再会しても忙しい
71話目です。邪神復活は無事に阻止!でも落ち着く暇はないようで…。
邪神復活騒動から1週間経った。
惨状と化していた町の復興がだいぶ進んでいる。交易を担う港町となっていると他国からの支援も早い。特にエルニーラ王国からの人材などの支援がありがたいようで、あちこちに帝国と王国の国旗が掲げられている。
私も特化スキルをフル活用してユイランちゃんと一緒に支援に周っている。瓦礫から【クリエイト】で家財などを作り直したり、【解体】で素材に変えたりしている。
雑貨屋のお婆さんの家財を作り直したところで、後ろから声をかけられる。
「イネスですわよね?そちらは終わりましたの?出来ればこちらを手伝ってくれませんか?」
「あ、はいステラさん。いいですよ。」
「…ママ。あの子すごいね。自分の何倍もの大きさの塊運んでるね。」
「あはは、ステラさんは【剛腕】っていうスキルで、かなり怪力状態になっているからね。さ、行こうか。」
「うん。ユイも負けないようにお手伝いする!」
両手を上に掲げた状態で、瓦礫やら木材やらを運んでいるステラさんの後ろをついていく。
もちろん今は人の姿になっているが、最初にこの姿をみんなに見せたときはすごく驚かれたっけ?今もちょっとステラさんは私かどうかわかんなかったみたいだし。
あの激闘勝利の直後に帝国からの援軍が来て、町の被害状況や自国・他国の人々の生存確認で半日の拘束状態だった。
解放された後、避難先に向かいステラさんとエミリーさんと再会しステラさんに潰されるかと思うくらい抱きつかれたな。柔らかい感触に苦しいような役得のような羨ましいようなで、複雑な心境だったけど。
エミリーさんも涙目で軽く抱きしめてくれた。
2人ともゴブリンの姿だったのに抱きついていたから、私たちの関係を知らない人からは変な目で見られていたのに気にしていない様子だった。
アレンさんもロッドさんもすぐそばで私たちを見ていた。まぁロッドさんは軽く周りを睨んでいたけど。
本当ならそのまま帰ってもよかったらしいのだが、王国の使者代表のステラさんの一声でしばらく留まることになった。
アレンさんとロッドさんは帝国騎士団の人たちと協力しながら周っている。なかにはヴァイスさんと一緒に先行していたカイリさんたちも一緒に復興作業をしていて、時折友人のように話しながら作業している姿を見る。
ステラさんたちとの再会の後、ヴァイスさんと一緒にカイリさんたちとも合流して無事を報告した。その時には人の姿で会ったから、一言目で「誰ですか?」と言ってポカンとした顔は今でもヴァイスさんの笑いのツボとなっている。
自分だって似たような顔をしていたくせに。
ステラさんの後をついて歩いた先は、最初に来た駐屯所だ。あの惨状でも形をほぼ残していた数少ない建物だったので臨時の役所となっている。ドスンと建物横に荷物を置いたステラさんと一緒に中に入る。
「こんにちは。資材を表に置いておきましたわ。あと他にお手伝いしてくれる人も連れてきましたわ。」
カウンターにいた役所の人っぽい女性が私たちに気づく。
「ありがとうございます!では皆さんはこちらの場所に行って、配給用の食事の用意をお願いします。」
そう言って狭い幅のテーブルに地図を広げて指差したのは教会。ここも比較的建物被害が少なかったところだ。
だが町で1番被害者が出た。聖職者のほとんどが持つ光輝スキルの魔力などが脅威と見なされたみたいで、真っ先に魔物たちや黒い触手に狙われたのだ。
「今は有志の女性方が中心に動いてくれているんですが、手が足りなくて。」
「食料物資は足りそうなんですの?」
「そちらはありがたいことに、まだまだ十数日は持ちそうですよ。むしろそれを捌くのが大変だそうで。」
「それは安心ですわね。」
「ではお願いいたします。」
「ええ。ではいきましょうか?イネス、ユイランちゃん。」
「はい!」
「…はい。」
ユイランちゃんはまだステラさんに慣れていないようだ。まぁクルスたちみたいにすぐ仲良くなれるだろうけど。
教会につくと若いお姉さんも熟年のご婦人も忙しなく動いている。今日はパンと鶏肉スープにするようで私はパンを焼く竈門役を、ステラさんとユイランちゃんでスープの具材切りをしていく。
ぎこちない動きで切るユイランちゃんとステラさん。2人とも普通に扱えるのにお互いを意識しているせいでうまく切れていないが頑張れ!
