36、運命の別れ道~波乱~(6)
マドルクは顔を赤くしてユーリアシェに怒鳴る。
「そなたはこのような時に何を言っておるのだ。今そのような場合か!」
「わたくしには無関係にごさいます。」
「なに?」
「陛下が始めに王太女と婚約者の交代を宣言し、王族から離れるのをお許しくださいました。王妃陛下もわたくしを生まなければよかったと仰り、平民となることにも賛成されています。証人はここにいる貴族達です。」
一つ息を吸い吐き出すように告げた。
「サインをして下されば両陛下の望みが叶うのです。」
耳に痛いほどの静けさが舞い戻りユーリアシェはまたかと中身のない話と静寂の繰り返しに疲れが溜まっていく。
マドルクは唸るように聞いてきた。
「そなたはこの国がどうなってもいいのか?王太女の地位が無くなれば己には関係ないとよくも言えたものだな!!」
前のユーリアシェなら父王に愛を求めていたから不興を買わないようにしただろうが、そんなものに何の価値もないともう知っている。
「何の瑕疵もないわたくしを捨てたのは陛下達です。わたくしは国の為になすべき事をなしました。これ以上出来ることはありません。これからは両陛下と王太女となるリーシュのすべき事です。」
「そなたには失望した。」
吐き捨てるようにユーリアシェに向かって言う。
「不敬を承知で言わせて頂けば、陛下がわたくしに何かを期待した事があったでしょうか?わたくしは陛下と私的な会話をしたことも、陛下と今日までまともに目を合わせたこともありませんでした。
そのような関係で失望される何かがあったのでしょうか。」
親子らしい会話などなく王太女という駒の扱いしかしなかった。
思い通りに動かなければ捨てる程度の駒に失望とは、乾いた笑いが込み上げてくる。
「それでもそなたはわしの娘だ。」
国王が力なく呟く。
情など無いくせにこちらには情を求めるなど浅ましい。
父だと言う男に平坦な声で答えた。
「ええ、実の親に生まなければよかったと言われる程度の娘です。
国王陛下、王妃陛下、サインを」
これ以上の会話の無意味さに気づいたのか、マドルクは持ってきた2枚の紙にサインと王印をする。
シルフィーラもユーリアシェを憎々しげに見てサインをした。王太女褫奪書にユーリアシェがサインをし終わった時、自分の中から何かが抜けるのを感じた。
「国王陛下、王妃陛下これまでありがとうございました。
両陛下のご多幸をお祈り申し上げます」
最敬礼をし、別れの挨拶をして踵を返し歩き出した後は振り返ることなく謁見の間を出ていった。
その姿はこの中の誰よりも気高く美しかった。
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次回からざまぁが始まります。




