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第11話

夢を見た。ぼんやりと、私は偉大な女王になってヤヒコと邂逅を果たす。


夢は断片的だった。


コスモスが繭の中で、目を覚ます。彼女は森田君に嬉しそうに口づけをする。幸せな表情のまま、その姿はかききえた。


ああ!!!


捕食されたのだ。


「二ノ宮、見ているのか。これが、僕らの愛し方だ。」


そう言って、森田君は悲痛に笑った。


「この渇望にはなかなか打ち勝てない。喪失感に苦しむと分かっているのに。


…だけど、あいつは違う。あいつにはこの渇望がない。


心底うらやましいよ。」


(あさひ?)


「ああ。」


(森田くんも子供を産むの?)


「いいや。今のはただの食事。だけど、僕らは愛する者しか食べられない。


姫巫女、聞こえている?


君に会えて、よかった。


君を食べなくてすんでよかった。


僕は、去るよ。」


心の中のどこかが、じんわり切なく、熱くなるのが分かった。これは私の感情ではない。私の中に眠る彼女の想い。


「うん。


伝わった。」


森田君は満足そうに、右手で心臓を押さえた。


ああ、なんて輝く笑顔。


唐突に場面は変わる。


私の意識は空高くふわふわ浮いている。夜が明けるのがみえる。


惨劇や、戦闘などなかったように森は静かに朝を迎える。魔法のように昨夜の爪痕は消されていた。ただ、自然がそこにある。鳥のさえずり、風にそよぐ木々の心地良い音。


「アサヒ。」


つぶやいてみる。けれど、返事はない。


「アサヒ。」


もう一度つぶやく。


彼らはすでに、去った後だった。


かわいい少年の笑顔が脳裏に蘇る。私は必死になって叫んだ。


「アサヒ!」


目覚めた私は涙をこぼしていた。やがてそれは号泣へと変わる。何に対してなのかは分からない。いろいろありすぎた。


一つはっきりしているのは、出会って間もないアサヒへの喪失感だ。執着と呼ぶのだろうか。


その感情が一番強かった。

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