南の紅い幻
97話目です。アドネスの策により組み分けを変えられた、ルーグの視点の場面です。
「これはやられたな。」
「そうだな。引っ掻き回されるとは予想していたが、この手でくるとは。でも奴らは失敗してると思うぜ、俺らを一緒にして。」
「はは、確かに。」
少し前、塔へ侵入し重苦しい扉を開け中に入ると光に包まれイネスがいなくなっていた。
代わりに何故かオズカルのギルド長、リューガ殿がいた。どうやら俺と同じように塔の中の扉を開けて入った瞬間に光に包まれ、気づくとここにいたという。
リューガ殿を見た時には驚いたが、イネスがいないことの方が重要だ。
リューガ殿と同じように別の塔に飛ばされただろうが、先ほどまで見せていた不安げな表情を思うと早くそばにいてやりたい気持ちが膨れていく。
自然と先に急ぎたくなる足を動かして先に進もうとすると、リューガ殿に肩を掴まれた。
「はやる気持ちはわかるが、よく見ろよ周りも自分も。ここで見落として先手打たれたらどうするつもりだ、冷静になれ。」
俺の心情を汲み取った上で、やるべきことを諭すリューガ殿。
俺と目を合わせて話しているけど、周囲への警戒は一切途切れていない。咄嗟の変化にも瞬時に切り替えられるその精神力は脱帽ものだ、俺もまだまだだと思い知らされる。
「…すみません。ありがとうございます。」
「なに、俺は場数踏んでいるからな。お前も筋はいいんだから、いずれ俺みたいに後輩にそう言える日が来るさ。ま、まずはここを切り抜けなきゃだけどな。…おっしゃ、行こうか!後方は俺に任せろ。」
「はい!」
真っ暗で周りが見えない静かな空間に俺たちの足音だけがなる。音がかすかに返ってくる感じはするから遠めに壁があるはず。
照明がわりにと火炎系スキルを使おうかと思ったが、空間の範囲がわからないし何かのトラップが発動する可能性があるため使用できないでいる。
そのままの状態で歩くこと数分だろう、突然空気が変わった。
妙に甘ったるい香りがする。嗅いだことのあるそれに反応して声を上げる。
「リューガ殿!匂いが変わりました、嗅がないでください!これは…。」
「分かっている、魔族女の【魅了】のやつだろ?俺には効かないから安心しろって。それより…。」
何か対策しているのか自信たっぷりに効かないというリューガ殿が、大きく息を吸ってキリーナがいるであろう空間に向かって大声を上げる。
「いい加減隠れていねえで出てこいよ?!俺たちに色仕掛けするなら姿見せてから、その魅力のないご自慢の容姿を見せびらかしてみろ!」
「…随分失礼なことをいうのね?ひどい人。」
紅い霧が現れその中からゆっくりと姿を現したキリーナ。
先ほどと同じ格好だけれども、少し余裕が欠けているようにも見える。
「そりゃ、お前さんには全く魅力を感じないからな。それよりとっとと退いてくれよな、こっちは急いでるんで。」
「そんなこと言わないでよ。しばらく私と遊んでもらうわ、そして私のお人形になって…お仕置きしなきゃいけないわね!」
キリーナの周りを漂っていた紅い霧が動き、俺たちを囲う。
その中から先ほども見たいくつもの短剣が出てきた、そのまま俺たちに向かって放たれる。
それを難なく叩き落とすリューガさん。
ガタイがいいのでてっきり武器は重量のある大剣や大槌なのかと思っていたのだが、意外にもムカデの足のような刃がついていて、鞭のようにしなる連結型の剣だ。
魔力を通してしならせ、止めると刀身が集まり一本の細身の剣となる。関節部分は通す魔力によって長さを調整できるようで、背中を合わせて立っていた俺に向かってきたナイフもその刃で叩き落とした。
「どうした?大道芸も品切れか?」
「減らず口を言うのはおやめなさい?あまり怒らせないで欲しいわ、美容に悪いもの。」
「それは悪かったな、その気遣いももう意味ないだろうけどな。」
