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とりあえず、宿確保

80話目です。王都に来ました!

外門から中に進むにつれて花の香りが強くなってくる、でもそこまでキツく感じないのは程よく風が吹いて香りを多方面に広げているからだろう。花の香りに包まれるとはこう言うことかと思えるくらいだ。

ちらほらと屋台の準備を進める人たちや、街の様子を楽しむ観光客を横目に進むと、広い場所に出た。


大きい噴水を中心に円形に広がる広場となっている。建物は少なくベンチが数カ所置いてあり芝生が敷き詰めてあってサクサクとした足音を楽しむ子供たちがいる。

噴水から少し離れた場所に、祭り用のステージを作っているらしい。作業員たちの忙しそうな掛け声や金槌の音が響いている。


「おお!広くて気持ちいい場所ですね。」

「ここでは演劇とかが披露されるよ。最初は決まってお祭りの起源である創国話、あとは今流行の演劇とかで今年は有志によるファションショーもあるって。」


「ふぁっしょんしょー?」

「ユイランちゃんは知らない?様々な視点やセンスで作られた色んな服をお披露目するんだよ。実際にモデルになった人に着せて歩いてもらって、たくさんの人に見せるんだよ。」


「それって楽しいの?」

「観客は見て楽しい、作った人は見てもらって嬉しいし興味を持たれてお店にきたりするからもっと嬉しい。

あと自分も作りたい!って思う人ができるかもしれない楽しみがあるよ。

それに服をもっとよく見てもらえるように、モデルの人がパフォーマンスしたりして工夫もあって面白いんだよ。」


アレンの説明で目を輝かせるユイランちゃん。

チラリと期待を込めた目でこっちを見てくる。うちの子可愛いね。


「いいよ、当日見にこようね。」

「やったぁ!ありがとうママ!」

「ステージって飛び入りで参加できるのか?」

「流石に創生話とファッションショーは無理だろうけど、使われていない時間はあるからその時に飛び入りとか即興でパフォーマンスする人もいるよ。ルーグさん、知らなかったんですか?」

「俺は腕試し大会以外は興味無かったからな。せっかくなら今年は色々見て回るか、もちろんイネスと一緒に。いいだろう?」


そう言って悪戯する少年のような顔で覗き込んでくる。だから顔近いって!


「断っても付いてくる気ですよね?まあ私たちは初参加ですし、案内人は多い方がいいですからね。あと…。」


私はルーグさんに一歩近づいて声をひそめながら言う。


「その代わり、アレンたちの仲直りの手伝いおねがいしますよ。」

「なるほど、承知した。」


「どした?」

「いいや、デートコースの要望を聞いただけ。」

「デートはしません!」

『しないの?』

「しないよ!?ユイランちゃんも気にしないでいいからね!」


隙あらばのアプローチに感化されていないかな?うちの子?

別にルーグさんが生理的に嫌ってる訳じゃないから余計に断り辛い。でもどう反応していいのかわからなくなるから自分でも動揺しまくっているのがなんか悔しい。

自分で相手を知ることを選んだ訳だし、もう少し冷静に見なきゃ。


ちょこちょこルーグさんのアプローチを受けつつ、滞在期間中泊まる予定の宿屋に到着した。

黄色い屋根に鳥?のような歪なオブジェがついた大きめの宿屋だ。窓の数からして部屋数もかなりある。独特な装飾の付いた取手を躊躇いなく取って開けて中に進むルーグさんに続いて中に入る。

中は所々にお世辞にも綺麗とは言えない芸術品が並ぶエントランスに上階に続く階段、一階奥にも部屋があるようで人が行き来している。入って真っ直ぐの中央に受付があって、3人の女性がいる。その中で落ち着いた雰囲気の老婦人に話しかけるルーグさん。


「こんにちは、ミレグさん。一年ぶりですね。」

「あら、今年も当館をご利用されるのですね、ありがとうございます。お連れ様は…初めての方々ですね。

私は当館『黎明の雫』の副支配人のミレグと申します。この度は当館の利用を選んでいただきありがとうございます。」

「部屋数は…3つ欲しいんだが、空いてる?」

「3部屋でございますね。確認いたします。…ええ。ご希望の部屋数は空いておりますが、離れてしまいますがいかがいたしますか?」

「ああ、構わない。部屋もおまかせにするよ。」

「ありがとうございます。では少々お待ちください。」


ミレグさんが奥に入って行ったタイミングで、アレンがコソッと言う。


「ここ、めちゃくちゃやばいよ。貴族御用達の宿で、一泊でも俺たち冒険者の半年分の報酬金でも入れないくらい高いんだけど。」

「…ちなみに具体的な金額は?」

「低くて100ボールガ、高いところなんて1ダルガだよ。」

(え〜と、日本円に換算すると、低いところは100万円、高いところは1千万!?)


