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第10話ハルシュ地方(5)


「私めはただ正して頂きたかっただけでございます。」

その背は真っ直ぐに伸び、ひたとユーリアシェを見つめている。

「正す?」

「貴女様が仰ったではありませんか。領主は領民を保護しなければならないと。騎士や役人は領民を守る義務があると。

これまでルオル村だけでなく、ハルシュ地方の民すべてが苦しめられてきました。彼等は与えられるのが当たり前で、与えるなどと考えたこともなく傍若無人に振る舞い、私めは何もできず、それを見続けることしかできませんでした。

しかし貴女様が来られ、ルオルの村人を守るため、ご自身の権限を村人達の為に使って下さった。貴女様ならベーシュ一族を退け、ハルシュの民を正しき方向へ導いて下さるのではないかと思ったのです。」


だから、彼等を呼ぶときに何も言わず会議中も沈黙を貫いていた。


「そなたの期待に応えられるほどの事はできないわ。復興の目処がついたらわたくしはここから去らなければならない。でも地均しだけはしていくと約束しましょう」


彼の求める事はユーリアシェの立場では難しい。自分にそこまでの権力(ちから)が無いことを痛感し自嘲する。


イグルスは徐に跪き首を深く垂れた。

「そのお言葉だけで充分でございます。王太女殿下に対し不敬を働き謝罪の言葉もございません。自室にて処罰を待ちますので御前失礼いたします」


立ち上がったイグルスを見たとき、嫌な決意をしたなと思った。ユーリアシェの記憶に掠めるようにある死をまえにした者の顔だ。

何故彼がそんな覚悟をしなければならないのか、この時のユーリアシェにはわからなかった。

だが死のうとするのを放って等おけない。


「イグルス、わたくしは今から騎士、文官のところに行き後任を決め再編成し、ルオル村の復興対策をしなければならない。ハルシュに初めて来たわたくしには荷が勝ちすぎる。そなたに手伝って欲しい」


イグルスは驚いたように目を見開く。

「私めを信用されるのですか?」

その言葉にユーリアシェはふっと笑う。

「信用は今からのそなたの言動によるが、わたくしの先程の護衛よりは信用しているわ。」

護衛騎士でありながら退室を命じられるという、護衛失格の烙印を押された騎士よりマシだと伝えると微妙な顔を一瞬浮かべたが、瞬きのまに執事の顔に戻った。

「では信用に値するよう努めさせて頂きます。」


瞳の奥に強い意思を感じ、死から遠のいたことに安堵した。


なかなかな掘り出し物に当たったのではないだろうか、ユーリアシェはこの世界で初めて自分を真正面から見てくれる人と出会った気がした。


そして彼の死を決意した理由を、この後の調査で知ることになる。

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