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第22話 運命の別れ道~謁見の間~(4)

また場に静寂が戻った。

国王マドルクや、イルヴァンが根回しはしていただろうが、今回は地方領主も何人か来ている。

そこまでは手が回らなかったのだろう。

だからこそ強引に事を進めることが出来ずにいる。


「今日呼んだのはそなたの婚姻の事だ」


やっと話す気になったようだ。だがそちらの流れに乗るつもりは初めからない。


「まあ、ありがとうごさいます。待ち望んでおりました。」


頬をうっすらと染め、年頃の娘が夢見るように喜んでいる表情を頑張って作る。

それを見てマドルクは苦虫を噛み潰したような顔をした。


「そなたもわかっているだろう」


「何をでしょうか?」


不思議そうに小首を傾げて聞いた。


マドルクもこんな流れで妹が姉の婚約者と愛し合っているなどと言うことはさすがにできないようだ。

また場に静寂が戻る。

次に動き出すのは誰か?皆の好奇心はおそらくそんなものだろう。

そして予想通りの人物が口を開いた。


「お姉様!ごめんなさい。わたくしとイルヴァン様は愛し合っているの!!」


この状態が耐えられなくなるのはリーシェだと思っていたが想像以上に愚かだった。イルヴァンは焦ってリーシェを止めている。

扇で口元を隠し体を小刻みに震わせる。


「陛下」


声も震わせてマドルクを見る。


「そういう事だ」


その言葉を聞いてユーリアシェの体はふらついたが、倒れそうになる所で硬い腕に抱き止められる。


「お姉様!ごめんなさい!許して!!」


イルヴァンの制止も聞かずリーシェは泣きながらユーリアシェに謝罪を続ける。

ユーリアシェは抱き止めてくれた男性を見て弱々しくお礼を言う。


「ありがとうごさいます。貴方がいてくれなければ無様な姿をさらすことになったでしょう」


「いいや、生まれたときからの婚約者を妹に奪われ(・・・・・)たんだ。これほどの裏切りにあって落ち着いていられる訳がない。しかも先程の陛下のお言葉からすると知らなかったのは貴女だけ(・・・・)のようだ」


「・・・」


抱き止めてくれた男性ー辺境伯子息カーティス・フォン・スードは動揺するのは当然だとユーリアシェを憐れんだ。

謁見の間にいる貴族達もカーティスの言葉に、リーシェの真実の愛よりも妹に婚約者を奪われた姉に同情が集まっていた。


「白々しい!2人が愛し合っていた事など知っていたでしょう!!何を今さらーーー」


「やめないか!!」


リーシェが悪者になることに我慢できなかったシルフィーラは金切り声を上げてユーリアシェを責めようとしたが、マドルクに止められる。


ユーリアシェはカーティスから離れた。


「大丈夫か?」


「大丈夫ですわ。慣れていますもの」


その言葉と先程からの王妃の言動に国王夫妻が、王太女である娘を蔑ろにしているという噂が本当だったのだと、この場にいた者に周知させた。

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