食事の準備が終わると、配給待ちの列に声をかける。
「では!今からお食事を配りま〜す!ゆっくり前に進んで受け取ってください!」
列が動きまじめ配給の手伝いに回る。5箇所に別れての配給でそのうちの一列に配置した。ユイランちゃんにはお皿を渡す係、ステラさんはパン、私はスープを渡す係だ。
続々とくる人々を見ながらあれっとと思う。なんか…ここの列人多くない?
横目で見ながら確認するとやっぱり多い気がする。そして心なしか男どもの鼻の下が伸びているような…。
美少女2人とお近づきになりたい下心がうっすら見えてくる。
あからさまな輩にはスープを渡す時にこっそりと『邪な目で見るんじゃないよ、ボコられたいの?』とボソッと脅…警告する。
大抵顔を青くしてそそくさと行ってしまうのだが、なかにはなぜか逆に顔を赤くする人が。解せぬ。
交代の人が来たので私たちも食事にすることに。食事を乗せたトレイを持ちながら移動している時にふと思ったことを言う。
「そういえば、ロッドさんたちいなかったな。まだ作業しているのかな?」
「え、そうでしたの?でもそうかもしれませんわね…。」
途端にソワソワするステラさん。みんなが作業しているのに自分だけ先に食べるのを遠慮気味に感じちゃったかな?
横で様子を見ていたユイランちゃんが提案する。
「ロッドさんって槍を持ってた人?どこにいるか知ってるからご飯届けに行こうよ。お腹空いていたら動けなくなっちゃうよ。」
「!そ、そうですわよね。いいと思いますわ!ぜひいきましょう!私もらってきますわ!」
「じゃあ、ステラさんの持っていますよ。」
「ありがとう、すぐ戻りますわ!」
そう言って配給列に急ぐステラさん。ユイランちゃんがこっそり言う。
「ママ、他の人のも持っていこうよ。ヴァイスさんたちも一緒だよ。」
「そうだねみんなで食べようか。じゃあ一旦こっちに入れて持っていこう、【収納】。」
私たちの食事を【収納】に入れておく。近くの配膳列に事情を言って分けてもらい【収納】へ。
律儀に列に並んで受け取ってきたステラさんが戻ってくると、ユイランちゃんの先導で移動する。
ロッドさん達は船収納スペースで輸入品整理作業していた。各国からの支援品もあれば、商業用品もあったりと数も種類も多い。倉庫となっていた場所はまだ瓦礫のままなので、一時しのぎで置いているらしい。
まとめ役として指揮していたカイリさんが私たちに気づく。
「あれ?ステラ様、イネス、ユイランちゃん。どうしてここに?ロッドかアレンに用でも?」
「皆さんにお食事を持ってきました。一旦手を止めて休憩にしませんか?」
「それはありがたい。まだ誰も出られなかったので助かりました。お〜い、食事が来たから一旦止め!」
『お〜ぅ。』
ちょっと疲れ気味な声で返事がちらほらと返ってきて、ゾロゾロと集まってくる。
作業していたのは知り合いばかりでよかった。知らない人がいたら、ユイランちゃんが緊張しちゃうもんね。
【収納】から食事の他に、テーブル数台と人数分の椅子を出して準備完了!