「だ、だいじょ、ぶかな?向こうで報奨金もらったけど足りなさそうかも?」

「俺なんてそんなに言えるほど持ってる訳ないだろ?!ルーグさんってやっぱ貴族様ってことだろ?良いのかよ俺たち一緒にいて?」

「『やっぱ』って気づいてたの?」

「なんとなくお嬢に似てる雰囲気だからさ、直感的なものだったんだけど。…どうする?」

「でもここまできて断れないんじゃ…。」


「さっきから何コソコソしてんだ?」


不機嫌気味なルーグさんの声でバッと2人して顔を上げと、腕を組んでこちらをジトリと見ている。


「アレンさん、近いからちょっと離れてくれ。俺がそこまで長く近づけないのに、当てつけみたいなことしないでくれよ。」

「最初に言うのはそれですか?」

「俺にとっては一番気にすることなんだよ。…おおかた支払いのことで気にしてんだろ?」

「ご名答です。俺らには到底払えそうにないですよ。それに場違い感が半端無いです。」

「それこそ気にすることはない。ここはお忍び目的で使われることが多いから素性の探り合いもないし、言い合いもない。支払いも俺が全部受け持つからな。遠慮なくルームサービスも使え。」

「いやいやいや!流石に悪いですって!」


「なぁに、もちろんそれなりの見返りはもらう。」


ニヤリと笑うルーグさんが、どこぞの悪代官に見える。お主()悪よのう。


「見返り…って?」

「イネスにはもちろん一日独占権だろ?アレンさんには…後で言う。」

「うわ、ズルイ!断りづらい!」

「後でって怖いんですけど?!」

「私は?」

「ユイランは…考えとく。」


ルーグさんだからユイランちゃんに酷いことは言わないだろうけどなんか不安。

そんなふうに思っているとミレグさんが戻ってきた。


「お待たせいたしました。お部屋のご案内の準備ができました。」

「ああ、よろしく頼む。」

「ではご案内いたします。皆様こちらへどうぞ。」


ミレグさんの案内で部屋に移動する。私とユイランちゃんは3階、アレンは4階、ルーグさんは6階の部屋になった。

ちなみにこの宿屋は7階建て。

歩きながらルーグさんが後の過ごし方の提案をする。


「それじゃ一旦部屋に荷物置いて、夕方にエントランスで集合にしようか。部屋の把握もしておきたいだろ?」

「それは助かります。」

「夕食は近くにあるおすすめの店があるからそこに行こうぜ。」

「…そこもお高いんじゃ…。」

「ははは!そう身構えるなよ、アレンさん。普通の酒屋だよ。そこの燻製料理が1番美味いからぜひ食べてほしいんだよ。」

「ん?もしかしてツルさんの?」

「おう、そこそこ!知ってんならわかるだろ?」

「確かにあそこの料理は美味い。しかも酒のセンスもいい。イネスもユイランちゃんも楽しめること間違いなしだ。」


「しかし、イネスと部屋が離れるのは残念だ。夜這いができない。」

「よばい?」

「何言ってるんですか?!ユイランちゃん、今のは知らなくていいからね!」

「おほほ、そういうことになりそうなので離しておきましたの。」

「お気遣いに深く感謝します!」

「どういたしまして。」


ミレグさん、グッジョブです!


2階に登り、階段そばのフリースペースで私たちの部屋の鍵を渡される。

ルーグさんとアレンは階段で待機している。


「御二方のお部屋はこちら右側の8号室になります。案内はここまでになりますので、詳しい説明等はお部屋に備えておりますボードをご覧ください。」


「わかりました。ありがとうございます。」

「ありがとうございます!」

「あと…」


ふと私の方に近づき小声で

「先程はあのように言っておりましたが、彼は紳士的で家族や大切な方を宝物のように接する優しい方ですので、ぜひご検討ください。」

と言った。


そして何食わぬ顔で、ルーグさんとアレンを案内しながら階段を登って行った。ブルータス、お前もか?!

3人が見えなくなってから部屋へ移動する。手を繋いでいたユイランちゃんが開けたくてしょうがないようなので、代わりに開けてもらい中へと入る。


道中は休めた気がしなかったからなぁ、ゆっくり休みたい。


読んでいただきありがとうございます。お祭りを楽しむ前に準備はしっかりとしないとね。

誤字脱字などありましたらぜひご指摘お願いします。

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