「…ほんとに生意気なガキね。」
額に青筋が立たせたキリーナが手を胸の前で合わせた。ゆっくり開くと赤い薔薇の装飾のついた杖が出てきた。
「あなたたちにはもったいない、とっておきをあげるわ。」
そう言って杖を掲げて空に円を描くように回し始める。徐々に赤く光っていく杖の先端が綺麗なはずなのに不気味さもある。
気づくと足元にも同じ光が灯っていた。リューガ殿も気づいているのだろう、武器を持つ手に力が入っている。
杖を動かすのをやめると、ニヤリとわらうキリーナ。
「美しき薔薇の前で跪きなさい!【ニール・ソーン】」
足元から赤く光る荊伸びてきて俺たちの腕や足に絡みつき、地面に叩きつけられる。
抵抗しようと立ちあがろうとすると、まるで跪いた姿勢になった、キリーナはその姿に満足げにみる。
荊自体に痛みはないのだが、体の中へ何かが入り込んでいく感覚がして気持ち悪い。
「いい眺めね。そのまま私のものになりなさい。」
荊が増えてますます身動きが取りづらくなる。その拍子に剣を落としてしまった。
他に何かないかと思い、手を腰に当てると何かに当たった。ファッションショー用に借りていた剣だ、何故か鞘から抜けないけれど、力技で強引になら切れるかもしれないと根拠がないのに思い、柄を掴む。
途端に体が軽くなった気がした。
いける!と瞬時に理解し、思いっきり荊を薙ぎ払うように大きく振るう。嘘みたいにあっさりと外れ、キリーナは驚愕の顔をする。
そのままリューガ殿の荊も斬り外し、身動きが取れるようになったリューガ殿は俺の脇スレスレの距離で剣をしならせキリーナを斬りつける。
反撃への反応が遅れたキリーナは右肩を抉られ、動かなくなった右腕がダランとぶら下がる。痛みに耐えながら手で止血をしているキリーナの前で俺は落ちていた剣を拾い構え直す。
リューガ殿の剣はまだ攻撃をやめていなかった。キリーナの抵抗の短剣を打ち落としながら、軌道を幾度も変えてその体へ斬りつける。徐々に服が破れ、切り傷が増えていくキリーナのその顔は痛みや憤怒の情で歪んでいる。
リューガ殿が手前に剣を思いっきり引くと、刀身が縄のようにキリーナを縛る。刺さる刃に苦痛の声を上げる。
「ギャァ!」
「…おかしい。どうも弱っちいな?お前、何を企んでいる?」
ギリギリと締め付けながら問うリューガ殿に対してニヤリと笑うキリーナ。
「はぁ、はぁ、もう今気づいても遅いわ。…素敵な夢に溺れなさい。」
キリーナの言葉に呼応するように赤い光の小さい球体が次々と現れた。
強くなる甘い匂いと赤い光で視界が真っ赤に染まり、バリンと何かが割れる大きい音がした。あまりの音量に思わず耳や目を塞ぐ。
目を開けるとキリーナやリューガ殿の姿がない。
周りを見渡そうとすると、一番会いたい人の声が聞こえた。
「…グさ…、ルーグさん、何処?!っていた!!」
「イネス?無事か?!」
「うん、大丈夫。」
駆け寄ってきたイネスには外傷はない。
「イネス、リューガ殿は見なかったか?」
「さっきまで一緒にいたよ?ルーグさんが消えたって言ってたから今までずっと探してたんだから!」
「消えた?」
「キリーナにトドメを刺す直前に姿が消えたって。リューガさんはその後、ちゃんとトドメ刺して、転移して他のみんなと地下の空間で合流してステラさんを救出して、それでも姿が現れないからってみんなでルーグさんを探してたんだよ!そっちこそ怪我は?!」
「俺は…ない。黒幕は?」
「…ごめん、逃げられてる。今ロッドやアレンが追っているから、私はルーグさんを探す方を優先させてもらった。…。」
そう言って俺に抱きついてきたイネス。
「…ほんっとうに、心配したんだよ?!大怪我していたらどうしようって、キリーナに惑わされているんじゃないかって!…何か、あったらって…。」
