PHASE12 メッセージ
翌日、目を覚ましたのは昼過ぎだった。
スマホを見ると何件も未読メッセージが溜まっている。
有村からは……
「昨日のこと夢じゃないよね?」
「AMちゃんから連絡あった?」
「てゆーか、なんで学校来てないの!?
私もメッチャ寝不足でしんどいけど頑張って登校したのに!」
「え……もしかして体調悪い?
大丈夫?」
「あのー……既読つけてよ。
メッチャ怖い。お願いだから」
……ヤバイな。早く返信して無事を報告しないと。
僕は「元気だよ!」とだけ書いてメッセージを送るが、すれ違うように1秒前に有村からのメッセージが入っていた。
「返事くれたらおっぱいの写真送ってあげるよー」
あっ…………
すかさず、有村からのメッセージが届く。
「なんでこのメッセージだけ反応するの!?
バッカじゃないの!?」
待て、誤解だ。
そうじゃない。
誤解を解いたり、疲れて休んでることを説明していたら他のメッセージを見るのが遅れた。
次は拓殖先輩だ。
「修哉。大活躍だったらしいな。
コイツがベラベラ吐いていたぜ」
続いて画像が送られている。
あの筋肉男が全裸で逆さ吊りにされている写真だった。
完全に目が死んでいてヨダレと鼻水が垂れ流しになっている。
痛みは感じないはずなのにどうしてこんなことに……
「それと、真希奈から顛末は聞いた。
AMとかいうのが約束を守るかどうかは分からんが、お前はもう関わるな。
死ななくとも一生を棒に振ることだってある。
この事件はきっとそういう類のものだ」
拓殖先輩の文は僕を遠ざけようとするものだった。
気持ちはありがたいが、そうもいかなさそうなんだよな。
僕は爺ちゃんがくれたカードを取り出して見つめる。
ゲーム中最高レベルの性能を誇る回復スキル。
ただでさえ人間狩りを嬉々としてやっている連中がこのカードの存在と持ち主である僕のことを知ってしまえば枕を高くして眠れる日は無くなるだろう。
AMのアドバイスのおかげで拘束できているみたいだけど、所詮ゲームだからな。
まともな設計ならゲーム機の電源が落ちた瞬間に現実に戻るはずだ。
……考えたら怖くなってきた。
とりあえず「わかりました」とでも答えておこう。
次は……真希奈か……
嫌な予感しかしない。
「マジ最悪」
「なんなんあのクソ女。
まだ連絡来ないし」
「強制ログアウト?
そんなんしなくても喜んで殺してやるっての」
「あー、今度会ったら女に生まれてきたこと後悔するくらい嬲ってやろう。
しゅーちゃん、溜まってるなら参加する?」
……AMに対する怒りで溢れている。
てか、幼馴染をなんてことに手を染めさせるつもりなんだよ。
実際、僕のアドレスにもAMからのメッセージは届いていない。
合理的に考えれば彼女が僕たちの味方をする理由はない。
彼女にとって僕たちはゲームの世界の住民なんだから。
だけど……
有村が死んだ時に取り乱したこと。
蘇った時にホッとした顔をしたこと。
僕たちのやりとりを笑いながら眺めていたこと。
やはり僕は彼女のことを信じたいと思っている。
ん? 有村からメッセージがまた来ている。
ちゃんと機嫌はなおったと思ったんだけど。
恐る恐る開いた有村からのメッセージは、僕が予想しているものとは全く違った。
というか、予想外というか信じられない内容だったので三度読み返した。
その後、居ても立ってもいられず、外に出る準備を始めた。
僕が目当ての場所に着いた頃には日が傾きかけていた。
高校の最寄りのバス停から海に向かうバスに乗って終点間近で降りたその場所は運河を利用した広い公園。
ちょうど一年くらい前だったろうか。
僕が真希奈と一緒にここに来たのは。