「ではこの後の頑張りのために、いただきます!」
「も〜、気が滅入るようなこと言わないでよぅ。」
アレンさんのツッコミも心なしか弱い。
それでも食事を始めるとガツガツと食べている。足りないみたいなので【収納】からお菓子を出しておいたら皆手を伸ばして無くなってしまった。
「…ママ、今のお菓子、もしかしてユイの?」
「違うよ。前に作ってた残りだから。ユイランちゃんのはまた後で渡すね。」
お菓子を食べたみんなは、一瞬ギクっとして固まってしまったが私の言葉でホッとした様子でお茶を飲む。
「でもそんなに疲れてて大丈夫?」
「体力は余裕あるんだけど、細かい数字とか仕分けがねぇ。精神にくるよ。」
「それ、リューガさんが聞いたら特訓メニューに組まされるんじゃ…。」
「言わないでね、イネス。絶対に!」
アレンさんの強いお願いとそれに同調してうんうんと頷いているロッドさん。よほど嫌らしい。
「そんなに厳しい方なのか、そのリューガさんって言うギルド長殿は。」
「厳しいし優しいんだけど、特訓となると地獄行きは当たり前になるよ。」
「なんだそれ。」
アレンさん答えに冗談なのかと思って笑っているヒューデットさん。…違うんだよなぁ、マジなんだよ。
「でも随分と仲良くなったんですね、皆さん。」
「まぁ、共通の話題とかあってね。」
「それに冒険者側の話ってなんだか新鮮だから色々聴きたくなるんだよね。」
「それはこちらも同じだ。学ぶ部分もあってとても有意義だ。」
セゾンさんとロッドさんがいう。仲良きことでいい感じ。
「でもイネスのほうがよほど変わったよ。姿もだけど、ちゃんと母親って感じだし、王子相手に師匠ってどんだけ進化してんだよ。」
「それはほんと成り行きで、ね。」
「攫われた時は本当に焦ったんだぞ。せめて置き手紙なり言付けなり連絡くらいしろ。」
「すみません、アンバードさん。」
「まぁまぁ、アンバード。無事だったし今は復興作業を頑張りましょうよ。」
「アレン…むう、分かった。それにもうすぐお前達ともお別れだものな。」
途端にシーンと静かになる。アンバードさんはん?とキョトンとした顔をする。
ステラさん達エルニーラ王国の使節団は復興作業支援を申し出た時に期日を設けられていた、それが後3日。
隣国とはいえ海を挟んでいるためかなり距離があるし、転移魔法陣も私が通ってきたものの他はない可能性がある。
転移魔法陣自体作るのに高度な技術も消費魔力もえぐいくらい必要なので、そうそう作れないとのこと。
「まぁ、別れても私が通った転移陣があるしすぐ会えると思うけどな。」
「それなんだが、今は帝国の魔術機関が調査していて入るどころか近づくこともできない。使用するには使用許可証が必要なんだ。その手続きも細かく時間がかかるらしい。」
「あ〜、そうか。あのままだったらこっそり帝国に入り放題になっちゃうものな。」
私の提案にヴァイスさんが否定する。と言うことはもう会えなくなる可能性も…。
その考えをユイランちゃんも思ったのかしょんぼりとした顔をした。でもアレンさんがユイランちゃんの頭をポンと優しく撫でる。
「そんなに寂しがることないよ。俺たちは冒険者だよ?帝国にいつでもいけるし、ヴァイス達のいる町にもいこうと思っているしさ。」
「ああ、俺たちも微々たるものだが町の再建に手を貸そうと思っているし、その旨をリューガさんには手紙を送っている。今頃向こうで手続きしているんじゃないか?」
「そうですわ。それに私からもお父様に言って、転移陣を使えるように交渉をお願いしてますもの。きっと近いうちに行き来できるようになりますわ。」
アレンさん、ロッドさん、ステラさんの心強い言葉で明るく顔になるユイランちゃん。
あまり会話はないけど、みんなとお別れは寂しいと思うくらいは親しみを持っているのようだ。
せっかくだからもっと仲良くなってほしいな。しばし考えて、思いついたことを言う。
「そうだ!最終日はみんなでピクニックにいこう!」
「ピクニック?」
「そう、近くの開けたところで皆で休憩や昼食がてらで行くの。夜だと準備で時間潰れそうだしね。」
「いいんじゃない?それ目標にしたらもっと頑張れそうだし。」
「俺も異論はない。」
「いいですわね!やりたいですわ。エミリーとまたご飯作りましょう!」
アレンさん達が同意してくれた。
「まぁ、俺もいいが…皆は?」
「問題な〜し!」
ヴァイスさんの問いかけにセゾンさんが代表で答え、他のみんなは頷いて同意する。
「じゃあ、決まりですね。最終日の昼前に山側の町入り口で待ち合わせにしましょう。昼食はこちらで準備しますが、他は各自で好きなものを持ち込みで。」
「よし!そうと決まったら、後の作業頑張るぞ!」
『オー!』
お楽しみを約束して各々作業に戻り、夜にはヘトヘトになりながら今日を過ごすのであった。
読んでいただきありがとうございます。再会した時の話、いつかできるといいなぁ。
誤字脱字などありましたらぜひご指摘お願いします。