肩を震わせて俺の胸に顔を埋めるイネス。その肩に左手を添え落ち着かせようと優しく撫でる。
俺からは見えないその顔がニヤリと笑う、背中から短剣を持った手が伸びてそれを突き立てようとする。
しかしその短剣は音を立てて床に転がった。
短剣を持っていた人物が苦痛と驚きの混じった表情で数歩下がって俺から離れる。右手で思いっきり殴ったから相当痛いはずだ。みぞおち辺りを押さえて俺を睨みつける。
その様子に半ば呆れ顔で話す。
「あんまり見くびるんじゃねえよ。惚れた女くらい本物かどうか見極められるに決まってんだろ。それに騙そうとする奴は確実に攻撃できると思った瞬間が一番油断するからな。」
嘲笑うかのようにフッと笑うと、目の前の偽物の姿がイネスから泥のように歪んで形を変え始める。周りの景色が暗くなってきた。
そして偽物は母上の姿になった、蔑むような目で俺を見る。
「王族としての自覚も品格もない、どうしようもない子供ね。」
また姿を変えて今度は睨む兄上の姿に。
「なんでそんな顔をしてるんだよ、俺に責任全て押し付けて逃げてようとしているくせに。卑怯者。」
そして父上の姿。こちらを見てもいない。
「…お前がここにいる意味はない。…早く消えろ。」
かつて聞いた、胸を深く刺した言葉を突きつけられる。
その言葉で俯く俺に人影が近づく。そして静かに素早く俺の間合いに忍び込んだようだが、俺はあっさりとその体ごと跳ね返す。
勢いで床に転がった人影はキリーナだった。
「どうやって知ったか知らねえが、勘違いも甚だしいな。あれらの言葉は言い方はキツイが傷つける意味はない。勝手に悲劇にすんなよ、腹立たしい。」
一歩一歩キリーナに近づきながら当時を思い出す。
母上からの言葉は励ましだった。
俺は幼い頃から王族としての作法や裏ばかりのある交流を嫌い、こっそり抜け出しては野を駆け回り泥を被って帰り、政の重鎮たちに蔑まれ後ろ指を指されていた。今はなんとも思わないが、子供心にその反応は傷つき、隠れて泣いていた。
ある時泣いていたところを母上に見られ、母上の私室に連れて行かれて滅多にしない膝枕で慰めてくれた。母上曰く膝枕は特別に想う相手にしかしないんだとか。だから父上と2人っきりの時に父上にだけする姿しか見たことない(これは兄上とこっそり見たことがある)。
頭を撫でながら優しく言ってくれた。
『あなたは周りから見たら真っ直ぐ過ぎちゃうから、王族としての自覚も品格もない、どうしようもない子供ね。でもその心の感じ方を忘れることをしなくていいの、そのままのあなたでいいの。私たち家族がどんなことがあっても味方なんだからね。』
愚かな子だと自分を蔑みかけていた俺を肯定してくれたこの言葉で、俺は味方でいてくれる家族に泥を被らせたくないと気持ちを強く持つようになり、武力でも作法でも周りに言い負かすくらいの自分だけの武器を磨き続けることになった。
兄上からの言葉は払拭だった。
俺が成人となり政にも参加するようになった。主に外交について行って他国を視察したり会議に出席したりするばかりだったが、自国にない政策や成功した風景が俺にとって斬新で興味深かった。
そして自分の足で他の種族や視察先以外の普段の他国のいろんな風景を見たいと思うのに時間はそうかからなかった、いや、回数を重ねるごとにその思いは強くなっていった。
でもその頃は兄上は父上の後継として様々な政策を思案し、手腕を身につけようと寝る暇もない多忙な時だった。俺も弟として兄上を支えたい気持ちでサポートを陰ながらしていた。
執務室の窓を通して他国の情景を思い浮かべている時に、いつの間にか隣にいた兄上に小突かれた。
『上の空で仕事してたらミスるぞ。今のお前の気持ち当ててやろうか?旅をしていろんな景色を見たいんだろ?わかるってそんなことくらい!ってか思い切って行ってこいよ!
