38、第二王女(2)
イルヴァン様と一緒にお父様の執務室に行くとお母様もおられたから、イルヴァン様との関係が知られたことがわかった。
わたくしはお姉様を裏切った事に今になって怖くなったけど、イルヴァンと別れるのはもっと恐ろしかった。
「そなたらは何を考えておるのだ」
お父様は苦しげに聞いてきたけど、わたくしは自分の気持ちを必死に訴えた。
「イルヴァン様を愛しているの。お姉様の婚約者だってわかっていても止められないの!
イルヴァン様と離れたら死んでしまうわ!!」
お父様は何も言わなかった。
お母様は泣くわたくしの背を擦りながら、味方になってくれた。
「これ程想っているのに別れさせるなど可哀想ですわ。」
お父様はイルヴァン様に怒りを向けた。
「そなたとユーリアシェの婚姻は政略的なものだ。
そなたもわかっていると思っておった。
王配になる未来を捨ててでもリーシェを選ぶつもりか?」
「私の立場はわかっています。ですがリーシェ姫への気持ちを、どうすることもできませんでした。
ユーリアシェ殿下なら理解して下さるでしょう。」
お父様がイルヴァン様の真意を探るように見ていたけど、納得されたのかわたくしに顔を向けた。
「リーシェ、イルヴァンと結ばれたいならそなたが王太女にならねばならん。
その覚悟はあるか?」
わたくしは嬉しさのあまりお父様にだきついた。
「イルヴァン様といられるならなんだってします!お父様ありがとう!!」
わたくしは世界で一番幸せな花嫁になれると思えた。
そして謁見の間でお父様が婚約者と王太女交代を発表した。
祝福してくれると思ったのに、お姉様は一人で立っていられないほど動揺され、出席していた貴族の男性に支えられ出ていった。
それから出席していた人たちから、お姉様を擁護する言葉や、わたくし達を非難する言葉が飛び交った。
「これでは45年前と同じではないですか!?」
貴族の誰かがそんな事を言った。
わたくしには何の話かわからなかったけれど、その言葉を聞いたお父様がわたくしを見た。
その表情は憎んでいるかのようで、何故かわからなかったけど恐怖を感じた。
お姉様が一緒に出ていった男性(スード辺境伯子息)と戻られて本当に平民になると言う。
わたくしのせいでお姉様が王族を離れるなんて止めてほしい。
イルヴァン様もそういったけど、お姉様も辺境伯子息様もわたくしが王太女では国が混乱すると言う。
お父様もわたくしを責める。
どうして?
お姉様はイルヴァン様を愛してないのに!
女王にならなくてもお姉様の価値は変わらないのに!
わたくしの手から幸せが零れていくーー




