナーを開いた。そして、つい、父さんの話していたアルバムを探してしまう。


 すぐにそれは見つかった。


 ――あった。


 二十センチ四方のアルバムだ。こんなのがあるくらいだから、初めはうまく行っていたのかもしれないなんてことを考えた。


 アルバムを開く。そして、ぺらぺらめくっていくうちに、俺はそれを見つけた。


 記憶からほとんど失われていた実母の顔がそこにあった。


「……」


 こんな顔だったのか、という驚きがあった。それを見たからと言って、なにか自分のなかで変化があったわけじゃない。ただそれでも俺はその顔から視線を外すことができなかった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 最新話まで一気読みしました! 過去に戻った後のエピソードがとてもよくまとめられていて、そこからの いわゆる後日談が主軸となる物語、とても良く構築できているなと思いました、ここからさらに物語…
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