ピクニックへ行こう!
72話目です。ほのぼのとピクニックに…?
どうしてこうなった。
晴れやかな青空の下で繰り広げられている戦い、舞い散る草花、こちらにもくる風圧。
女性陣の声援を聞き遠い目をしながら見ている自分がいた。
集合2時間半前。復興作業もだいぶ落ち着き、町の雰囲気も平穏になりつつある。
ピクニック用のお弁当を作るため私とユイランちゃん、ステラさん、エミリーさんで集まっている。場所は教会近くの倉庫だった小屋。整理されて何も無くなっていたので、調理場に改造されている。
「では!男どもを色んな意味で唸らせるお弁当を作りましょう!!」
「おー!」「ええ?」「うふふ。」
元気のいいユイランちゃん、戸惑い気味のステラさん、黒い笑みのエミリーさんが返事をする。
「色んな意味でってどう言うことですの?」
「それはね皆で食べるのとは別で、個人に渡したいお弁当を作りましょってこと!誰に作るかは内緒でもいいし話してもいいよ。」
「ええ?!」
私の説明でちょっと動揺するステラさん。単純に考えたら、気のある人が誰かってバラすようなものだもんね。
ユイランちゃんはう〜んと考えた後、私に聞いてきた。
「ママ、それってソウエンさんのは別に渡すからついでにって事?」
「さすがユイランちゃん、その通り!」
「なぜソウエンさんには別ですの?」
「ソウエンは激辛が好きでね、一緒にいる間はソウエンが認めるくらいの激辛料理を作るって約束しているんだ。まだ認められていないんだよね。」
「見た目もすごくて匂いで目が痛くなるくらいの作っているんだけどまだなんだよね。」
「…そんなに辛くしているのにですか?」
「うん、まだ。」
「だったら、私セゾンさんに作りたい!」
「え、何でなの?やっぱりイケメンだから?」
「イケメン?えっとね、薬草から作るお薬とか栄養剤を教えてもらったの。あとね、かあさまとねえさまに送る花の栞、一緒に作ってくれたの!」
「少女の心もつかむとは、モテ男恐るべし!」
「なんか違うと思いますが…。」
「私はクルスとソウエンにだな、クルスにも作っておかないと拗ねるかも。ステラさんはどうします?」
「せっかくの機会ですし、是非作りませんか?ロッドに。」
「え!で、でも…。」
「私もアレンに作りますよ。ね?」
エミリーさんに言われてモジモジするステラさん。実はこのお弁当プレゼントはエミリーさん発案なのだ。
何があったかわからないけど、アレンさんに仕返ししたいので何かないかと相談された時にピクニックに行く話をした。
ならば!と言うことで決まったんだだけど、ステラさんにチャンスをあげたい意味もあったのじゃないかと今なら思う。
「何で、ロッドさんに作ってっていうの?」
子供だからこその直球の質問。
その質問に顔を赤くするステラさんの代わりにエミリーさんが答える。
「それはですね、ロッドとお嬢様は婚約しているからです。」
「こんやく?」
「つまり結婚の約束をしている、近いうちに夫婦になると言うことです。」
「へぇ〜!そうなんだ!えっと、おめでとうございます!」
「ま、まだ早いですわ!で、でも、ありがとうございますわ…。」
この世界では15歳から成人とみなされているので結婚も飲酒もできる。
私は再会した時に婚約のことは聞いて驚いたのだが、もっと驚いたのが婚約を申し込んだのがステラさんの方だったこと。
最初はロッドさんは嬉しいけども身分差を気にして渋っていたのだが、ステラさんのお父さんである公爵から知人の子爵の養子入りを提案…もとい余儀なくされた。
現在貴族教育をされながら冒険者をしているのだが、この使節団の護衛任務後は一旦冒険者稼業を休止するとのこと。
アレンさんとの冒険者コンビが見れなくなるのは寂しくなるな。
「冒険者なのに貴族様になれるの?」
「公爵様の知人に養子入りして貴族籍を得たんです。あとはロッドの頑張り次第ですね。まぁリューガさんの特訓よりは優しいですので大丈夫だと思いますがね。」
「学ぶことが半端ないだろうに、それよりキツいんですね特訓。」
「アレンも最後の任務になると言うのにウジウジして…全くもう。」
「ウジウジ?」
「何か言いたいことがあるのは見ても丸わかりなのに、言い出そうとしないでいるんですよ。こちらが話すきっかけを作っているのに活かさないで。」
だんだんエミリーさんから黒いオーラが…。何してたの?アレンさん。
「ゴホン!すみません、一旦アレンの件は置いといて。お弁当作りましょうか?」
「そうですね。まず皆で食べる分をしましょう!」
唐揚げ、おにぎり、サンドイッチ、肉団子、タコさんウインナー(ユイランちゃん希望)、卵焼き、野菜の肉巻きやデザートなどつまみやすいものやみんなが好きそうなおかずを作っていく。
その間、作業中の小話とか男性陣の印象とか女子トークで和気あいあいと進めていく。
