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第33話 運命の別れ道~波乱~(3)

場に再び静寂が漂う。

シルフィーラは唇を震わせるだけで言葉が出てこないようだ。

その空気を破ったのはこの国の頂点に座する男だった。


「もうやめよ。

王妃よ、そなたは母として言ってはならぬ事を言った。それすらもわからんのか。」


疲れたようにマドルクはシルフィーラを睨む。


「陛下!わたくしはーーー」


「もうよい!!」


なおも反論しようとする王妃に対して国王は吐き捨てるように遮る。

臣下の見ている前でこれ以上の失言は、只でさえ落ちている威信を更に落とすことになる。


(いや、今さら止めても遅すぎるでしょ。初めは私が唯々諾々と従うと思ってたから始めたんだろうし。残念だったね~)


どこまでも他人事のような気持ちにしかなれない。


「ユーリアシェ、そなたが思う以上に平民とは甘いものではない。そなたに何があろうと王家は関与せぬ。それでも王族から離れるつもりか?」


ユーリアシェもカーティスに言われるまで楽天的だったので、返す言葉が見つからない。

ユーリアシェが黙っていると後ろから何かを押し殺したような声がきこえた。


「国王陛下。発言をお許しください」


今まで気配を消し、存在を忘れていた男に皆が注視する。

マドルクも訝しげに発言の許可をだした。


「ユーリアシェ殿下の身はスード辺境伯が預かりお守り致します。父であるテバンの承諾も取っております。」


その言葉に場は騒然とする。

東の辺境領に、降りたとはいえ王太女であったユーリアシェが身を置けばスード辺境領の重要性が一気に高まり、貴族間のパワーバランスが崩れる事を意味する。


「お待ちください!」

「それでは余計国が乱れる!」

「東伯は何を考えているのだ?!」


誰もが反対の声を上げ、国王とて容易に諾と言える話ではない。


「何故スード辺境伯が?そなた達に親交があったとも思えぬ。そのような事をすれば東伯の野心を疑わねばならぬ。」


ユーリアシェが6才の時に、2ヶ月スード辺境領で療養したのを完全に忘れている様子のマドルクに、本当にユーリアシェに興味が無かったんだなと乾いた笑いがもれそうになる。

カーティスはユーリアシェの心の内を読んだかのように大袈裟に驚いてみせた。


「不思議な事を仰いますね。殿下が6才の砌にスードで視察団による過酷な仕打ちのせいで病に伏した事をお忘れですか。母が詳細と視察団の厳罰を求めた手紙を送ったと言っていましたが·····」


思い出せとばかりに言葉を切る。


「あ、ああ。覚えているとも!」


「その時に畏れ多くも殿下と親交を深めたのです。両親も幼い殿下の困憊された姿が忘れられず、ずっと案じていました。

そして殿下の婚約者のすげ替えと王太女交代の噂を聞き、もしそのような恥辱に遇われるのなら殿下の一助になりたい、とスード一同の心胸(しんきょう)にございます。」

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