つちのこうやのラブコメ (それぞれ別々にお読みいただけます)
十年ぶりに雪が積もったので、昨日フラれたばかりの幼馴染と、十年ぶりに雪だるまを作ってみた
温暖な地域のこの街には、あまり雪は降らない。
と思ってたところで、なんと朝窓を開けてみれば、五センチから十センチほど、雪が積もっていた。
昨日の天気予報では積もらないとか言ってたけどな……。
多分十年ぶりくらいに積もった雪。
そんな雪を窓から眺めていると、雪の向こうにある窓に、雪を眺める女の子が現れた。
何か口パクをしている。
ここから見れば降ってくる雪を食べたみたいに見えるんだけど、まあそれはいいや。
電話がきた。
『雪だるまつくりたいから付き合ってよ』
この上ないくらい、十年前と変わらない提案をしてきた。
「雪だるま作るの好きだもんな、優理は」
僕は幼馴染の優理にそう言ってから、ぼちぼち家を出る、と伝えた。
☆ ○ ☆
手袋をはめた優理が、僕を迎えた。
流石に雪を触るんだから、僕も手袋をはめてる。
「よし、つくろう!」
「そうだな」
いやそもそもどうして高校生にもなって雪だるまを優理と作るのか。それも昨日フラれたのに。
と思いつつも、雪をころころ転がしていく。
優理とは、幼馴染として仲良くするってことになった。
だからこれは何も変ではなくて、とても正しい光景なんだけど、それでも僕はなんか雪が冷たくなかった。
「下の球の方が少し大きい方が良さそうだから、頑張って大きくしてって」
「ほい」
いつの間にか僕が下半分担当になっていたようだ。
僕は転がす手を早めた。
雪はどんどんとまとわりつく。
まるで真ん中に、優理のことが好きだと言う気持ちが入ってて、それを閉じ込めて丸くしているみたいだ。
無心で転がしていたら、あっという間に大きくなった。
「できたぞ」
「おっ」
優理は自分の作った、少しだけ僕のより小さい雪球を、上に乗せるために持ち上げようとした。
でも持ち上がんない。
「一緒にもつよ」
「ありがと。ちょっと大きすぎたかな」
「いやこれくらいでいいでしょ。そうじゃないとすぐに溶けちゃうから」
「そっか」
優理は納得したように言いながら笑った。
これからも、幼馴染として僕は、優理と一緒にいる。
そのためにもこの雪だるまには、一週間くらいは、頑張ってもらわないとな。
そんなふうに思って、優理のことを幼馴染の可愛い女の子として眺めながら、僕はめちゃくちゃ、腕に力を込めた。
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