「さてと、大人数用はこれで完成!あとはプレゼント用だね。一応入れ物はこちらにありますので頑張って作りましょう!」
「思ったより小さいね。」
「このお弁当があるからね。あくまでおまけ程度だし。あとは1人で作りましょ!」
「え?お、お手伝いはしてくださいますわよね?エミリー?」
「お嬢様。今回は手伝いなしで。」
「う〜。」
「ママ。作り方は教えてくれる?」
「もちろん。頑張って!」
「うん!」
ユイランちゃんとステラさんのおぼつかない手つきにヒヤヒヤしながら、プレゼント弁当は完成した。
包みも自分で選んでもらい、全部を【収納】へ入れておく。
時間が近づいたので、女子組は待ち合わせ場所へ。すでにヴァイスさん、ソウエン、クルスが来ていた。私たちの姿を確認すると明るい顔で出迎えるクルス。
「師匠!お疲れ様です!」
「お疲れクルス。他の人は?」
「まだのようです。あとソウエンと俺で先ほどピクニックの場所とそこまでの道の安全確認してきましたので、道中襲われたりしないのでご安心ください!」
「そこまでしてくれたの?」
「男性陣で話し合って決めたんだ。お嬢様方もいるし、安全に越したことはないので。」
「このメンバーで襲ってくる奴はいないと思うけどな。」
ソウエンの説明にボソッと言うヴァイスさん。
確かにそうなんだよね。上位冒険者にヒュドラ殺しに竜騎士、その他手練れの騎士に戦闘できるメイドと美少女妖狐がいるのに挑んでくる馬鹿はそうそういないだろう。
ちょっと雑談していると他のメンバーがやってきた。
各々の持ち寄りの入っているバックをなぜかヒューデットさんが持っている。
「お待たせ〜。あれ?お弁当は?」
「大丈夫ですよ。私のスキルで保管してます。」
「ああ、ヒュドラを丸ごと入れたアレね。」
「入るの?ヒュドラが?」
「うん、入ったんだよ。スルッと。」
カイリさんの説明でアレンさんが唖然としている。
「じゃ、これも…。」
「ダメだよ。罰なのに。」
「罰?」
「昨日の作業が一番遅くなったやつが持つってことでね。」
「楽するなよ、ヒューデット。」
「はあぁ。わかったよ。」
皆が揃ったところで、ピクニック開始!移動も込みなのです!
事前に安全確認もとい整備されていたので、らく〜に進み、あっという間に目的地に到着。
辺り一面花が咲いてる野原が広がり、空も雲の少ない青空で絵に描かれるような綺麗な景色だ。
【収納】から大きめのレジャーシート数枚、大人数用のお弁当をだしていく。
各々の持ち込みの食べ物も出てくる。どうやら町の人からもらった惣菜やスープを持ってきたらしい。
お弁当を中心に周りに皆で座り、果実ジュースをみんなに渡して手に持たせる。
「酒じゃないんだ…。」
「子供もいるんで、無しです。」
「じゃ、作業お疲れ様!カンパーイ!」
『カンパーイ!!』
アレンさんの合図で各々食事に手を伸ばす。美味しそうに頬張っているみんなの顔で嬉しくなってくる。
その傍でソウエンには激辛弁当を渡す。
「はい、ソウエン。いつもの。」
「ああ、ありがとう。」
「は?何それ?!何でソウエン殿だけ?!」
「何でって、見たらわかるよ。」
隣に座っているリュシュさんがいち早くプレ弁に気づく。すると自然に視線が集中する。
視線に構わずソウエンが蓋を開ける。するとリュシュさんが咳込み始める。
「ゲホゲホッ!何?痛い痛い!」
「ほう、これは。もしかしてガベトを入れていますね。」
「え。何でわかるの?」
「はぁ?!ガべトって1番やばいって有名な香辛料だよね?!生でも危ないけど火を通したら辛さが増すし、視覚潰しの煙幕とかに使う攻撃性もある実だよ。よく手に入れたね。」
薬草関係に詳しいセゾンさん、流石にこの帝国でなかなか手に入らないものだと知っているようだ。
私は得意げにない胸を張るようにポーズをとる。
「ふっふっふ。ここは交易のある港町でっす!作業の手伝いのお礼にってもらったんですよ!」
「お礼がエグい!本当に痛いって!」
「うわぁ。こっちにまで辛い匂いが…。食べれるのそれ?食べるの?」
「そのために作ったんだし、ソウエンはペロリと食べるよ。」
「美味しそうですね。ではいただきます。」
そう言ってみんなが見ている中、ソウエンは香辛料盛り盛りの赤い弁当のおかずをひとつ取り口に入れる。
じっくりと噛み締め飲み込む。私は息を飲み込み反応を窺う。
ソウエンは後味を楽しむようにスッと息を吸い込んだ後、私をみる。
「いい辛さです。これは合格ですね。」
「ぃよっしゃー!やっと合格きた〜!」
「おめでとうございます、師匠!長かったですね!」
「いや、ほんとに長かった!もうだめかと思ったもの。」
そう言って感激のあまりクルスとハイタッチ。突然の行動にみんながポカンとしていたのでユイランちゃんが説明していた。うちの子優秀で可愛いわ!
