プロローグ
──やられた
戦いを終えた少年は 、もう自分の体であるかすらも分からない脇腹を抑えながら、前線基地へ帰還した。
「大尉、code11が帰還したようです」
仲間の声が聞こえた事に安堵を覚えつつも、少年は兵士としての規律を守る。
「大尉、code11、ただいま10時14分第29基地へ帰還しました」
「御苦労」
そう言うと、大尉は一瞥し、続けた。
「色は」
すかさず担当医が返す。
「今回の戦闘で完全に変色したようです」
「了解した、“取り外し”の準備をしろ」
大尉の言葉を聞いた少年は驚愕と恐怖の交じった声で言った。
「お待ち下さい大尉確かに私は今回の出動で負傷はしまジたがどれも軽微なものです。ゾれに私ののノブゥワァマダァ!」
「ダメなようだな」
「大尉、取り外しの準備完了しました」
「よし、開始しろ。code11、codeとのコネクトは切った。抵抗するなよ」
その言葉を合図に、少年が機械に固定される。少年は自分の未来がもうないことを悟ると、深い絶望と焦燥感に襲われた。
もう考える事など出来ない程まで血に犯された少年の頭は、ただひとつの感情を確かに持っていた。死にたくない
──Command2を確認しました。これよりcodeの取り外しを開始します──
「こいつの本名はなんだ?…分かった」
電動ノコギリが二本、少年の肩を切り裂き始める。薄れゆく意識のか中、大尉の声が遠くに聞こえた。
「code11改め、シュウ陸戦用特別兵。4ヶ月に渡るcode11の制御、御苦労だった。×××年5月21日10時22分を持って、貴殿の任務完了を宣言する。貴殿の活躍によって…」
背中に強烈な痛みを感じながらも、少年は思い続ける。死にたくない、死にたくない、死にたくない…。
「ジニダァグゥ!」
それが少年の最後の言葉だった。ノコギリは容赦なく少年の背中を引き裂き、背骨を取り出す。
──取り外し、全てのプロセスを完了。成功しました。──
「code11に損傷はないな?よし。では直ぐに次を呼んでこい。引き継ぎをするぞ」
そう言うと大尉は動かなくなったかつて“かつて少年だった肉塊”を5秒ほど見つめ、また暗闇の中へ去っていった。