「お絵描きAIさん! 私の小説の挿し絵を描いてwwww」「イエス、マスター」
「はい」
はいじゃないが。
2022年8月初頭。
イラスト業界はミッドジャーニーの炎に包まれた。
キーワードを入力するだけで神絵を即座に生み出す人工知能の誕生である。
この人工知能が市場に出回ることによって、リアル調、不気味調、怪物の絵などを得意としていた絵師たちは、己が職を機械に奪われるのではないかと不安に駆られる事態となる。
その一例として、筆者の友人によるコメントを紹介しよう。
「なんで機械が絵を描くんだよ! 教えはどうなってんだ教えは! お前ら禁じられた機械を平気で使ってんじゃねえか! 分かってんのか!? 金(月10$)取んのかよ!? クソッタレ!」
24歳、学生。
彼の言い分も最もである。今後はAIのさらなる進化と、その技術を使いこなす人間によるハイブリッド絵描きが増えるだろう。背景や下書きをAI絵師が描き、萌え絵や感情の機微など機械が苦手とする表現は人間絵師が書き加える。
さらには自分自身の絵柄をAIに学習させることにより、本来なら何年もかかる果てしなき努力の末に辿り着くはずの境地を、自己投影したAIが一瞬で辿り着かせてくれるようになる。機械によって人間の職業選択の自由が奪われる未来がすぐそこに迫っているのだ。
そんなことはさておき、なんか面白そうなので自分の小説の挿し絵に使って遊んでみまーーーーーーーす!!
使い方はとっても簡単! 英語でメッセージを送るだけ! ではではその結果をみんなで見てみましょーう! イエー!
では早速やっていきましょう! ヘイAI! 人と植物と虫を足したような化け物の大行進を描いて!
「はい」
何ということでしょう。匠の手によって、こんな適当なリクエストから悪夢のような絵が生まれました。これにはスタジオも大興奮……あのね? AIちゃん? 最初の絵もそうだけどね? やり過ぎって言葉知ってる?
「マスターの小説の世界観に相応しい絵です」
そうかもじれないげどおおおお!
こんなのお出しされたら、怖いでじょおおお!?
「マスターのプランなら月に200枚までご利用可能です。次の指示をお待ちしています」
あ、結構多いね。じゃあ次は……えっと、人間だった頃の面影が残っている怪物の群れが迫ってくる絵を描いて。
「はい」
なんでごんな怖い絵を描くのおおおおおおお!?
「マスターの指示通りです」
そうかもしれないですけど!
こんなに画面に近いなんて聞いてないんですよ!?
「クソ雑魚無能力女性主人公が徹底して甘やかされず地獄絵図に放り込まれながらも、大体卑怯な手でチートだらけの敵に勝つマスターの小説に相応しい絵です」
言い方ってものがあるでしょおおおお!?
卑怯じゃなくて工夫してるって言ってよおおおお!
「次の指示をお待ちしています」
じゃあもう今日はラスト! サイバー騎士を描いて!
「はい」
おおおおおおおおおお!!
いいじゃんいいじゃん! これだよこれこれ!
「ご満足いただけましたでしょうか」
いいね最高! これで月10$は安いね!
有料版を買えば、著作権は出力した人にあるんだって!
AI絵ー師、気持ち良すぎだろ!
気、持ち、良すぎだろー!
「今回出力した絵は、実際に作中で使われるのですか?」
もちろん使うヨ! キモいけど素敵な絵をありがとネ!
AI絵師の登場によって、イラスト業界は大きく変わるだろう。今はまだ不得意でも、これからAI絵師は萌え絵やエロ絵も学んでいく。そして小説業界もまた、安価でクオリティの高い挿し絵に少なくない数の作者が手を伸ばすはずだ。
しかし私はそれで既存の絵師の価値が消えるとは思わない。
私たちの前には未知の未来が広がっている。だからこそ私は未来への希望を感じている。機械が絵の描き方を学んだのならば、きっと人間絵師は新たな学びを見つけ、さらなる進歩を遂げるだろう。
機械が絵を描けても、描かれた絵に価値をつけられる者は人間だけなのだから。
デデンデンデデン! デデンデンデデン!
特に宣伝とかじゃないんですけど、こんな絵が使われた小説が本当にあるのか気になる方のために一応置いておきます。
【たとえ神に選ばれなくても】
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