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【完結】犬死にした俺は、過去に戻ってやり直す  作者: Pのりお
第二章 高校生編 -夏-
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第十七話 連絡先交換

 期末テストが終わり、成績表の返却が行われた。出席番号順に呼ばれるが、あいうえお順となっているため、「山村」は最後だ。テストの結果自体は出ているので各教科の評価はある程度わかっているものの、ここで初めて順位が判明するため緊張の時間でもある。


「ええ、で、最後が山村と」


 担任教師の井口先生は俺に手渡すとき、ニヤニヤという表情を浮かべていた。それから、肩を叩かれる。


「お見事」


 席に帰って内容を確認すると総合一位となっていた。俺は胸をなでおろす。


 中間テストの結果も併せて記載されているが、そちらも総合一位だった。全教科一位ではないものの、進学校であるこの高校では十分な成績だろう。


「うわ、これが一位の成績表」


 と、前の席に座る同じテニス部の矢部が言う。


「ていうか、もしかして英語のリーディング満点なん?」

「これからの時代、英語は大事だからなぁ」

「だからって、普通満点は無理だろ」


 別に見せびらかす気もないので、すぐに鞄のなかにしまう。終業式もすでに終わっているので、あとは帰るだけである。そのうえで、明日から夏休みに突入する。


「そういや、携帯買ったからあとでメアドとか教えてくれ」

「お? マジ? いいね」


 結局、歌島に言われたとおり、携帯電話を購入した。つい昨日買ったばかりで、ほとんどアドレス帳が埋まっていない。いざ入手すると、ほとんど埋まっていないのが気持ち悪い。


 井口先生の話が終わると、解散となった。テニス部の比較的仲のいいやつらに話してメールアドレスを登録させてもらう。ただ、非常に面倒くさいのが登録方法である。赤外線通信などの機能が発明されていないため、手打ちするか、誰かにメールで送ってもらうしかない。


 結局、矢部にメールアドレスを伝えて、テニス部のメンバーのアドレスを入力したメールを送ってもらう形で登録を済ませた。そのあとに森口に声をかける。


「ちょっといいか、森口」

「メアドだろ。いいぜ」


 今度は手打ちで森口のアドレスを登録して、そのあと森口に空メールを送った。


「おまえは携帯買わないと思ってたけど、意外だな」


 携帯電話を閉じた森口にそう言われる。


「なんで?」

「全然興味なさそうだったじゃん。みんな欲しがってるのに、おまえは『それがなに』みたいな表情だったから」

「実は、歌島にすすめられたんだ。おまえの言うとおりあまり興味はなかった」

「あー。なるほど」


 森口は、呆れたように笑っている。歌島のカタログのおかげで、安い種類のものをじっくり選ぶことができた。インターネットがまだ使いづらい時代だから、紙媒体の重要度が高い。


「歌島には、買ったことを伝えたの?」

「……そういやまだ言ってないな。携帯買ったことをそもそも忘れていた」


 今日も一緒に登校してきたのだけど、全然そんな話をしなかった。


 そろそろ教室に来るころだと思って、後ろを振り向いたとき、ちょうど歌島がドア付近からこちらの様子をうかがっていた。そして、俺の手にあるものにも気がつく。


「あ。もしかして……」


 俺は、携帯電話を前にかざす。歌島は、頬をほころばせながら近づいてきた。


「明人、ちゃんと買ったんだ。朝のときに言ってくれればよかったのに」

「忘れてたんだよ。おまえのも教えてくれ」

「うん」


 登録中、森口がニヤニヤしながら俺たちを見ていた。むかつくので、とりあえず軽く蹴っておく。今日だけで、一気に十人ほどの登録ができたことになる。


 期末テストが終わり、夏休みに突入したことで、学校全体の雰囲気が浮ついていた。夏休み中もテニス部の練習はあるが、ここ最近勉強漬けだったのでだいぶ気持ちが楽になった。学年一位をキープできて安心したというのも大きい。


 ちなみに、歌島も無事に赤点を回避したので、夏休み中に拘束されずに済んだ。もっとも、一つだけ赤点すれすれの教科があったらしいのだが。


 森口が足をさすりながら言った。


「俺も練習ないし、三人でカラオケにでも行くか?」

「せっかくだしそうするか。混んでなきゃいいけど」


 俺たちは、すぐに学校から出て駅前のカラオケボックスに向かった。幸いなことに、一部屋だけ空いていたらしい。


 椅子に腰かけたところで、つんつんと歌島に脇腹をつつかれた。


「なんだよ」

「いつ携帯電話買ったの?」

「昨日。どうせ買うなら早いほうがいいだろ」

「ふぅん」


 久しぶりにガラケーに触れたが、これはこれで案外使いやすい。携帯電話で遊びたいとか、メールしたいとか一切思わない人からするとそんなに大差はないのかもしれない。ただ、電波環境については、まだまだ未発達のような気がする。電波がつながりやすいところを探したりアンテナを伸ばしたりしている人をたまに見かける。


 やがて、トイレに行っていた森口が戻ってきた。


「そういや、歌島がすすめたんだっけ? グッジョブだ。夏休み中、山村にどうやって連絡をとればいいか困っていたんだ」

「カタログまで渡してあげたの。それでようやく」

「森口の家まで近いんだから、いざとなれば直接会えばいいだろうに。あくまで、念のために買っておいただけだし」

「いやいや、それは面倒だろ……」


 自分でも貧乏性だなと思う時がある。生前の貧乏生活のせいでもあるかもしれない。


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