…なんでそんな顔をしてるんだよ、俺に責任全て押し付けて逃げようとしてるくせに。卑怯者。って言うと思ったか?ば〜っか!…っておい、殴ろうとすんなよ?!
俺はここから出ることはないだろうけど、その分いやそれ以上の景色をお前が見てこい!どうせお前は必ずここに戻ってくるだろし、その時に教えてくれよ。見たもの、感じたもの、考えたこと、全部。俺はお前の目を信じているし頼りにしているんだからな!』
俺がいなくなった時を考えて踏み出せずに悩んでいたのを、背中を強く叩く勢いで押してくれた。
そのおかげで俺はいろんなものを見て、考えて、兄上に土産物と一緒に伝えてと充実した日々を過ごすようになった。それが他種族との交流政策や他国との交渉にも役に立つこともあったし…大事だと想う人にも出会えた。
父上からの言葉は信頼だった。
兄上の代わりに父上や護衛数人と一緒に辺境近くの村への視察からの帰りで、突然の襲撃にあった時だ。
襲ってきた連中は山賊風の格好をしていたが、熟練の戦士の如くの動きで何者かの刺客であることはわかった。だがこちらも王の身辺を守る者たちだ、瞬時に応戦し途中まではこちらが優勢であった。
しかし間の悪いことに、近くで薬草採りをしていた親子を連中は人質に捕り、こちらの動きを封じ始めた途端劣勢に転じた。攻撃をしようとすると、捕らえている2人組の男が親子に向けて刃をつきたてようとするので、それをさせまいと攻撃をやめると連中からの攻撃が襲いかかり、防戦しか出来なくなった。
しばらくの防戦に痺れを切らした俺は、人質から刃が離れた隙を狙い飛びかかった。先に子供を捕らえていた男をぶっ飛ばして子供を救出し、親を捕らえていた男と数度刃をぶつけ合った。
その間に親を子供の元へ送ったはいいが、ぶっ飛ばした男が親子を斬りつけようとしていた姿を見て、すぐ対峙していた男を倒し、自分の身を盾にするように前に出た。軌道をなんとかずらし、右目近くを掠るように切られたが倒して親子の無事を確認した。
切られたところからの出血で右目が開けない状態になったが戦える、そう思って武器を構えていると父上が滅多に出さない大声を出した。
豪快に敵を切りつけてこちらにジリジリと近づいてくる父上の姿が目に入る。一瞬俺の姿を確認して敵の攻撃を避けた反動を利用して俺の前に立った。
『何をしている?!早くその者たちを遠くへ逃がせ!…その程度の傷だろうが、今の状況では命取りになりかねんぞ。…お前がここにいる意味はない。…早く消えろ。後ろの者たちを逃した後、お前がやるべきことをしろ。…二度も言わすな!行け!』
父上はそう言って拳を叩きつけ地岩系スキル【大地割り】で地割れを起こして敵味方関係なしに錯乱し始めた。その隙に俺は後ろ髪を引かれながら親子を連れて逃げた。
親子を抱えながらひたすら走り、一番近い村についてすぐ親子を預け、軽く怪我の手当てをしながら足の速いものに隣の街にいる警備兵に援軍要請を託した。しばらくして到着した警備兵と戦闘意思のある者たちを連れて父上たちのもとへと戻っていった。
お互いに疲弊状態だったようで俺たちが到着すると、襲撃してきた連中は蜘蛛の子を散らす勢いで去っていった。幸いにも死者はいなくて、重症者も少なく父上も無事だった。
俺は逃してくれた礼と申し訳なさの気持ちで父上の手当てをさせてもらった。無言で受けていた父上は手当てを終えると一言『…気にするな。』と言って、すぐ他のものへと指示をしながら動いていった。
あの時ほど父上の背中が大きく遠いものだと感じたことはない。
自ら先陣をきり、味方を助け鼓舞し続けた。味方との絆あっての連携技や相当の武才を持った父上を間近で見た俺はどんなに鍛錬を積んでも届かない強者だと強く感じた。
そしてその強者に少しでも近づきたい、信頼にも応えて見せて、いつか追い越してみせると誓いを立てた。