しかもどさぐさに紛れて、他の3人はちゃっかりプレ弁を渡していた。
ロッドさんは顔真っ赤なのに、アレンさんは真っ青。何渡したの?エミリーさん。調理過程も秘密にされちゃっていたからすごい気になる。
セゾンさんも可愛らしいお弁当を持っているのに気づかれて、仲間たちに揶揄われたり小突かれている。
「あ、ありがとうございます。おじょ…えっとステラさん。」
「あ、ええ。いいんですのよ、ロッド。ふふ。」
「…ねぇ。え、エミリーさん。これ…。」
「ん?なあに?」
「イエ。ナンデモナイデス。」
「お前もちゃっかりもらいやがって!」
「可愛いなオイ!よこせや!」
「いやに決まっているだろう!手を伸ばしてくるな!あと無言で背中蹴るな!」
「人気者だなぁ。」
「そう言ってちゃっかり取ろうとするな!」
それぞれでわちゃわちゃしているのを見ていると、本当に平和になったなと思う。
あの時帰ってきてよかったと心底思う。…いつかこっちの世界でも会えるかな?
「師匠?どうしました?」
「いや、いい思い出になりそうだと思っただけ。あ。クルスにもはい。」
「ありがとうございます!!」
賑やかな食事を終えてのんびりと食休み。
本を見ている人、寝転がってうたた寝の人、チェスで対局する人、素振りで鍛錬する人。それぞれ有意義に過ごしている。
ユイランちゃんがふと素振りしているアレンさんとアンバードさんに声をかける。
「ねぇねぇ。2人は冒険者と騎士なんですよね?だからお休みでも鍛錬するの?」
「まぁそうだね。腕を少しでも伸ばすのと鈍らせないようにな。」
「……あとさっき食べたものを早く消化したいのもある。」
アレンさんがげっそりした顔で言っているが、何食べたの?
そしてユイランちゃんがこの後の仲のいい雰囲気を変える発言をする。
「じゃあ、冒険者と騎士ってどっちが強いの?」
「そりゃ、冒険者でしょ。」
「もちろん騎士だな。」
『は?』
同時の返答に、同時に相手の答えに対する疑問の声を出す。
「え〜。いろんな依頼をこなす冒険者の方だって。」
「いいや、日々鍛錬と厳しい規律のもと研鑽する騎士の方だ。」
「だが、冒険者も鍛錬はするし、騎士より手強い相手に遭遇する確率が高い分成長が早いぞ。」
「でも知識や効率的な討伐は騎士の方が得やすいし、武器も防具も配給されるし充実していると思うけど。」
「サバイバル能力が高いのも冒険者の強みだよね。」
「団結力やスキル向上のノウハウは騎士の方が上だ。」
おやおや?何だか雲行きが怪しいぞ。
アレンさんとロッドさん、アンバードさんとヒューデットさんが対峙して目線上にバチバチと火花が散っている。
ヴァイスさん、カイリさん、セゾンさん、リュシュさんはどっちつかずな感じで傍観している。
その様子に面白くしようとソウエンが提案する。
「では、せっかくこんな広いところにいて、我々しかいないんですから、試合してみては?」
「試合?模擬試合みたいにか?」
「そちらではそう言うんですかね?まぁ同じ意味合いでしょう。お互いの実力を見せつけてはっきりさせてみては?どちらが強いのか。」
この提案に乗り気になる4人。
「いいね。わかりやすい。」
「俺も問題ない。」
「そういえばお互い闘うところは見ていないわけだし、いいかもしれんな。」
「よし。やろう!」
「ではイネス。以前作った手合わせ用のステージ、出してほしい。アレだったら周りの人も景色も影響が出ないしちょうどいい。」
「え〜。わかったよ。」
ソウエンにお願いされて、いい感じの場所に【収納】に入れていた魔術防壁付きのステージをドンと出す。
その間、4人は自分の武器の手入れをしていた。準備までの流れが早いよ。
「ではルールを決めましょうか。対戦は1人ずつにしますか?」
「いえ。この後の移動などを考えると、2対2でやったほうがいいでしょう。連携も可能で、お互いの武器が手元から離れて戦えなくなったら負けということにすればいいと思います。」
「ほう、いいですね。皆さんは如何ですか?」
まさかのエミリーさんからの提案。ソウエンも異論はないようで他の4人に賛否を伺う。
異論はないようで頷いている。
「審判は私がしましょう。では皆さん、ステージへ上がってください。」
ゾロゾロと上がり、互いに向き合って武器を構える。
ステージからちょっと離れた場所で私たちは観戦することに。ステラさんとエミリーさんは冒険者サイド、ヴァイスさんとリュシュさんが騎士サイドへ声援を送る。
「では、始め!!」
右手を掲げ開始の合図を挙げた。途端にハンマーで突進するアンバードさんと槍で応戦するロッドさんの激突音が響く。
こうして冒険者対騎士の、お互いの強さの証明をかけての勝負が始まった。
…どうしてこうなった?
読んでいただきありがとうございます。突如始まったバトル。どちらが制するのか?!
誤字脱字などありましたらぜひご指摘お願いします。




