ヒュドラ戦 開始
30話目です。町の人達は無事か?
遠くにいてもヒュドラの咆哮、建物が壊される音そして人々の悲鳴が聞こえる。焦る気持ちを抑えつつ、【ウインド】で加速移動し、やっと町に着いた。
町のほとんどはもう破壊されていた。教会も半壊に近く、住宅のほとんどは全壊状態。緑豊かな場所も抉れて地面や石が剥き出して荒れている。所々紫色の炎が建物や草木を燃やしている。
町の人や騎士団が見当たらない。一体どこへ?
「あ!お前、ヴァイスが連れていた魔物!」
「あ、やっと見つけた!ヒュドラはどこに?!町の人や騎士団は無事?怪我した人はいるか?!」
「は?なんでそんなこと聞いて…」
「いいから早く言え!時間がないだろうが!」
2人組の騎士を見つけた、以前武器の的役をしていた時にあった奴らだ。勢いよく状況を聞きまくる私に一瞬怪訝な顔をされたが、すかさず凄むとだじろぎ教えてくれた。
「えっ、あ、ヒュドラは今教会から東へ進んでいる。町から離れたようで、今は町の様子を見に騎士団が状況確認に周っている。」
「町の人に怪我人はいない。避難訓練中だったのが不幸中の幸いだったな。」
「避難訓練?」
「急に町全体での自然災害を見込んだ緊急避難訓練をしていたんだ。いつ起きるかわからないからって事前予告なしの騎士団総員で、町から離れた高台へ避難誘導していたんだ。ミュラン団長からの指示で。」
「ああ。いなくなってたお前たちも自分が探して伝えるから先に行けと言われたしな。」
ミュランさんはおそらく領主がやろうとしていたことを察して、事前に逃がしてくれていたんだ。ヴァイスさんが尊敬している、騎士としての彼女はまだ死んでいないんだ。なら、もしかして…。
ある予想が頭をよぎったとき、振動と咆哮が聞こえた。途端背中から感じた嫌な予感と強い魔力。
騎士2人組の首根っこを掴み、【ウインド】で横に大きく跳ぶ。すると地面を抉りながら紫炎が襲ってきた!
間一髪で避けられ、突然のことで驚く騎士二人組をおいて私はまた走る。あっちにヒュドラがいる!
「領主の館に行って!そこにヴァイスさんとミュランさん、あと今回の黒幕の領主がいるから!そっちよろしく!」
「え、領主様の?てか黒幕って、おい!」
ヴァイスさんへの応援をお願いして、何度目かの【ウインド】加速移動をする。
正直1人でヒュドラに勝てる気はしない。でもヴァイスさんはきっとくる。それまでの時間稼ぎはできる。
それに向かっている方向の先にはあの転移魔法陣もある。壊されたり、使われて向こうに行かれるのを防がなきゃ!
夕日に照らされながら進み続けるヒュドラを見つけた。左右の頭はキョロキョロ周りを見て動いてる。
あの時は地下だったからできなかったが地上なら、と足止めとして一発かましてやる!
「一旦止まれ!【ロック・ウォール】!」
ヒュドラの足元に岩壁を出す。一瞬たじろぎ進むのが止まったと同時に私を視認する。
咆哮を上げ、地面に顔を叩きつけるヒュドラ。地面が抉り、衝撃で周りの木々が倒れていく。まるでバトルフィールドだ。
地面についた頭を目掛けて【ストーン・ヘッジ】で攻撃。岩の塊は当たるが、跳ね返されている。
頭を上げたヒュドラは火球を次々飛ばしてくる。【ウインド】で避け、左頭のあご部分に【ストーン・ヘッジ】を当てる。
多少は効いたみたいで当たった左頭は怯む。その隙に左へ回り込み、ヒュドラの体にしがみつく。
しがみつかれたヒュドラは私を落とそうと体を揺らし始める。私からしたらジェットコースター並みの揺れでしがみつくのを維持するのがやっとだ。
すると左頭が火球を私目掛けて放ってきた。でも体は揺られ続けているから私ではなく自身の体にあたる。それを3回繰り返し、とうとう右頭がキレた。
右頭が左頭に頭突きをかます。勢いで体が大きく左に傾く。
負けじと左頭は噛み付き、噛みつかれた右頭はそれを振り払い、火球を飛ばす。
火球が私のすぐ横を通り過ぎて行った、危うく当たるところだった!あっぶね!?
2頭の喧嘩に真ん中頭はイラつき咆哮をあげる。でも今までとは違い、急に黒い雲が頭上に現れた。
嫌な予感がして、頭を下げる真ん中頭の後ろ側に飛び移る。
黒い雲に気付いて2頭が頭を上に向けた瞬間、2頭に稲妻が直撃し、凄まじい衝撃と爆音が私を襲う。
そういえば雷電系スキルも持ってたな!とジーンと痛む耳を片手で抑えつつ、動けない2頭の頭上から追加で大きめの【ストーン・ヘッジ】をお見舞いする。
効果はあったようで、目を回して伸びてしまった。
(これは大チャンス!!っておわぁ!)
ヒュドラの体がググッと伸びたと思ったら、そのまま背中から倒れていく。
踏み潰す気だ!と思い、右頭と真ん中頭の間に向かって飛ぶ。ヒュドラが倒れた風圧で私は宙に浮き、すぐ横に真ん中頭がこちらを向いていた。口の中には炎が。
マズイ!と防御しようと動いた瞬間火球が放たれ直撃。火に巻かれながら飛ばされ、地面に激突した。
「うぐぅ、熱…い、い…たいぃ。」
(いくら耐性があっても、許容範囲超えたらやばいんだって。)
【キュア】をかけ続けているが、すぐに動けない。
ヒュドラはトドメのつもりなのか、上を向いてあの紫炎攻撃の溜め準備をしている。
(はやく逃げないと、でもまだ…)
未だに動けない私に、紫炎攻撃をしようとヒュドラが頭をこちらに向けた。
一瞬私の上に影が横切り、ヒュドラが悲鳴をあげる。
そして待ち侘びた声が。
「悪い、遅くなった。」
読んでいただきありがとうございます。ミュランの機転、ヒュドラの猛攻、ボロボロだけどがんばれイネス!
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