過去の思い出を振り返りながら、足元にキリーナがいる距離まで進んでいた。見上げるその顔は怖さのかけらもなく睨みつけている。
「お前が思うような軽い絆じゃない。お前たちとは違うんだよ。」
そう言ってキリーナに刃を突き刺した。
悲鳴をあげて煙のように消え、周りの景色が歪んでいく。再びバリンと音が鳴った。
景色は元の部屋と同じに戻った、後ろからリューガ殿がやってきた。
「ルーグ、お前も無事だな?…変なの見せられたろ?」
「と言うと、リューガ殿も?」
「おう、見当違いで笑っちまったがな!」
ガハハと笑うと、部屋の奥を指さしながら説明してくれた。
「術にかけられた後アホな幻影をさっさとぶっ飛ばしたんだが、そんときはお前はまだ蹲っていた。でも紅いモヤっぽいのが俺たちから離れて奥に逃げやがった。魔族女だと思っておっかけたんだが、間に合わなくてよ。この先にある転移陣ぽいやつに入って消えていったぜ。」
「と言うことはもう攻撃をしてこない?」
「トラップがまだあるかと警戒したがこの先の部屋にもここにもない。完全にここで始末するつもりでいたんだろうが、詰めが甘すぎるぜ。いやぁ、俺らを見くびりすぎだよな。」
ふと思っていた疑問を聞いてみる。
「そういえば、なぜリューガ殿は魅了が聞かないと断言していたのですか?」
「ああ、それはこいつのおかげだ。」
そう言って腕に巻いている青と黄色の腕輪を見せてくれた。
「オズカルには腕のいい魔導具を売っている奴がいてな。そいつに急遽送ってもらった、外部からの精神干渉系スキルを無効にするこの魔導具をつけていたからだ。」
「へぇ、便利ですね。俺もその人に会ってみたいです。魔導具にも興味ありますし。」
「それなら珍しいぬいぐるみ、用意しとけよ。」
「ぬいぐるみ?」
話しているとリューガ殿の胸元から黄色い光が見えた。
気づいたリューガ殿は光の元である連絡用のネックレスを取り出し、手にひらにのせる。
「おーい、聞こえるか?誰だ?」
『…その声はリューガさんですか?エミリーです。』
「エミリーか、そっちも無事のようだな。こっちはルーグと一緒だがそっちは?」
『こちらは冒険者の方2名と一緒です、バンダナをしている方とタレ目の方。場所は少女のホムンクルスが多数いた場所ですのでおそらく北か東の塔かと。接敵・応戦し、撃退完了です。』
「おう、スムーズに終わったようでよかった。こっちは魔族女がいたから南だろう。やはりあの入り口に俺たちがバラバラにされるように仕掛けがあったと見ていいだろうな。他のやつも上手く合流しているといいが。」
『そうですね。こちらの冒険者の方もお仲間と離されたと言ってましたし、ロッドも少し心配です。』
「そこは奴らの武運を祈れ。とにかく俺たちは先に地下に行って合流するぞ。転移陣を見つけ次第注意して進め。」
『了解です。』
イネスも上手く他のやつと合流していればいいのだが、もし1人なら早く駆け付けないと…もしくはエミリーたちと一緒でサクッと終わらせているかもしれない、うん、その可能性も大いにある。
ともかく先に進もう。そう思い直し、リューガ殿の見つけた奥へと歩みを進める。
「…ところで、リューガ殿はどんな幻影を見せられたんですか?」
「ん?俺はよく知っている女性だった。おそらく魔族女は記憶を断片的に読み取って弱みになりそうな一番親しそうな人を使ったんだろうな。」
「俺もそうでした。イネスだったり、家族の一部分の言葉や言葉に合わない姿で出てきました。」
「そうか。全く、馬鹿な勘違いだったな。おおかた俺が惚れた女だと思ったんだろうが、彼女は好きなやつの嫁さんだから親しいってだけなのにな。」
「そうなん…ん?」
「ほら、あそこだ。行くぞ!」
「え、あ、はい。」
読んでいただきありがとうございます!リューガの幻影は昔からよく会う人の妻、それくらい親しい人とは…。
次回は誰の視点で行くのかお楽しみに?!




